秋
| 「やっぱり此処にいたんですね・・・・。」 溜息混じりの声に都筑が顔を上げると、腕組みをして自分を見下ろしている巽がいた。 「うん・・・」 少しだけ微笑んで都筑が答えた。 そして目を前方に広がる木々へと移す。 いつの間にか季節は秋で 頬に当たる風も冷たくなってきていた。 巽はしばらく無言のまま都筑を見下ろし・・・・そっと隣に腰を下ろす。 「・・・・巽、仕事は? 呼びに来たんじゃないの?」 「まあ、少しくらいは。・・・・急ぎでもないですし。」 そう答える巽に都筑がくすくすと笑う。 「さぼり癖が移っちゃった? 課長に怒られちゃうね。」 「私は大丈夫ですよ。」 「じゃあ、俺だけ?」 「日頃の行いです。」 「酷いなあ〜。・・・・でも・・・・・・・そうだね、きっと。」 そういうとまた都筑は前方を眺めた。 「・・・・・何を見ているんですか?」 あまりにも切なそうなその瞳に不安になる。 出来ることならその瞳にはいつも幸せな色を浮かべてあげたいのに・・・。 「ん?・・・・なんだと思う?」 都筑は目を細めて呟く。 「・・・・・分からないから・・・・聞いているんでしょう?」 都筑が巽を見つめる。 「そう?・・・・・分かっているのかと思った・・・・。」 「都筑さん・・・・・」 あまりにもまっすぐに巽を見つめてくるその瞳に言葉をなくす。 「きっと・・・・巽が思っていることと同じだよ。」 そう言ってにっこりと笑う都筑が 笑っているのに泣いているように見える都筑が とても・・・・とても美しくて・・・・ 「た、たつみ・・・?」 急に肩を引き寄せられ抱きしめられた事に驚き都筑が声をあげる。 でも巽はそんなことにはお構いなしに強く抱きしめて・・・・。 すっかり冷え切っていた身体に巽の暖かさが触れる。 都筑は巽の肩に頭を乗せて目を閉じた。 いつかこの願いが叶うとき いつかこのぬくもりをなくすとき そのことを夢見ながら同時に怖れる自分がいる。 この季節になると そして この季節が終わりを告げるとき いつも取り憑かれる想い 葉が落ちるように 木々が色を失うように 「巽・・・」 都筑は自分の頬を巽の肩に押しつける。 「・・・・・大好き・・・・・」 偽りではない言葉を囁く。 大切な 大切な ぬくもり より強く抱きしめられて それが心地よくて都筑も腕を回す。 囚われて 縛られて 何処にも行けないように この腕の中でずっと ずっと・・・・・・・ |
2002・11・8
M・Hinase
| ★読まなくてもかまわないですが、この話は今闇ねっと様の季節企画に出しているお話が下地にあります。 あちらと一緒に読んでいただけると・・・・。 こんな雰囲気って好きなんです、言葉少なで・・・でもお互いの想いは痛い程分かる。 いつ頃の2人か・・・ですが、パートナー終わり頃・・・という感じでしょうか。私はそのつもりで書きました。 |