「よおお、戻ったか秘書殿!」
夕方、召還課の部屋へ入ってきた巽を見て亘理が声をかけた。

「帰ってきて、すぐ貴方の顔を見ると疲れがどっと出ますね」
「なんちゅう言い草やねん!」
「で、都筑さんは?」
「・・・・・・・あそこ」
亘理が指さすソファーの上に横になっている黒い物体が見えた。
「・・・・・・・聞くだけムダのような気がしますが・・・・一日中あんな感じだったとか・・・」
「本当にムダやな・・・・まあ、似たようなもんやね、寝てはなかったけどな」
「・・・・・・・やっぱり」
巽は大きな溜息をつく。行く前に指示はしていたが、それは全て消え去ってしまっているようだ。
・・・また来週から残業残業の日々が始まる事は確定らしい。
「ま、無事に一日終わりそうよ? ちょっとやばそうなのもおったけど」
「・・・・・何もなかったんでしょうね」
「あの顔見てみ・・・・それ見て物言うて欲しいもんや、どうでもいいんならこんなとこに俺おらんし?」
「黒崎君は?」
「今、図書館、坊もずっと目光らせとったしな」
巽はそれを聞きながら都筑に近づいた。
すやすや毛布にくるまって眠っている様子を見ていると自然に頬が緩んでくる。
「まあ、おまえも戻ったことやし? 俺はラボに行くわ」
「お疲れ様でした。 明日でも食事に来てください、黒崎君と」
「そうやな、結構今回は時間長かったしな」
「課長がこんな時期に体を壊すなんて予定外でしたからね。まったくご自分の身体のことぐらいしっかりと管理して欲しいものですよ。体調の管理も仕事のうちです」
「・・・・・・まあ、そうやね・・・・・」
週明けには出てくるであろう課長へ、心の中で手を合わせる亘理であった。

「で、これが今日の結果ですね」
机の上の山を見る。
「すごいやろ・・・・何個あるかわからんし・・・・まあ男女問わず、よお来たで」
「まあ・・・・そうででしょうね」
「ほな、まあ、明日でもお邪魔するわ」
「ええ、お疲れ様です」

亘理を見送った後、紙袋にチョコを入れる。
カード付きの物もチェックする。
携帯の電話番号等書いているのもいて油断ならない。
一つずつよく見ながらしまっていく。
ふと・・・・巽は都筑の机の横にあるゴミ箱を覗き込む。
・・・・一個も食べてない?!・・・・・
袋に入れながら、パッケージを確かめていく。
ここで菓子を食べれば必ず都筑はここのゴミ箱をその包装紙で山のようにしてしまう。でもそこには今日は走り書きの書類以外何も入っていなかった。

こんなに沢山貰いながらも、今日の最初は自分からのを食べると都筑が待っていた・・・・そう思ってもいいのだろうか?・・・・・巽は眠り続ける都筑を振り返る。
そんな勝手な事を考えてもいいのだろうか。
他の場所で食べているかもしれない・・・・そう思いながらも、こんな事を気にしてしまう。

「ん・・・・・巽、チョコは?」
「え?」
寝言・・・・・らしい。
「ちゃんと用意していますよ」
心配しなくても・・・・・とっておきのものをね。

巽はふっと笑って・・・・・・その額に口づけをおとした・・・・・。






そして週明けからは地獄の残業が続くことは・・・・・また別のお話。