〜フォトグラフ後日談〜


「すまんなっ!」
狐太郎がカラカラと笑った。
虎次郎の方は自分に出された茶をのんびり、ぼへ〜っとすすっている。
「・・・・・・」
対する十二神将達の表情は暗い。果てしなく暗い。当然だ。自分達の写真と引き換えに貰いうけるはずだった、それぞれのお好みの都筑の写真。
それがすべてパーになってしまったのだ・・・一人の男によって。
天空宮の一室で狐太郎・虎次郎兄弟をわくわくしながら出迎えた一同は、たった今絶望のずんどこに突き落とされたところだ。その度合いはドーハの悲劇に等しい・・・かもしれない。
「くれぐれも断っておくが、巫女殿は悪くないぞ。ついでにわしらも悪くない。途中までは上手く事が運んでおったのだ。それを」
「・・・あの秘書か」
鉛のような重苦しいトーンで狐太郎の言葉を引き継いだのは騰陀である。たった一言の中に、揺らめく炎のような殺気が漂っている。
「全く・・・どこの世界にも食わせ者がいるものだ。いまいましさはどこぞの誰かといい勝負だな」
「同感ですねえ・・・私達の主を一人占めしようなどと。うっとおしい者がまた一人増えてしまった」
蒼龍と六合の会話も、いつもにも増して毒の濃度か高い。
「都筑ちゃんの写真もらえないの〜?楽しみにしてたのになあ・・・」
「本当に残念ですわね。お互いの写真を見せ合いっこしましょうって、相談してましたのに」
「いぢわるな嫁に孫と会うのを妨害されたじーさまの心境とはこんなもんかのう」
「気軽に合えない分、せめて都筑の笑顔を宝物にしておきたかったのだけどねえ・・・」
「折角都筑の麗しい姿を我が胎内に展示しようと、特別室まで用意しておったのに・・・(名前はもちろん「紫水晶の間」)」
天后、勾陳、玄武、大裳、天空・・・皆意気消沈してしまった。太陰も・・・
「はにゃあ〜vv」
いつもと変わらない。彼(?)も写真をリクエストしたのだろうか・・・?
「・・・・・」何やら貴人がぶつぶつ呟いている。
「?どうした貴人」
蒼龍が尋ねると、
「いえ、さすがに僕も少々腹が立ちましたので、その方に言霊を送ろうかと」ニッコリ微笑み、貴人は再び呟き始めた。
「赤字倍増、借金倍増、書類倍増、経理の若造の苦情倍増、都筑さんのエンゲル係数倍増、都筑さんの破壊度倍増・・・」
何故召還課のウラ事情まで知っている、貴人。
「あああ〜っ、こんな小さな写り方じゃ、都筑だかありんこなんだかわからないじゃないか!しかもモノクロだなんて!でも都筑だから大切にとっとかなくっちゃね
え・・・」
朱雀が悔し泣きにくれる。
「しっかしあいつ、こ〜んなちっこくて古びた写真、ずーっと持ってたのかあ〜」
白虎がひらひらと写真をかざすと、
「・・・気持ちはわかる」
返答とも独り言ともとれる調子で騰陀が言った。

十二神将達の脳裏を、彼らの主の泣き顔がよぎる。
何十年も昔―――「またパートナーに逃げられちゃってさあ〜」そう言って都筑は天空宮に顔を出した。
宴会が開かれ、皆で騒いだ。最初から最後まで、都筑は笑っていた。
酔いつぶれて眠りに落ちる寸前、彼はポツリと呟いた。
「・・・ごめんね」
それは誰に対する言葉だったのか。独りで、心の中だけで泣く主が切なかった。それでも自分達に寄りかかりに来てくれたのは嬉しかったけど。
かつて、主を哀しませた人間。そして、主をひたすらに想い続ける人間。詳しい事情は知らないが、その男が主にとって特別な存在であるということを彼らは承知している。

そして、時は流れた。

「これだけ独占欲をあからさまにするようになったってことは・・・都筑を守れるようになったっていう俺達へのメッセージだと思っても良いのかなあ?」
「甘いよ白虎!まだまだあたしは許さないからねっ!」
いきり立つ朱雀。
「・・・事情はよくわからんが・・・」
一同、注目。
唐突に口を開いたのは、それまでなんとなしに皆の様子を眺めているだけだった虎次郎であった。人は我らと違い、変化の激しい生き物だ。それが吉と出るが凶と出るかは別の話だが。・・・主が幸せに見えるのであれば、信じてみるのも良いのではないか。我らも巫女殿の相方の事を信じておるぞ。相方の事を語る巫女殿は、実に美しく、幸せそうなのだ。そうさせる事が出来る人間というだけで十分だ、とわしは思う」
「少々ヘタレなところもある奴じゃがのう」
うんうん、とうなづく狐太郎。

昔と変わらぬ都筑。昔と変わった都筑。
今の彼が纏うのは、決して哀しみの色だけではない。

「・・・まあ、少しは信用に足る人間と思っても良かろう。少なくとも都筑の一千倍は有能な人材らしいしな」
ごほん、と咳払いをして蒼龍がしかめつらしく述べた。今の主の笑顔を美しくしているのは誰なのか。悔しいが自分達だけではない事を、彼らは知っている。
「俺は都筑が幸せならオッケーだけどなっ♪朱雀姐さんはどうよ?」
しっぽをふりふり、面白そうに白虎が尋ねると、
「あたしだって都筑が幸せなら・・・でも、都筑がまた泣くようなら、すぐさまぶっ飛ばしに行くからねっ!!」
不承不承、朱雀が言い放った。
「それにしても・・どうしましょうね、写真」
穏やかに話す貴人だが、多分これに関しては全然納得していないに違いない。息子がリクエストした内容を思い出し、蒼龍は密かにため息をついた。もっとも、彼も人のことは言えないのだが。
「・・・隠し撮り、というのはどうだ」
ニンマリ笑った狐太郎の意見に皆の視線が突き刺さる。
「都筑殿にも内緒で撮影させてもらうのだ。あの御仁は嘘が下手そうゆえ、何かあったら真っ先に本人の口からばれてしまう可能性が高い。逆に言えば、本人さえも知らぬ事なら露見し難かろう。それにだ。隠し撮りならば、リクエストよりもっと・・・スゴイものが撮れるかもしれんぞ。なにせ無防備だからのう〜」
ゴクリと喉を鳴らす音がする。誰だ。
「・・・もしかして、それを我らがやるのか」
胡乱な目で狐太郎を見つめる虎次郎。
「このままでは巫女殿が嘘をついたことになってしまうではないか。皆の期待にも応えねばならん。何も中途半端はいかんぞ!」
要するに、遊びたいのか。この自体を一番楽しんでいるのは、実は兄であることを虎次郎は見抜いていた。

しばらくして・・・狐太郎・虎次郎兄弟の「成果」に、あるものは喜び、ある者はキレてしまう事となる。
さて、彼らの「スゴイ写真」とは一体・・・?

                 END・・・?  






★キリリクで書かせて貰った「photograph」の後日談を広夢さんが書いてくださいましたv ありがとうございます。
式神達の諦めきれない想いをバックに狐太郎・虎次郎兄弟はどのような手にでるのか! 楽しみです〜!! 続編も是非! 是非! よろしくお願いします〜(^^)/。