1.

「こりゃまた今年も大収穫で!」
そろそろ引き上げようかとファイルを閉じると同時に入ってきた亘理の声に巽は眉を顰めた。
「ノックをしてくださいと何度言えば分かるんです?」
「まあまあ・・・・しっかし今年はいつにもまして・・・・」
書き上げたばかりの書類を机の上に置きながらサイドテーブルの上に積まれた色とりどりの箱の山をしみじみと眺める亘理。
「本当になあ、みんなコロッと騙されて・・・・」
「ちょっと何、人聞きの悪いことを言っているんですか、いつ私が・・・」
「ああそうやな〜騙すっていうのは違うか。おまえのこと美化してるだけやしなあ〜」
「亘理さん・・・そんな無駄なことを言っている間があれば、この前の実験の報告をお願いします。勿論失敗した時のも詳細に・・・後でかかったコストは請求させて貰いますから」
その言葉に亘理がはあ?と声をあげた。
「おいおい、経費っちゅうもんはないんか」
「認められるようなお金の使い方してから言ってください。まったくしょうもない無駄な実験ばっかり!」
「無駄ってなんやねん! 性転換や!性転換!もう少しで成功なのに」
「・・・・成功させてどうするんですか、そんなもの・・・・」
ため息と共に立ち上がり、亘理が出した書類を明日する分のファイルに振り分ける。
「夢がないなあ、夢が」
「夢ねえ・・・」
前に性転換の薬と言いつつ、職員の身体を小さくしてしまったことは成功だとでも思っているのだろうか。
あの時は大変だった・・・巽は遠い目をした。
普段でも子どものようなあの人の世話に一日中追いまくられ、へとへとになった日のことを思い出す。
もう二度とあんな思いをしたくない。
「・・・・・自分の身体だけで実験してくださいね」
頼むから変な実験にあの人巻きこまないように・・・そう願うだけだ。
巻きこまれたら最後、最終的な迷惑は全部自分に来るのだから・・・・。
「でも可愛かったやないか」
少し含みのある笑い方をする男の顔を睨み付け、巽は帰りの準備を始めた。

可愛かったのは認める、それは確かだ。
子どもは苦手な自分が、あの愛くるしさに心が奪われてしまった・・・・くるっと大きな潤んだ目で自分を見つめてくる顔を思い出し、巽はちょっとだけ動きを止めた。
自分を全身で頼ってくるあの可愛い生き物に何から何まで翻弄されたのだ。

「・・・それは認めますけどね・・・」
だからといって奨励出来ることでも何でもない。
とにかく巻きこむな・・・それだけだ。

「あれ? もう帰るんか? 今日は早いなあ」
「あなた達と違ってちゃんと仕事はしていますからね、毎日でもこんな時間で帰ろうと思えば帰れるんですよ、私は」
「あーそうですか」
そして用意していた紙袋を広げ、貰ったチョコを入れ始めた。

確かに去年よりも多そうだ。
後で賞味期限やチョコのタイプを振り分けないといけない。
そのまま誰かのおやつにする物、何かの材料に出来るもの・・・・これが結構な作業なのだ。
それに巽にはこの日もう一つの大切な事があった。
それは都筑の貰った物の管理だ。
巽や亘理もそれなりの数だが、都筑の貰う数はその上をいつも行く。
そのまま本人の好きにやらせていたら、一日でアレだけの量を平らげてしまう。
何事も計画的に!と口を酸っぱくしているにもかかわらず・・・。
本人は不服そうだが、とにかく14日は仕事が終わったら、チョコを持って家来るようにと言ってある。
今日も来るだろう。
それまでにやっておきたいこともあるのだ。
本当に忙しい。

「なあ、今日都筑来るんやろ?」
「・・・さあ、どうでしょうね」
チョコをしまいながら、適当に返事をする。
「ふ〜ん・・・・」
毎年のことだ、来るくせに・・・と思った亘理だが、それ以上は何も言わなかった。

「ま、楽しい夜をな」
そう言って手を振り扉に向かう。
「は?」
「明日平日やからね〜無理させちゃあかんよ〜」
「何を言っているんですか、あんたは!」

ははは・・・・と笑ってしまったドアを巽は睨み付けた。
今日帰ったらチョコの振り分けと夕食の準備でほぼ終わりだ。まだ週の半ば、週末ならまだしも、今夜は都筑の寝る場所は客間になるだろう。
「人が盛っているみたいに言って欲しくないですよ、まったく!」

そう言いながら巽はドアを開けた。
課室には誰もいなかった。
亘理もそのまま何処かへ行ったようだ。
都筑と密も今日は調べ物があると言って図書室に籠もっているはず。
巽は時計を見て・・・帰宅の途についた。



to be continues・・・・





・・・都筑さん出てきてないじゃん(笑)
ちなみに・・・2年前同じようなネタで書いています
被らないように頑張ります(おいおい)
次回で終わるかも知れないし
回数等、未定です(・・・・)
ほら、リハビリだからさ・・・・遠い目

2006/2/14
Mai Hinase