『afraid』




 ――夜桜の下で、鈍い音がした。
「……まだヤるのか?」
 冷ややかな瞳。
 相手を見下し、冷たく微笑む姿は……容赦なく相手の身体だった一部を踏みつけた。
「お前を……倒せば……ッ」
「懲りない奴らだな……そんな力でサーガの地位を狙うなんて!」
「ガッッ……ッ」
 身体中から噴出した血が都筑にかかる。
「お前には無理だよ」
「グッ……ッ」
 都筑の『札』が刃となりて悪魔を仕留めた……。


 ――カタン。
 と、静かに戸が閉まる音が寝ていた巽を起こした。
「……?」
 ゆっくり目を開けて巽はようやく気が付く。
 直ぐ側で寝ている筈の都筑の姿が無い事に……。
「……都筑さん?」
 静寂な夜に秒針の音が鳴る。
 時間は午前2時を少し回ったところ。
 暫くすると、都筑が部屋の戸をそっと開けた。
「……シャワー浴びてきたんですか?」
「え? あっ、うん。ゴメン起こした?」
「いいえ……」
 と呟き、巽は掛け布団を少し捲ると都筑がその間へ入ってくる。
 ――血の匂いがする。
「……都筑さん……」
 そっと囁いた言葉を巽は躊躇った。
「何?」
「……いえ。何でもありません」
 ――微かに匂う血の香り。
 時々感じる不安。
 過去、都筑とパートナーを組んだ時の記憶。
 仕事柄旨く『事』が運ぶのはごく稀だ。大抵ターゲットとやり合う事が多い。
 その仕事の時に垣間見た都筑の表情が忘れられない。
 それはホンの一瞬の事だったけれど、恐怖を覚えた瞬間、魅入られた自分がいた。
 ――返り血を浴びた都筑の姿。そして一瞬だけの微笑。
 優しく笑う都筑とは全くの別人になっているような、妙な感覚。
「……都筑さん」
「っ……んっ」
 ゆっくりとベッドが揺れて、巽は都筑へと口づけた。
 ――不安で仕方が無い。
「巽っ……っ」
 小刻みに震える身体。
 ふっくらとした唇。
「都筑さん……愛しています」
「ふっ……あっ……」
 何度も口づけて、抱きしめて……。
 繋ぎとめておきたい。
 ――血の匂いを掻き消す程に。
 貴方であって、貴方でないモノに奪われないように……。
 

                                                END


★秋篠琴音様のサイト「Penguin」でキリ番を踏んで書いていただいたSSですvv
リクエストは「血を見て笑う都筑」でしたv
とりとめのないリクに素敵なSSで返して下さった秋篠様に感謝です〜、ありがとうございますvv 
大切にします(*^_^*)。
巽だったらこういう風に接するのだろうなあ・・・・と思います。それが巽の優しさであり、弱さなのだと。
秋篠様、ありがとうございましたvv