つないだ手

水が流れる・・・

この川の水もやがては海に注ぎ込み

海水の一部となって 熱せられ 雲になり 雨になる

そしてまた川へと戻ってくるんだ・・・水の輪廻だね

今の自分の身を水に例えたら 一体どこにあたるのだろう

輪廻からはずれ 一カ所にとどまって流れない水かもしれない・・・・




夕食の買い出しに出た帰り、夕焼けの光がきらきら輝く川に目をとめ立ち止まった。
土手を降り、川岸に近づく。
光が乱反射する川面は眩しくて、都筑は目を細めた。
・・・こうやってゆっくり川を見るなんて久しぶりだな・・・
水の中に手をつけてみる。
・・・気持ちいい・・・。
ひんやりした川の風が身体を包む。
流れている水に触れるのはなんて気持ちがいいのだろう。
こんな水の中に身体を横たえれば、もっと気持ちがいいかもしれない。
流れにまかせていけばこんな自分でもたどり着けるところがあるのかもしれない。
それが例え光の届かない深い海の底であっても・・・それが終点ならば。



ぽんっと頭にのせられた手で我に返った。
振り向くとちょっと怒ったような顔。
「た、たつみ?」
「何してるんです? お使いを頼んだらずっと帰ってこないで・・・1時間以上もかかる物なんて頼んでないでしょう。」
「あ、ごめん」
すまなさそうに立ち上がった都筑を大きくため息をついて見つめた。
夕食作りを手伝うといって聞かない都筑に買い物を頼んで追い出したはいいが
今度は戻ってこない。
30分・・・40分・・・50分・・・とうとう我慢できずに探しに来た。

「いくら暑いからといって、今から水遊びをするつもりですか? あいにく夕食が出来上がっていますよ、水に入りたいならまた明日でもどうぞ!」
「ち、ちがうよお。ちょっと川見てただけじゃないか。夕日が映ってきれいだったしさ。」
水には入りたかったけど・・・・心の中で続けるセリフ。
「まあ、いいですけど・・・・ところでちゃんと頼んだ物は買ってあるんでしょうね?」
「うん、ほら」
下げている買い物袋を掲げてちょっと笑う。
巽もその顔を見て少し笑った。
「一人で流れていくことはありませんよ。」
「えっ!?」それって・・・・
さ、帰りましょうと向けられた背を都筑は見つめた。
・・・・ずっと見てたんだ・・・・川を見つめる俺の姿を・・・・

「都筑さん!」
土手を登りかけ巽が振り返る。
「あ、待ってよ。」
とととっと駆けてくる都筑に差し出された手。
巽の目を見ずに握る。
「二人だよね・・・」
小さくつぶやいた声が聞こえたのか、都筑の手を強く握ってきた。



例え流れずにとどまってしまった水だとしても
そのままどこにも行けず澱んでしまったとしても
おまえとならいいかもな・・・。

足早に歩く巽に引かれながら
都筑は一度だけ川を振り返った・・・。
川面に揺れる光はもう消えていた。

2001・7・9
M・Hinase

★うーん、ちょっと後ろ向きの都筑さんを書いてみたかったのですが・・・。
いつもと違う不幸ティストが少しだけありますか。たまにはいいでしょう。