Tea Time


「これは一体何ですか!!」

「ケーキだよ!」

「そんなことは見れば分かりますよ!バカにしてるんですか、あんたは!」

「だって、何って巽が聞いたんじゃん!」

「私が聞いているのは・・・」

そこで一端言葉を切った巽は、ぴしっとケーキの箱を指さす。

「これをどうしたか!ですよ!!」

「そ、それは・・・・」

「それは?」

「・・・・買ったんだよ!」

巽が目を細める・・・・都筑は目をそらす。

「ほお・・・買ったんですか、ここの店のを」

「なんだよ、良いじゃないか。ちゃんと休み時間に行ってきたんだぞ!」

「ええ、出ていったのは昼休みだったみたいですねえ。でも帰ってきたのは何時でしたか?」

「・・・・」

戻ってきた時にいないと思っていた巽に手を掴まれてそのままここに連行されたのだ。

それなのにわざわざ時間を聞いてくる所が意地が悪い・・・と都筑は思う。

「都筑さん?」

「・・・・・・・3時」

「3時!あなたの昼休みは他の職員の何倍もあるんですか!?ええ??」

「そ、それは悪かったと・・・・・」

「それに何やら・・・甘い匂いが染みついているようですが?」

「!」

そう言われて、慌てて都筑は自分のスーツに鼻を寄せた。

「・・・・・」

確かに甘い香りがするような・・・・あの店では気付かなかった・・・・。

「しばらくお店にいたということなんですよね? で、おそらくケーキセットでも食べてきたんでしょう。
で、ケーキも買ってきてと・・・・」

都筑は目をそらしたままだ。

「ここのお店・・・・先月オープンした所ですよね? 確か」

「よく知ってるね・・・」

意外だということでつい顔を戻してしまう。

「誰かさんのおかげでね」

連れて行け!だの、ここのがいいだの!と暇があれば雑誌を見せまくっていたことは、すっかり忘れているらしい。

この店も都筑が行きたがっている所の一つだった。

「・・・問題はですね・・・」

椅子からゆっくりと巽が立ち上がる。

びくっと、半歩都筑が下がった。

「ここは・・・かなりお値段が高いはずですよね?」

「え・・・・」

「ショートケーキでもかなり高級だと記憶していたんですけど・・・・違いますか?」

「・・・・・・」

「で、そこのお店で食べて・・・なおかつこんなに買って来ていると・・・」

そう言いながら都筑から取りあげた箱を開ける。

そこには10個ほどのケーキが並んでいた。

「・・・こんなお金、よくお持ちでしたね?」

「あはは・・・・あ、ほら、昨日ね掃除してたら忘れていたへそくりがね」

「ほほう、しまったまま忘れていたお金が出てきたとでも?」

「そうなんだ、それで・・・」

「あなたの部屋はあまりの汚さに一昨日掃除したはずですが?」

「うっ・・・」

しまったという顔を都筑との距離を縮める。

「都筑さん・・・・? 正直に言いなさい」

「しょ、正直って・・・一体何を・・・」

「私の口から言わせたいんですか」

「何のことだか俺には・・・」

「つ・づ・き・さーーーん?」

巽の後ろから立ち上る黒い影に、ひっと、声上げた。

「い、言わなくても、もう分かっているんだろ!?」

「そうなんですか、やっぱりそうなんですね!!」

「たまたまだし、何度も断ったけど、お茶するだけって言ったし!!」

「都筑さん!!あんたは何度言ったら分かるんですか!!」

「何もされなかったし!」

「どうだか」

「あ、何だよ!俺のこと信用してないのか!!」

「それだけ隙だらけで何偉そうに言ってるんですか!」









ドアの向こう側から聞こえてくる声が部屋中に響いている。

亘理は茶を啜った。

「・・・・どっか他でして貰えんやろか」

「そうですね・・・」

密が答える。

「今日は昼から巽さんがいないって思っていたみたいですよ」

「課長の代わりに会議に出るための出張は明日やろ?」

「ですね。完全に一日間違えていたみたいですよ」

「そうですか・・・・」


お昼休みに入った途端、”ちょっと上に行って来る!”と出ていった都筑は昼休みが終わろうと戻ってこなかった。

時間が過ぎるごとに頭から角が生えてくる巽を見つつ、いっそのこと今日は戻ってこない方がいいのでは?とか亘理達が思っていたにも関わらず・・・・3時過ぎに思いっきり笑顔で部屋に入ってきた都筑。

そして鬼のような形相の巽にそのまま連行されてしまった。



「しかしまあ、ようもタイミングよくダンナが現れたもんやな」

「タイミングも何も・・・待ち伏せていますから」

「は?」

「都筑が来るの分かってるんですよ、あいつは」

「・・・・マジですか?」

「行動パターン読まれてるんですよ」

そして読まれていることに気付いていない都筑・・・。

「・・・・・・なんかそれも・・・・」

「ま、俺からしたら読まれる方が悪いんですけど」

「はあ・・・・そうですね」

相変わらずの密の様子に亘理も頷くしかない。

それにしても・・・なんかやっぱり関わりたくない世界だと思う。

「まあ・・・都筑・・・がんばれ」

小さく呟いて、湯飲みの中の茶を飲み干した。

密が突然、席を立つ。

「あれ?坊?」

図書館にでも行くのか、本を抱えている。

「・・・・会話、止みましたよ」

「え?」

亘理はあの部屋のドアを見つめる。

確かにさっきまでぎゃあぎゃあ言っていた声が一切聞こえない。

「というこで、俺はこれで」

すたすたと部屋を出て行く後ろ姿を何とも言えない気持ちで見送る。


・・・ここに残っていつものようにして・・・小金を儲けるか・・・

身の安全を第一に避難するか・・・

「悩むわ・・・」

亘理は深いため息をついた。



あの部屋から別の声が聞こえたかどうかは・・・・また別のお話。





2005・6・5
Mai・Hinase



・・・・・一体何が書きたかったのか・・・・
しばらくぶりの書き物がこれで・・・すんません、すんません;;
都筑さんが誰に会ったのかは・・・・もうお分かりですよね?(笑)