<

ミニミニ綴り・・・v




『岩城さん 岩城さん』

はい、お茶!と言って

小さな身体で 一生懸命湯飲みを押してくる

「ありがとう でも危ないから もういいぞ」

と言うと 嬉しそうに笑う

その笑顔を見ていると

自然に微笑んでしまう

いつものように手の平を近づけると

ひょいと乗ってくる

可愛い 可愛い 俺の香藤

数日前の早朝に

庭に咲いたチューリップの中に寝ていたのを見つけた時は

思わず目を擦った

丸くなっているその姿をじっと見つめた

そして そっと・・・そっとその頬を指で突っついた

ん・・・と声を出して開いた瞳を俺は忘れないと思う



『岩城さんv』

いつの間にか肩の上に乗っている香藤が

俺の頬に身体をすり寄せてくる

この世にこんな可愛い生き物がいるなんて・・・


「香藤・・・おまえも飲むか?」

そう言うと

幸せそうに笑って

『うん!』と元気な声が返ってきた






"一杯食べたら大きくなれるよ"

そう小野塚っていう奴に言われたから

昨日から一生懸命食べてる

岩城さんは

「どうしたんだ? 今日は食欲があるな」

とか言って笑っていたけど

正直苦しい・・・;;

でも俺頑張らないと!

『岩城さんのこと守るからね!』

頬張りながら そう言うと

食べるか話すかどっちかにしろと

ちょっと怒られたけど

岩城さんは嬉しそうだったv

でもさすがに限界かも・・・お腹が痛くなってきたよ・・・




戻ってみると いつも飛び出てくる姿がない

首を傾げながらリビングに行くと

テーブルの上で唸っている香藤がいた

慌てて手に抱えると お腹がとても膨らんでいて

・・・どうやら食べ過ぎて苦しいようだ

呆れると同時に安堵のため息をついた

熱も出ていないようなので

そっとソファのクッションの上に寝かせる

『う〜ん・・・岩城さ・・・ん』

唸りながらも俺の名前を呼ぶ


「バカ・・・」

そう呟いてそっとその髪に指で触れた・・・






今日は岩城さんがお休みらしい

朝がんばって早起きしたら

「まだ寝てていいぞ」

と 目を擦っている俺の頭を指先で優しく撫でて

布団を掛けてくれた

その感触が気持ちよくて

ほんの少しだけ朝寝坊をした



その次 良い匂いがして目がさめると

岩城さんが作ってくれた朝食が

俺を迎えてくれた


本当に俺って幸せ


大きめのスプーンでスープを飲んでいると

「ほら 香藤」

と 口を拭いてくれた

俺も岩城さんのお世話をしたいのに

岩城さんはとっても綺麗に食事をしていて

俺が口を拭くことなんてないんだ

ちょっとだけ つまんない

でも幸せだからいいか


片づけを手伝うよ!

と言うと

ちょっと困った顔をされたけど

箸とか軽いものを運んだり

ふきんを折ることをさせてくれた

本当は食器を洗ったりしたいけど

一度水に流されてしまったことがあるから

それは出来ないんだよな

だから

今は出来ることをがんばるんだ

そうすれば

きっといつか・・・

そんなことを思って岩城さんを見ていたら

ふと岩城さんがこっちを見て微笑んだ


・・・俺達って幸せだね・・・






『まあ!』

俺を見た時の清水さんの第一声

びっくりした顔 面白かった


打ち合わせの時

岩城さんの上着のポケットから

顔を出していた俺と目があった

「こんにちは!」

元気に挨拶したら

『え!?・・・』と

岩城さんを見て そして俺をまた見たんだ

岩城さんもちょっと困った感じで

でもちゃんと俺と出会った時のこと話してくれた

普通は内緒だけど 清水さんなら大丈夫と思ったみたい

そしたら驚いていた清水さんも

不思議がりながらも俺に向かって微笑んで

綺麗な細い指で頭を撫でてくれた

優しい撫で方・・・

清水さん 大好き!


その後は岩城さんのお仕事の話を

ポケットから身を乗り出して一緒に聞いた

途中よく分からない言葉があった

戻ったら後で 岩城さんに聞いてみよう

それでも夢中になっていたら

かなり乗り出していたらしく

『ほら 落ちるぞ!』

と 手に包まれて戻された

俺をちゃんと入れ直すと

ぽんぽんとポケットの上から軽く叩く

『もう少しで終わるからな』

そう言われて

「うん!」と元気に答えた


ポケット越しでも岩城さんのぬくもり感じて嬉しい

俺も岩城さん用にメモ帳欲しいなv








ん・・・

目をあけたらクッションの上だった

読みかけていた本は閉じられて

テーブルの上に

あれれ?

寝ちゃったのか・・・

身体に掛けられていた手作りの布団からゴソゴソ手を出した

・・・岩城さんは・・・・?

と 首を動かしたら

すぐ横で眠っていてびっくりした!

もうちょっとで声を出しそうになった

慌てて両手で口を押さえる

どうやら俺が寝てしまった後

岩城さんもソファに横になっていたから

そのまま寝ちゃったらしい

俺はクッションの上に座り込んで

岩城さんの寝顔を見つめた

とっても綺麗・・・

いつも優しく見つめてくれる瞳は閉じられているけれど

でも優しい寝顔で守られているように感じる

・・・あ、そうだ!

寝顔を見つめているうちに思いつく

寒くないのかな? なにか掛けるものが・・・・!と

岩城さんが風邪引いたら大変だ!





ソファから飛び降りた親指香藤くんは

掛けるもの 掛けるもの・・・と部屋を行ったり来たり

でも欲しいものには手が届かなくて

それでも一生懸命・・・


やがて大きな音を立ててしまって

岩城さんが目を覚まします

そして

タオルの山に埋まっている親指香藤くんを

見つけることになったり・・・・


そんな幸せな日常v








「・・・っぷ」

つい声が出そうになって慌てて咳をする

するとテーブルの上の香藤が見上げてきた

『大丈夫?風邪?』

「いや 大丈夫だ」

そう答えると『そう?』と言って

また自分のメモ帳に向かった


体に合わせて短くしたエンピツを持って

ああだこうだと言いながら

背を向けて何やら書いている

香藤が言うには俺のスケジュールらしい

俺から見えないようにしているようだが

時々ふと見える・・・・

そこには可愛い絵文字

字も覚えているので書いてはいるのだが

書きやすいのか絵文字も多い

勿論 何が何を示しているのか全部が分からないが

でも日にちと”岩城さんのお仕事”という文字から考えると・・・

あの○と×で書かれた顔は小野塚くんらしい

それが分かった時

思わず笑ってしまいそうになって慌てて誤魔化した


ふふふん〜♪

気持ちよく鼻歌まで聞こえだした

・・・駄目だ あまりにも可愛すぎて

笑ってしまいたくなる

抱きしめたくなる



『・・・ん? 岩城さん、どうしたの?』

「いや・・・何にも」

俺は肩を震わせながら答えた







『なんだよ〜!』

お前が何だと言いたい

『岩城さんはどこーーー!?』

目の前にいるじゃん・・・

『もっと飲むんだー!』

いや・・・やめとけよ・・・もう



さっきから目の前のテーブルの上で

悪態つきまくる小さい生き物

右行ったり

左行ったり

はたまた転んでみたり

この生き物の同居人の方は

こんな風景に慣れているのか

もう諦めているのか

苦笑しながら こいつの動きを見守るだけ

・・・でも大半 俺への悪態なんですけど・・・?


「すまない 小野塚くん」

片手で香藤の動きを制しながら岩城さんが言う

「いえ まあ別に・・・っていうかいつもこうなんですか」

ため息混じりに言うと

「う〜ん 体が小さいから酔いは早いんだけど」

『何謝ってんの? おのづゅか〜お前が悪いのか!!』

・・・フォーク持つなよ・・・

「こら香藤!いい加減にしないか!」

岩城さん・・・顔が甘いんだけど・・・

俺は何度かのため息をつく

大体なんで俺がこのメンバーとここにいるんだ・・・

宮坂の奴が来れば こいつの標的はあいつになるのに!


『こらあお前岩城さんを苛めるなーーー!』

まだ言ってるよ・・・誰が苛めたって?


「岩城さん・・・本当にアルコールには気をつけた方が・・・」

「そうだな でもここまで文句言いになるのは初めてだよ」

清水さんや他の人の時は寝るだけだったし・・・


・・・つまり 俺限定で悪態ついているわけかよ

いい根性じゃん

宮坂の話じゃ香藤の手帳の俺は酷い絵になっていたと聞いた

・・・こいつにとって俺って何?


そんな事を考えながらぼおっと見ていると

『おい 俺の話を聞いてるのかぁ〜』

と トコトコ歩いてきたから

ピンとでこを弾くとゴロゴロ・・・あ おもしれー

でも最後は何故か見事にポーズを決めて

自慢気に岩城さんを見る香藤

そしたら岩城さんも何故か頷いて・・・


えっと なんか・・・・俺ってお邪魔?






テレビの中の岩城さん

優しく微笑んでいる

テレビの中の岩城さん

優しく語りかけている





食事の後で

ソファでくつろぐ岩城さんの膝の上

今日あった事を色々話す

岩城さんの留守の間

こんなことをした

こんな目にあった

そして

岩城さんのお仕事の話も聞いたりする

笑ったり

少し拗ねたり

でも温かい岩城さんの膝の上で

過ごすこの時間


そんな時聞こえてきた

岩城さんの声

あそこにいる岩城さんも笑ってる

話をしている



でも・・・

俺は岩城さんを見上げる

「ん? どうした?」

そっと指の先で頭を撫でられる


ここにいるのは俺だけの岩城さん

俺だけに微笑んでくれる岩城さん

大好きな岩城さん


「岩城さん 好き!」

顔を思いっきり上に向けて言うと

俺を見下ろす顔がより甘くなる

「ああ 俺も大好きだ」

その言葉が素敵なメロディーのように

俺を包む


よしっ! 

俺は岩城さん登りを始める

「香藤?」

しばらくそのままでいてね 岩城さん!

俺 肩まで登って 岩城さんにキスしたいから!

俺だけの岩城さんに

俺の想い伝えたいから!






『岩城さん!』

ソファーの背によじ登って

カレンダーを見上げていた香藤が振り返る

「ん? なんだ?」

足場の悪いところから落ちはしないかと

少しハラハラしていた俺は

何にも無いようにして返事をした

『このね・・・ここ!』

それは6月の9日の所

数日後だ


『この日 丸がついてる』

何かあるの?と・・・・


「それのことか」

ふっと笑って立ち上がり香藤の側に行く

香藤はすぐに肩の上に乗ってきた

「それはお前の誕生日だ」

『俺の?』

「そう」

『誕生日?』

「ああ」

『・・・・』

そしてカレンダーに目を戻す

「この日はお前と俺が出会った日だ」

その時の事を思い出す


・・・花の中で眠る小さな小さな愛しいもの・・・


「だからこの日をお前の誕生日にしたんだ」

ゆっくりと言った

『・・・そっか・・・』

しばらく黙り込んでいた香藤が

小さく鼻をすするのが聞こえた

俺はあえて聞こえない振りをする

『えへへ・・・』

香藤が笑った

『そっか・・・誕生日なんだ』

「ああ この日は何かお祝いをしよう」

『そうだね・・・うん!お祝いだ!』

肩の上で香藤が跳ねる

その様が何よりも愛しくて

俺はそっとその身体を頬に寄せた




10


『う〜〜』

家のことを一通り終わらせてリビングに戻ってみると

まだソファの上で唸っている姿があった


小さく削ったエンピツを口にくわえて

考え込んでいる


・・・やれやれ・・・とため息をつき苦笑する



「まだ書いてなかったのか?」

そう問いながら隣に座ると

香藤は 頭を反らせて俺を見た


『だって・・・』

「願いは決まっているって言っていただろう?」

反らせすぎて傾いた身体を手の平で支えながら俺は言った



”大きくなりたい!って書く!”

少し前

七夕の日は短冊に願い事を書く

そのことを知った香藤は

願い事を書くと張り切っていた

数日前から用意された笹には

遊びに来た小野塚くんや宮坂くんと口げんかしつつ

そして

仕事の連絡に来た清水さんに教えて貰いながら作った

数々の飾りが揺れていた


「それを書くんじゃないのか?」

『そうなんだけど・・・ねえ 岩城さん・・・これさあ』

「ん?」

『願い事ひとつでないとダメ・・・なのかな』

「他にもあるのか」

『うん・・・ある』

こくんと頷く

「そうか・・・・いいんじゃないか いくつか書いても」

あまりありすぎるとどうかと思うが

『大丈夫かな? 願い事届くかな?』

大真面目に聞いてくる

「大丈夫・・・じゃないかな」

じっと見つめてくる目に つい答えてしまう

すると

「そっか・・・」

と 少しほっとしたように香藤が笑った





テレビを見ていて寝てしまった香藤

その身体を抱えて部屋を出ようとした視界に短冊が揺れた

あの後 何か書いていたようだったが

まだ見ないでね!と隠されたことを思い出した

片手に香藤を そっと持ち替えて

短冊に手を伸ばした


”大きくなれますよーに”

名前を書きわすれているぞ?と笑う

そして それよりもっと上

てっぺんに近いところで揺れる短冊にも手を伸ばす

天に近い方が叶うと思ったのかも知れない

そこには香藤の好きな色の紙に書かれた文字

読んで 

そして その小さい身体を胸に抱き込む

「香藤・・・」

すうすうと寝息が愛しい



明日は俺も短冊をつけよう

願いは同じなのだから・・・




”岩城さんとずーっとずーっといっしょにいられますよーに”



瞬く星に想いが届きますように・・・



11

「なんだあ? おまえ雷怖いのか?」

からかう声が聞こえる

『怖くないよ!でも気をつけなくちゃいけないんだ!』

元気な声 でもちょっと無理してるような

「気をつける?って何?」

『知らないの? おへそとられるかも知れないんだよ!?』

「へそ・・・・あははは」

マジで?! と言いながら笑う彼

そしてそれを見て益々ムッとする香藤


俺は苦笑しながらカップをリビングに運んだ

「小野塚くん あんまり苛めないでくれないか」

俺の姿を見てパタパタと走ってきた香藤を抱えながら言うと

俺の腕の中で香藤がべーと舌を出す

「こら 香藤!」

「おっ 生意気!」

面白そうに香藤のデコを指で突っついて彼はまた笑った

「分かってますって!」

「でも雷鳴っている間 ずっと岩城さんの上着 被っているからなあ〜

説得力無いぞ?」

『煩い!ばかー!!』

香藤が足をバタバタして暴れる

「こらこら」

その身体を押さえ込む


その時


凄い光と共に大きな音が鳴った

『うひゃ!』

小さな声をあげて香藤がしがみついた

あまりの光り方に俺達まで肩をすくめてしまう

香藤の背中をそっと撫でた

『今のは凄かったね〜』

見上げる香藤に

「ああ そうだな」

と答えると

『ね!』

と 後ろを振り返っていた

「まあね・・・」

小野塚くんが苦笑した



「こりゃ何処かに落ちてそうだなあ・・・」

『大丈夫かなあ』

音が落ち着いた後

窓に近づいて外を見る小野塚くんと

その肩に乗る香藤

・・・何だかんだ言って仲良しだな・・・

そんなふたりを見ながら珈琲を飲んだ