ふたりの花

RRRR・・・・・
突然鳴り響く音にたたき起こされる。
「うーん、なんだよ!まったく・・・・もしも〜し〜・・・・」
応えながらも意識が遠のいていく。
『・・・・おはようございます』
「おはよう・・・・って、巽?」
『まだ寝てたんですか、あなたは・・・・もう9時過ぎていますよ!』
「たまの休みじゃんか〜もう少し寝かせてよ!」
『いつも沢山寝ているじゃないですか。よく寝ていられますね、この暑いのに。』
「もう、朝から説教するなよ! 切るよ?何か用事あったんじゃないの?」
『ああ、そうでした。都筑さん、今からすぐいらっしゃい,良いもの見せてあげますよ。』
「いいもの?・・・・って何?」
『来たら分かりますよ、朝ご飯もつけてあげますから。いいですね。』
そう言って巽は電話を切った。
「何なんだ、一体・・・・ご飯って言えばいいかと思ってないか?」
何かと言えば食事を引き合いに出されているような気がする・・・・。
でも巽のおいしい朝ご飯は魅力的だ。
ま、仕方ないか、食事につられているのも確かだ。
うーんと布団の上で都筑は背伸びをした。


「仰せの通りやってきましたー。」
まだ眠くて怠い身体をひきずってやってきた都筑はドアを開けた巽に頭を下げた。
「いらっしゃい、思ったより早かったですね。」
どうぞ・・・・とリビングに通される。
「今から料理を温めますから、少し待っていてくださいね。」
お茶を出し、巽はキッチンへと消えた。
ふっーっとソファに身を沈めた都筑はいつも綺麗に片づいている部屋を眺める。
休みの日でも、きっちりしてるんだなあ〜、違うのはラフな服装ぐらいか・・・・周りを見渡しながらボーっとしていた都筑の目が庭の一角にとまった。
あ、あれは!  とととっと庭に駆けだした。



「咲いたんだ・・・・いっぱい花をつけたなあ、えっと1つ、2つ・・・・8つも!」
しゃがみ込んで、綺麗に開いた花びらを優しくなでる。
大事にされていることが嬉しくて、まだ水滴の残る花を眺めていると、後からふんわりと抱きしめられた。
目の前で組まれる腕にそっと都筑は自分の腕を重ねる。
「良いものって、これだね? 綺麗に咲いたね。」
くすっと笑う息が耳にかかる。
「今朝初めて花を開いたんですよ。これから次々と花をつけていきますよ。」
「うん・・・・ありがと、大切に育ててくれて・・・」
都筑は指でそっと花の輪郭を辿る。
「あなたの色ですからね・・・・何よりも綺麗に咲かせないと・・・・」
自分の色・・・・とあらためて言われると、妙に照れる。
「周りの花も綺麗だね、此処には青と紫だけだ。」
見渡せば春に植えた花が満開になっていた。巽の色だけで充分だったのに、
巽に『紫の花を・・・』と言われ、持ってきた朝顔。
苗の段階で此処に持ってきて育ててもらった。
「・・・・これで会えない日もあなたと一緒です。」
「たつみ・・・」
耳の側で囁かれるとくすぐったくって身をよじってしまう。
「・・・うん、一緒だね。」
ゆっくりと振り返ると、優しく甘い口づけが降りてきた。


・・・・それはある夏の朝の一コマ・・・・。

2001・8・5
M・Hinase

★「青い花 紫の花」の続きです。そちらを踏まえて読んでくださるとうれしいです。夏祭り企画第2作です。