もう二度と…




今日は節分。

珍しく定時で仕事を終えた巽は都筑を自宅に誘った。

「都筑さん。今夜は家に夕食を食べにいらっしゃいませんか?」

「えっ、いいの?行く行く。」

都筑が巽の美味しい料理を食べられるチャンスを逃すはずはなく二つ返事で誘いに応じた。



リビングで巽お手製のおやつを食べながら待つこと暫し。

「都筑さん、お待たせしました。」

巽の声に都筑がダイニングに入るとテーブルの上には美味しそうな料理とともに数種類の巻き寿司が乗っていた。

「わ〜美味しそう。さすが巽。」

丁寧に切り分けられ綺麗に盛り付けられた物の他に巻いたままの物が2本あった。

「あっ、もしかしてこれって丸かぶり寿司?」

「ええ。あなたやってみたいって言ってたでしょ。」

目をキラキラさせて見つめてくる都筑に巽はにっこり微笑んで答える。

「ありがとう巽。」

巽は都筑の満面の笑顔に頬が緩みそうになるのを引き締め尤もらしい顔をしてみせる。

「知ってますか都筑さん。この丸かぶり寿司が全国的に有名になったのはここ数年のことですけど、関西では結構前から行われていたんですよ。」

「ふ〜ん。そうなんだ。」

都筑は一応相槌を打つものの早く食べたいらしくその目は美味しそうなお寿司に釘付けだ。

巽はこれ以上何を言っても都筑は聞きはしないだろうと判断し、その両肩に手を掛けて今年の恵方である東北東を向かせる。

「今年の恵方はこっちです。それから分かっていると思いますけど1本食べ終わるまで喋ってはいけませんからね。」

そう念を押して都筑に寿司を渡す。

「では、いただきます。」

「いただきま〜す。」

都筑が1本食べ終わるまで2分も掛からなかった。

一方、1口30回噛む巽はまだ3口目を咀嚼中だった。

都筑はしばらく巽が食べ終わるのを待っていたが何か思いついたらしく1皿の寿司を持ってキッチンに入っていった。

(ちょっと都筑さん、キッチンに何の用です?私の自信作の寿司をどうするつもりですか!?)

そう叫びたい巽だったがいかんせん寿司はまだ半分近く残っている。

都筑に偉そうに言った手前、食べ終わる前に喋るわけにはいかない。

早く食べなければと思うのだが習慣とは恐ろしいもので、どうしても1口30回噛まないと飲み込むことができない。

キッチンから都筑の楽しそうな鼻歌が聞こえてくるのとは裏腹に、巽の不安と焦りはどんどん募る。

かくて、巽が最後の1口を飲み込んだ時には最早手遅れとなっていた。

何やらキッチンから鼻孔を刺激する強烈な匂いが漂ってくる。

慌てて駆け込もうとする巽の前に都筑が先程の寿司の皿を持って現れた。

「あっ、巽食べ終わったんだ。ちょうど良かった。見て見て〜。」

巽の鼻先に突きつけられた寿司の皿からは生クリームの甘ったるい匂いが立ち上っていた。

「へへ〜。綺麗でしょ。寿司ケーキだよ。普通のお寿司はさっき食べたから違う食べ方をするのもいいと思って。われながら綺麗にデコレーションできたと思うんだ。」

そう、確かにそれはスポンジケーキの上にされていたなら見事と言うしかない飾り付けだった。

しかし、土台は『寿司』なのである。

どう考えても寿司と生クリームの味がマッチするとは思えなかった。

「………」

巽は無残に姿を変えた自信作の寿司を前に言葉を失った。

しかし巽はもっと重大な気づく。

先程から鼻孔を刺激している強烈な匂いの発生源はこの寿司でない。

ではこの匂いを発している物は何なのか。

巽はできることなら訊きたくないと思いながらも恐る恐る都筑に訊ねた。

「…都筑さん、他にも何か…作りました?」

都筑はよくぞ訊いてくれましたとばかりに顔を輝かせる。

「うん、あのね。赤出汁のお味噌汁も作ったんだ。お寿司と言えばやっぱり赤出汁でしょ。今持って来るね。」

そう言うと都筑は会心の作の寿司ケーキをテーブルに置き、パタパタとキッチンに駆け込んで行く。

(都筑さん、持って来なくてもいいです!)

そう言えたならどんなにいいだろうと巽は思った。

しかし都筑を泣かせたくはない。

そのためには都筑の作った物を食べることは避けられないないだろう。

巽は悲壮な覚悟を決めた。

そして心の中で誓う。

もう二度と寿司の丸かぶりなどしないと…。



★グレペン様からのお見舞いSSをいただきましたvvvv
節分ネタの巽都ですv\(^_^)/
巽・・・・受難;;;
寿司と生クリームですか・・・・それは・・・・勘弁(^^;)だよ、都筑さん・・・
で、赤出汁付き・・・愛だね巽、がんばれ巽(笑)
復活出来たんでしょうか・・・・巽
困る巽はツボでございます〜vvv
グレペン様ありがとうございます