Automatic

「只今、戻りました! 課長!」
 と、勢い良く都筑は課長室のドアを開けると、
両手にある土産をどっかりと机の上へ乗せた。
 その行動に近衛は、都筑の常識の無さに、
「ノックぐらいせんか! ばか者!」
 と、怒鳴った。
 仮にも、都筑たち死神の上司である。
それぐらいの常識はあって当然なのだが……。
「ええ〜。良いじゃ無いですか、別に。課長のお土産も買って来たんだし」
「……そういう問題じゃ無い――」
 と、言い終わらないうちに密が、
「黒崎密。沖縄勤務から只今戻りました」
 と、姿勢良く言った。
「うむ。ご苦労様」
 近衛はそう言うと、視線を都筑に向けて、
「お前も黒崎君を見習ったらどうだ?」
「……何で、密ばっかり皆褒めるんだよ……」
 と少し剥れて、呟いた。
「とにかく、二人ともご苦労だったな。明日はゆっくり休んでくれ」
「はい。都筑、行くぞ」
「あっ、ごめん先行ってて」
「何、言ってるんだよ。その土産皆に配るんだろ? 早くしないと……」
「うん。そうなんだけど……」
 と、さっきからキョロキョロと辺りを見渡している。
 ――どこに、いるんだろう? ここに来れば一番に逢えると思っていたのに……。
「……先に配っておいてやるよ」
 と、密は溜め息混じりに呟いた。
 全く、世話の焼ける……。
「課長、巽さん何処にいるか知りませんか?」
「ああ、巽なら調べ物がある、とかで第一資料室に居てる筈だが」
「ありがとうございます。では、失礼します」
 密はそう言うと、課長室を後にした。
 ――第一資料室……。ありがと、密。
 巽の居場所も判った。都筑は嬉しくて、つい笑顔で、
「課長、これお土産」
 と、紙袋から土産を取り出し、さっと課長に手渡すと、
「じゃ、失礼します」
 と出て行った。
「……何だ? アイツは」
 近衛はそんな都筑の行動に、訳が判らず首を傾げていた。


 第一資料室……。
 そこに巽がいる。
 都筑は急ぎ足で、向かった。
 心臓がドクドクと高鳴っていくのが判る。
 都筑はドアの前に立って、息を思いっきりすい込んで、ドアを開けた。
 中にいた巽はドアの開く音がした事に気が付いて、目を向ける。
「……都筑さん?」
 目の前に立つ、満弁の笑みをした都筑の姿。
 久しぶりの再会。
「ただいま。巽」
「おかえりなさい。都筑さん」
 巽もこの時は、仕事中だという事を忘れて、恋人でいる時の笑みをした。
「逢いたかった。巽」
「ええ。私もです」
 巽はそう呟くと、すっと、都筑の腕を引っ張って、抱きしめた。
「たっ、巽っ」
 その行動に、都筑の身体は硬直したかのように、動けなくなって頬に触れる巽の手が、すっと顎を上向かせると、巽の顔が近づいて――。
「あれ? 誰か使ってるみたい」
「あっホントだ。鍵取りに行かなくてラッキーだね!」
 と、廊下から声がして、中にいた巽と都筑はパッと離れた。
「都筑さん。そこの資料取って貰えます?」
「あ、うん。良いよ」
 と、巽に言われた資料を手に、ドキドキしながらごく自然に、振舞うように……。
 だが、声の主は、
「あっ、ごめん! 第一じゃなくて、第二の方だった」
 と、一度回されたドアのノブが又、元に戻っていった。
 二人の声が段々遠ざかっていく。
 都筑はそれに安心して、ホッと息を付いた。
「……何やってるんだか……」
 と、呟いて、二人はほぼ同時に笑った。
「全く……」
 流石の巽も焦ったらしい。眼鏡に手が掛かってすっと合わせている。
「ゆっくり話しも出来ませんね。今夜食べに行きませんか?」
「うん。良いよ」
「では、仕事少し遅くなるかも知れませんが、待ってて下さいね」
「判った。じゃ、皆に挨拶してくるよ」
 と、言った都筑の頬は少し赤みをさしていた。



「美味しかったね。巽」
「ええ。あそこ評判が良いんですよ」
 食事を終えた二人は散歩がてら、歩いて二人のマンションへと向かっていた。
 夜風が気持ちいい。
 ワインで少し火照った頬を癒してくれる。
 ――玄関を開けて、一歩踏み入れると、巽は電気も点けずに都筑へと口づけた。
「ふっんっ……たつ……」
 久しぶりに触れる恋人の温もり。
 巽は深く唇を合わせて、それに応えようとする都筑の舌を絡めとり口腔を探った。
「んっ……」
 息が苦しくなっていくのに、離れたくなくて都筑の腕が巽の背に回る。
 腰に回された巽の手が、するりと下肢へと伸びて、次第に薄れゆく意識の中で、都筑はハッとする。
「巽っ、待って……」
「……何故?」
「シャワー浴びたいんだ。だから……」
 都筑の手が巽を引き離す。
「ああ、そうですね。着替え用意しておきます」
「うん……」
 都筑は頷くとパタパタとバスルームへと駆けていった。
 心臓が少しうるさい。
 甘い口づけの余韻が身体に残っているようだ。
「汗、いっぱいかいたから……綺麗にしないと」
 都筑は服をさっと脱ぎ捨てると、シャワーの蛇口を捻った。
 ザー、と暖かなお湯が身体に降り注ぐ。
 暫くシャワーに当って、石鹸を手にしてゴシゴシと身体を洗い始めた。
「ん?」
 ふと、鏡に写った自分に、都筑は顔を赤く染め上げさせた。
 何時、つけられたのか……首筋にハッキリとある跡。
 次第に、何時つけられたのかと考えていると、あらぬ事までも思い出して……。
「今から……」
 抱かれるんだ。
 と考えると益々顔を真っ赤にさせて……身体の奥が熱くなるのを感じた。

 巽はフッと息を抜くと、きっちりしめてあるネクタイを解くと、背広をソファに掛けた。
「焦り過ぎだな……我ながら情けない」
 ホンの数週間逢っていなかっただけで、都筑に触れてしまうと我慢が出来なくなってしまう。
 時間は幾らでもあるというのに……。
 巽は大きく息を吸うと、都筑の着替えをバスルームへと持って行こうとした時だった。
 ガタン! とバスルームから音がして、巽は慌てて向かった。
「都筑さん!?」
「っ……」
 戸を開けて巽が目にしたのは、どうやら、滑ってひっくり返った都筑の姿だった。
「大丈夫ですか?」
 巽は都筑の身体を起こそうと手を差し伸べた。
「うん……大丈夫」
 差し伸べられた手を無意識に都筑は掴もうとしたが、今の自分の状態を見られたくなくて、手を取ることを躊躇った。
 石鹸の泡で隠れてはいるが、熱を持ち始めたモノは否応無く硬くなっていたからだ。
「どうしました、都筑さん?」
「なんでも無い。一人で立てるから……」
「何言ってるんです、辛そうじゃないですか」
 と巽は溜め息を付くと、
「世話をやかさないで下さい」
 と、都筑の身体を軽々と立たせて、抱きとめた。
「あっ、たっ巽っ、離して」
 その一瞬、下肢が巽に触れた感じがあって、都筑はカッっと顔を赤く染め、巽から離れようとしたが、力強く捕まれた腕は離されず、今度はがっちりと腰を捕まれた。
「……都筑さん……感じてくれていたの?」
 湿った音と共に巽が囁く。
 その声に都筑の身体は反応してしまうらしい。
 赤く染まっていた頬が今度は身体中を染めてしまう。
「ばか……言うなよ」
「どうして? 恥ずかしいから?」
 囁いた声は都筑の耳朶を食むように触れて、
「貴方の声が聞きたい……」
「なっ、ちょっ巽……んっ」
 巽の指先が都筑の胸へと滑り口づける。
「んはっ……巽、服……」
「貴方が脱がせて……」
 囁いて、唇が触れ合う。
 優しさと情熱のあるキスと共に、二人は同じ鼓動を聞いていた……。    END



★秋篠琴音様のHP「Penguin」にて6000番のキリ番を踏んで書いていただいた小説です♪
『巽都でお風呂ネタ』という妄想丸出し(笑)の私のリクエストに、こんなに素敵な余韻の残るお話を書いてくださいました(*^_^*)。この後どうなるんだ〜〜やっぱり・・・・・ねえ・・・・ごにょごにょ・・・・。
秋篠様、ありがとうございました〜もう都筑が可愛くてたまりません!
こんな素敵なお話がたくさんのHP「Penguin」にはリンク部屋よりどうぞ!