Valentine's Day

「都筑さん・・・あの・・・これ」
「え?・・・あ、ありがと」
「いえ・・・じゃあ、失礼します」
「あ! えっと、名前は??」
「失礼します!!」

だーっと駆けていく女子職員の姿がドアの向こうに消えると、都筑はしょうがない・・・と椅子に座った。貰ったばかりの包みをよく見れば、カードが入っているのに気付く。
『お仕事がんばってください ○○』・・・・
「あ、名前書いてあった・・・」
可愛い犬のイラストに描かれたそのカードを見て微笑んだ都筑はそっと机の脇にそれを置いた。
・・・・既に10個目だった・・・・・・。




「・・・・・どうよ? 坊」
「どうって・・・・」
「始業1時間であのペース・・・・・・凄いわ」
「なんか最初の方はあたふたしていたみたいですけど、5,6個貰った時点で慣れて来たみたいですね」
「俺ら・・・悲しいな」
「何言ってるんですか」
そう言って密は亘理の机の上を見る。
「亘理さんだってもう5個も・・・」
「それでもあいつの半分や・・・って坊は?」
「俺は甘いのが苦手だと断っています。お返しも面倒くさいし」
「余裕やなあ〜」
「そんなんじゃないですよ、くだらないなと思っているだけです」
「・・・・・坊、もう少し柔らかく考えても・・・」
亘理が苦笑する。
「別に・・・ホントのことですから・・・って、また来ましたよ」
2人は都筑の方に顔を向けると、都筑の元に1人の男が近づいていた。



「よお、元気にしてた?」
「あ、久しぶり!」
そこまで言うと男はもう一度周りを見渡し・・・・声を顰めた。
「なあ、今日巽さんは?」
「巽? あ、今日は夕方まで出てるよ」
「会議か?」
「ううん、昨日から短期の出張」
「へえ〜そうなんだ・・・・・珍しいなこの時期に・・・」
「え?何?」
「いやなんでも・・・そうだ、これお前にやるよ」
そう言って綺麗な包みの箱を差し出した。
「何々??・・・・ってこれ、あの有名なお菓子屋さんの?」
「流石よく分かるな!」
「わかるさ、この包装紙だし・・・わ、何? もしかしてチョコ?」
「そう、さっき貰ったんやけど・・・・お前にやる」
「いいの? だってせっかく・・・」
「構わないよ、俺チョコ苦手だし・・・・貰ってくれると嬉しい・・・」
「そうかあ、でもなんかくれた人に悪いね・・・」
・・・・・・




「アホや・・・あいつ」
「ですね・・・」
高級チョコを貰って大はしゃぎする都筑を遠目で見ながら亘理は首を振る。
「誰がさっき貰った・・・やねん、それはおまえに・・・や」
「まあ・・・相手の言葉通り受け取ってるんですよ」
「あいつに何回もちょっかい出されとることに気付いてないって所が都筑らしいけどな」
「それは無理でしょう。いつもは巽さんが完全ブロックしていますから・・・あいつに気付かれないように」
「そうやなあ・・・過保護というのも問題やなあ・・・・・ああ、嬉しそうに・・・・」
「あそこのは食べたい食べたい!って騒いでましたからね。巽さんは高いだけで!っと、都筑には買わせなかったし」
「肩に手をかけとるけど・・・」
「自分がそういう対象だとは夢にも思わないんですよ」
「鈍感というかなんというか・・・」
2人は呆れた顔で都筑を見ていた。
やがてその男は手を振りドアを出ていく。帰り際、ちらっと亘理達の方を見た。

「・・・・あ、やっと帰った」
「結構しつこかったな。夕飯でも誘ってたんか」
「夕飯は無理でしょうね、もう巽さん帰ってきているだろうし」
「・・・・予定は5時やけど・・・・3時頃には帰ってくるんやないか?」
「ですかね?」
「あまりにも急な課長の代理の出張やろ? あいつにしてはこの時期都筑の側を離れることがどんなことか、よおわかってるはずやけどな。今回ばかりは余裕無かったようやし・・・で、この有様っと」
「まあ、チョコ貰うくらいなら大して害もないでしょう。巽さんも心配しすぎなんですよ」
腕組みをしてやれやれという感じで話す密に亘理がにやりと笑った。
「・・・・と言いつつ・・・坊は今日は図書館に行かんの? いつもこの時間は行ってるはずやないか?」
そう言われると密も亘理を振り返った。
「亘理さんこそ、今日は何か実験するとか言ってませんでした?」
互いに互いを見て・・・・そして苦笑する。
「過保護は巽だけやないか・・・・」
「・・・・・・」



「ねえ、密、亘理!! そろそろお茶しない??」
貰ったチョコを何回も見て満足そうにしていた都筑が2人を呼んだ。

「お茶ねえ・・・・それは俺のラボでくつろぐっていうことか」
「でしょうね、巽さんは自分のいないときに課長室弄られるの嫌がりますし」

「ねえ、何話てんだよ〜!!」
「仕事もろくにしてないくせに何が休憩だか・・・」
「まあ、ええんやない? 鬼の居ぬ間になんとかってな」
「そうですね」
2人は席を立った。



「もう何をしてんだよ〜!!」
「わかった、わかった!」
「うるせえ、休むことばっかり考えんな!」
「痛っ、痛いよお密〜!」
「ほら、ほら列を乱さない」
・・・・・・




3人の賑やかな声が廊下へと消えていった・・・。


2004・2・13
日生 舞

★あれあれ? 巽が???
おかしいな、巽都なんだけどなあ;;
・・・・日常ネタですね
巽の過保護までのおもりが取れたときの状況・・・
こんなもんではないでしょう・・・・老若男女がね・・・
Dr出すとややこしくなること必至なので今回はご遠慮ねがって・・・(^^;)
ちなみにこの男は太刀川君じゃないです、ええ(笑)
続編はこちら、少しだけど;;