桜の夜  前編





「夜桜を見に行きましょう。」
そう言ったのは巽。



例年より暖かめの今年は地上の桜の開花も早いらしく各地の桜の名所では満開となり賑わっているようだった。
比較的時間に余裕のある亘理や密にも声をかけて、課長に休みをもらって1泊2日、巽が宿の手配から全て一人でやった。
いつもなら・・・とは言ってもそう旅行に出掛けることも多くはないのだが・・・・それが通るかどうかは別にして、多少なりともみんなの意見を聞いて決める彼が今回に限りさっさと済ませたことに都筑は少し首をかしげた。
けれど夜桜見物に宿泊つきの旅行、そのめったに味わえない美味しさに、都筑は浮かんだ疑問を頭の隅に追いやった。



人里離れた小さくて静かな旅館、ここが巽が選んだ宿。
庭には大きな垂れ桜があり、宿に着いた4人は思い思いにその美しさを堪能した。
観光地とは違い無駄な明かりもない、月の光の中で見る桜は幻想的な雰囲気をも醸し出していた。

美味しい食事と岩風呂のある温泉、そして美しい桜。
召還課で行く職員旅行でもこんなにゆったりとしたことはないんじゃないかと都筑は思った。
用意された部屋の窓からは庭の桜がいい具合に見えて申し分ない。





ただ気にかかると言えば・・・少しだけ巽が無口だった・・・ということ。

何かに怒っているような、考えているようなそぶりが垣間見える。
けれどそれは本当に注意していなければわからない程の小さなこと。
ちょっとした言葉のやりとりとか物の受け渡しに都筑が感じたことだった。

ふとした瞬間に、『あれ?』と思う程度・・・・・でもそれが何かはよく分からなかった。






岩風呂に入って汗を流し、素朴ながら旬の食材をたっぷり使った夕食はとても美味しくて、酒も進む。
普段はこういう場が苦手な密でさえ、楽しんでいるようだった。
亘理と都筑はお互いに酒を酌み交わし飲んで、笑ったり、馬鹿を言ったり・・・。
巽は・・・・そんな彼らを見ながらいつものように静かに食事をとって、酒を飲んでいた。

そして夜半近く、彼らは寝静まった・・・・はずだった。





そっと肌を撫でられるような感覚を都筑は感じる。
深い眠りから徐々に意識が戻る・・・・とても気持ちがいい。
ゆっくりと目を開けると薄暗い部屋と聞こえるのはみんなの寝息だけ・・・・それと近くに流れる川を流れる水の音。
まだそれほど寝付いてから時間が経っていないようだ・・・都筑はもう一度目を瞑った。
その時自分の腰のところを触る手があることに気付く。
・・・えっ?! 何?・・・・
4人は川の字のように横一列で寝ている。
右側に密、亘理、そして左側の窓際に巽が寝ていた。
それを考えると・・・この手は・・・
・・・巽!?・・・・
慌てて巽の方を見ると、彼は何事もないように仰向けになっているようだ。
暗くて表情までは見えない。

そうこうしているうちに寝乱れた浴衣の裾から巽の手が入ってくる。
明らかに目的を持ったその動きに都筑は慌てた。
今更恥ずかしいというのではないが、二人っきりではないのだ。
隣には亘理も密もいる。
そんなところで感じて声をあげるわけにはいかない、都筑は巽の手を避けるべく身体の向きを変えようとした。


だがちょうどその時密が身体を動かす。単なる寝返りなのだろうが、その動きは今の都筑を牽制するには充分だった。
はっと動きを止めた都筑に容赦なく巽の手が這う。
動けないままに、握り込まれたそれを巽がゆっくりと扱きだした。
「・・・・・・っ」
アルコールのせいか普段よりも感じやすくなっている都筑のものはあっという間に形を変え始める。
やめろ、と言いたいが声を出せない。
手を振り解くには与えられる快感が邪魔をする。
ゆっくりと強弱をつけるその動きを追ってしまう。
うっすらと額に汗が滲んできた・・・・いや額ばかりではない。
身体のあちらこちらがしっとりと汗ばむ。
息も自然と荒くなってくる・・・その音でさえ隣に寝ている二人に聞こえるのではないかと都筑は呼吸さえも満足できない状態になっていた。


熱い・・・・。

いつの間にかはだけてしまった薄い掛け布団は足元に追いやられている。

・・・あっ・・・・やだ、そこっ・・・・

巽の方を向く余裕がないままに高められる。
都筑の快感の場所を知り尽くした手が貪っていく。
撫でられ、揉まれ、握り込まれて、休みなく動く手の動きだけがまるで見えるように感じた。
つい流されて声を出しそうになり慌てて口を押さえる。
それでも漏れる息だけは抑えられない・・・・・目から涙も零れ出す。
枕の端を掴みながら、そして片方はシーツを掴みながら
都筑は目を瞑り、与えられる快感にひたすら耐えていた。



どれくらい時がたったのだろう、また密が寝返りをうつ。
その音に都筑は、現実に引き戻された。
・・・・こんな所でこんなことをするなんて、巽もどうかしている。
止めさせなければ、いけない・・・・例えそれが自分にとって辛くても、今ここで事に及ぶわけにはいかないのだ。
必死で息を整えようとすると、巽がそれを邪魔するかのように指に力を入れる。
その度に、小さく小さく声が漏れて追いつめられていった。



都筑は巽が触っているそれへと手を伸ばした。
とにかくここでは苦しいだけだ。
手を離させなければ・・・・。

それはあっという間。
近づいた都筑の手が巽の手に包まれて、気がつくと自分の手で自分自身を握っていた。

「たつ・・・・」
驚いた都筑が声を上げる。
しかしぱっと伸びてきたもう一つの手に口を塞がれる。
そして・・・・再び動き出す手。
今度はさっきよりもゆっくりと扱いていく。


・・・いやっ・・・あっ・・・・


出せない声を心であげながら都筑は身体を反らす。
熱が体の中にたまって出口を求める・・・・。

自分の手と巽の手と両方の温かさが、そして微妙にあたる感触が先程とは比べものにならないほどの快感を与える。
感じすぎて辛い都筑は頭を振る。でも音は立てられない。
感じれば感じるほどに隣の二人が気になって、そしてそれがまたいつもよりも感じさせて訳が分からなくなってきた。
激しく身体を動かしたいのに動かせない。
声を出したいのに出せない。
そのもどかしさが都筑を追い上げていった。



やがて限界が近づいてくる。
さっきよりも少しだけ身体を起こした巽が触っていた手を入れ替えた。
けれど都筑にはその隙を見て逃げる気力は残っていない。
ただひたすらに巽から与えられる快感を追っていた。
巽は左手で都筑の頭を抱え込み。右手を都筑の手に添えて尚もその行為を続ける。
都筑は表情を見たくて目を開けた・・・・でもうす暗くて、よく分からなかった。

巽の指が先端を弾く。すべるように往き来する指に身体が震える。
「うっ・・・」
堪えきれずにもれた声に、また汗が出た。
・・・・巽・・・・もうっ・・・・やっ・・・・
心の中で懇願する。
・・・・出したい・・・・
ただそれだけ。
都筑は少し首を傾けると、いっぱいいっぱいの様子を顔の横にある巽の耳朶を噛むことで知らせた。
もう・・・・これ以上は我慢できない・・・・。



頭に廻された手がそっと頬を撫でる。

そして都筑の耳元に巽が口を近づけた。


「・・・・・・いいですよ・・・・・」


小さく小さく囁かれたと同時に、巽の手が激しく動き出す。

声が出そうになる都筑の唇を巽が覆った。


「・・・・・っ!」


目の奥で何かがはじけた。
背中が反り、顎を上げる。
そしてその瞬間巽の舌が都筑の舌に絡みついた。


都筑の手が温かいもので濡れた・・・・・。




今までにない程の快感の中を都筑は漂っていた・・・・・。


2002・3・26
M・Hinase



★続くようです・・・・(ヲイ)
生ぬるいぞ〜と思われた方もいるかも・・・・。
あくまでも当サイト比なのでこの部屋に。
で、何で巽さん、怒っているの?(笑)
真相は2で明らかに!(本当に?)

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