ある晩のお話 1〜5(同盟の拍手お礼でした)



「岩城さん お茶が入ったよ」
お盆を手に和室に入ると岩城が窓を開けて月を見ていた
「はいどうぞ・・・・・寒くない?」
香藤の声に振り向いて岩城は微笑んだ
「ああ 大丈夫だ」
「・・・満月?」
「ほらあれ・・・綺麗だろ?」
「うわっ大きく見えるね」
「兎が見えそうだな」
「・・・・」
「なんだ?」
「え?あ・・・いや、岩城さんがそんな風に言うなんて・・・意外だなとか・・・」
「そうか?」
「あ、でも・・・そうでもないかな? そんな可愛いとこもいいよね」
「・・・」
「そんな岩城さん 大好き!」
「・・・・バカ」



「ん?」
「何?」
「このお茶・・・美味しいな」
「分かった?」
「ん・・・甘い感じが」
「美味しいから飲んでみてって貰ったんだよ、スタッフの人に」
「水も?」
「勿論!それこそ”おいしい水”っていうのにしております」
そう言ってウィンクする
それにつられるように岩城は笑う
気忙しい毎日・・・こんな穏やかな時間は本当に宝物だと思う



岩城の身体を後ろから抱きしめて
もう一度ふたりで月を眺める
「本当に綺麗だな」
「うん・・・」
言葉少なに見つめる
「俺って・・・ホント幸せだ」
ふと香藤が口を開く
「何だ突然に?」
「ん? だって・・・綺麗な月を眺めつつ・・・
腕の中には綺麗な岩城さん・・・最高だよ・・・」
そっと耳元で呟く

・・・・それはふたりだけの合図・・・



馴染んだ手
馴染んだ肌
そして・・・・愛しいもの
・・・・その全てが互いもので 互いだけのもの
「愛してる・・・愛してる」
与えられる言葉が呪文のように身体を包んだ
・・・・・月に照らされた肌に溺れる・・・
「岩城さん・・・」
「香藤・・・」
ふたりの声が淡い光に溶けていった・・・


・・・・・・・
熱を分け合った後
「月に見られちゃったかな・・・岩城さんの肌」
ぼそっと香藤が言う
「・・・何処でも盛るからな」
身体を預け月を見ながら岩城が苦笑する
「むぅ 俺ひとりだけ・・・じゃないでしょ」
抗議の代わりに 囁いてぎゅっと岩城を抱きしめた
・・・腕の中の存在・・・そして自分を包む存在
それは安心を与えてくれる
「香藤・・・」
呼ばれ・・・呼んで また与えられるぬくもりに溺れていたい・・・・
・・・・月だけが見ていた ある晩のお話
喜怒哀楽(同盟の拍手のお礼でした)

【喜】
「岩城さん聞いて!聞いて!!」
「なんだ?帰るなり騒々しい」
帰ってきた香藤の声に手にした雑誌から顔を上げる
「あのね!」そう言いながら ぼふっと岩城の隣に座る
「今度の休み、岩城さんと一緒だよ!金子さんがたぶん大丈夫だって!」
「そうか」香藤の嬉しそうな顔につられて微笑んでしまう
「岩城さんは・・・3日だったよね!俺は2日なんだけど・・・でも重なって嬉しいよ!」
そう言いながらぎゅっと抱き付いてきた
「久し振りの連休だ・・・」
えへへ・・・と香藤が額をこすりつける
「そうだな 最近忙しかったから」
「うん・・・」
「どこか出かけるか?」
「う〜ん・・・」どうしようと考え込む香藤の肩を岩城はちょっと引き離す
「岩城さん?」
「・・・まずは”ただいま”だろ?」
「・・・・だね」香藤はそっと”ただいま”を囁くと顔を寄せた・・・。


【怒】
「・・・・良かった・・・岩城さん」
「ん・・・」
事後の気怠さと程よい疲れが眠気を誘う
「・・・・?」ごそごそと腰のあたりで動く手に目を開ける
「香藤・・・なにしてる」
「え? 何って・・・えっともう1回」
「!!!」身体を起こしかけたが力が入らない
「ば、ばか!お前さっきもそう言って!!」
「そう・・・なんだけど・・・駄目?」
「駄目に決まっているだろう!!明日動けなくなる!」
「・・・やっぱり・・・でもほら・・・」
そう言って岩城の手を自分の所へと導く
「・・・駄目なんだ・・・おさまらない」笑ってるような泣きそうな顔をする
・・・・そんな顔をするな!バカ!・・・・
岩城は心の中で叫んだ


【哀】
知らなければ味わうこともなかった感情はある
会いたくて 声を聞きたくて・・・淋しくなる
人を恋しく想うことは同時に切なさも運んでくる
でも・・・・
それでも・・・・
会えて良かったと思える
会わなかったら今の自分はいない
涙も沢山流したけど
心からの笑いも与えられた
「ありがとう・・・香藤」心の中で呟く いつもいつも
「ありがとう・・・岩城さん」抱きしめて囁く
・・・哀しさ・・・なんてふたりにいらないね・・・


【楽】
何も話さなくてもふたりで一緒にいたら・・・
今はもうそれだけでも楽しいかなあ
優しい目で香藤が話す
勿論一緒に笑いあったり話すのも楽しいし!
笑った顔が眩しくて私も笑顔になる
そしてそれは同時に心を温かいもので満たした
「岩城さんも同じようなことおしゃっていましたよ」
そう告げると益々笑みが深くなった

・・・・いいなあ〜

いつもあの人たちをインタビューして感じること
素敵なものをお裾分けして貰った気になる
「ありがとう」・・・・そんな言葉を心の中でつぶやいてしまう・・・いつも


【そして・・・】
「・・・本当に幸せ・・・」
いつものように腕の中に俺を包み込んで香藤が言った
「なんだ? 突然に・・・」
「ん? だってそう感じたんだよv」
岩城さんは感じない?
ん? っと顔を覗き込んできた
・・・今更だ・・・
こうやってお前の腕の中で いつも感じているんだ
俺の目を見た香藤がふっと笑う
優しい目に俺の心が通じているのが分かる
「でも・・・・言って? 岩城さん・・・」
ちゅっとキスをされた・・・・
なんか顔が熱い
「・・・幸せだ」
そう言うと今度は深い深いキスが落ちてきた・・・・・
それは何よりも大切なふたりの気持ち・・・・
夏のお題(同盟の拍手お礼でした)

『打ち上げ花火』

「うわ、今度は高く上がる!!」
横ではしゃぐ声
「開くぞ、開くぞ!」
空高く線を描いたものが一瞬消えて・・・
どーーーん!
「そうか」香藤の嬉しそうな顔につられて微笑んでしまう
「うわっ!でかっ!!」

何メートルあるんだろう・・・
夜空に大きな大きな華が咲く
幾つもの光る線が闇を飾った
気付くと肩を引き寄せられていた
光に照らされた顔がすぐ側にあった
「綺麗だね!岩城さん!!」
「ああ、そうだな」
そう答えて俺も背中に手を回した・・・


『団扇』

「はい! お土産」
団扇を渡された
「団扇・・・わっ」
「企業の文字が書かれてある面を見てひっくり返して驚く
そこには香藤の満面の笑顔
いや・・・それはいいのだが・・・
あまりのことに目が離せない
「えへっv いいでしょう!?」
「いいって・・・お前・・・」
言葉が継げず またしみじみと団扇を見る
写真に吹き出しがついていて・・・
『愛してるよ 岩城さんv』
・・・ご丁寧に大きなハートマーク入りだ・・・
「スポンサーがね、特別に作ってくれたんだよ!」
「これ配るのか?」<br>半分絶望的な思いにかられる
「そうしたいのは山々だけど、それは別、俺の特注v」
そう言って団扇と同じ笑顔をする
「台詞どうにかならなかったのか・・・」
怒る気力もなくなった俺が呟くと
「他の言葉が浮かばなかったんだよ〜」と
また笑う・・・その顔を見ていたらなんか俺も笑いたくなった


『ストローで間接キス』

リビングにはいるとキッチンから鼻歌が聞こえてくる
手にした本をテーブルに置き
声にする方に足を向けると
カランカラン・・・と氷がガラスに触れる音がする
「香藤?」
声をかけると あ、岩城さん!と香藤が振り向いた
手にはグラス 水滴が涼しげだ
「今持って行こうと思っていたんだよ」
にっこりと笑ってそのグラスを少し掲げる
「お前の分は?」
一つしかないグラスに聞けば 
香藤は持っていたストローをさした
「何杯でも作るから・・・これ一緒に飲もう?」

その言葉に一瞬黙って・・・そして言った

「ああ・・・そうだな」


『雨上がりの庭』

「やっと止んだよ」
窓を開けて深呼吸をし 部屋の中の岩城さんを振り返る
朝から降り続いた雨は乾いた庭をしっとりと濡らした
水に濡れた草の匂いが身体を包む
岩城さんが横に立つ
息を深く吸っているのが分かった
「流石に涼しいな」
昨日までの暑さが辛そうだった岩城さんにはありがたい事なのかもしれない
「身体大丈夫?」
そっと肩に手を置くと コツンと俺の肩に頭をのせてくる
・・・最近の岩城さんは本当に・・・いや とっても嬉しいのだけどv
「ああ 大丈夫だ」と岩城さんが答えてくれたけど・・・

・・・・ごめん 岩城さん・・・なんか俺が大丈夫じゃなさそう・・


『木漏れ日』

キラキラと
光が降りそそぐ
その光に目を開けると 緑の葉と青い空・・・そして白い雲
・・・あ 寝ちゃってたんだ・・・
オフの一日 少しだけ車を走らせてやってきた公園
人影も少なく ここなら気兼ねなく・・・と

あれ・・・岩城さんは?
寝ころぶ自分の側で本を読んでいたはず・・・
身体を起こして振り返ると
幹に寄りかかるようにして眠っている岩城さんがいた
読みかけの本は開いたままに膝の上
その姿を見て微笑む
あどけなく見える姿に愛しさが込み上がる
「岩城さん・・・」
小さく呟いて そっと身体を近づけ・・・その額にキスを落とした