| 「またなー」 「失礼します」 帰っていく亘理と密を見送りながら縁側を見た。 こちらからだと顔は見えない。 寝ているのかも知れない。 飲んだ分も後払いですよ!と言ったのに やっぱり浴びるほど飲んで、ひっくり返ったのは30分ほど前。 その後軽く3人でお茶をした。 ・・・・どっちにしろ声はかけない方が良いだろうと巽は台所へと引き返した。 久し振りに早く帰ったこの日。 予測通り泣きついてきた都筑にとりあえず食事を振る舞った。 密はともかく、亘理まで来たことは予想外だったが、それでもわいわいがやがやと、賑やかな時間を過ごすことが出来た。 たまにはいい。 こんな事が毎日続くのは勘弁して欲しいが時々ならこちらにも余裕があるというものだ。 しんと静まりかえった居間を振り返ると雛人形が目に入った。 しばらくそれを見つめて・・・・そして目を流しへと戻す。 お茶を入れ替えよう。 たぶんもうすぐ起きるだろうから・・・・。 「巽・・・・」 「・・・・起きましたか?」 湯飲みを置くと同時に都筑が声を出した。 「あれ? ふたりは?」 「もうとっくの前に帰りましたよ」 「・・・・そうか」 ふああ〜っと、欠伸をしながら背伸びをする様子を見つめた。 今夜は月が明るい。 都筑の影が畳に濃く映っていた。 「・・・・お茶飲みますか?」 「うん! あ、・・・・お菓子は?」 「ありますよ」 「やった」 嬉しそうに笑った。 「ねえ、巽・・・」 「なんですか?」 虫の声しか聞こえない夜・・・・ それでも息苦しさを感じないのは月明かりのせいだろうか。 「萩・・・・綺麗だね」 その言葉で庭に目をやる。 月の光に照らされたそれは昼間見るよりも鮮やかだった。 「今年は特に綺麗な気がする」 まだ酒が残っているとは思えない程の穏やかさで都筑が呟いた。 今日はそれほど酔っていないかも知れない。 「そうですね・・・」 ・・・・あなたがくれたものですね とか ・・・・あれもどれくらい経つのか とか そんなことを思いつつも言葉にはしないままにふたりで見つめた。 きっと同じ事を思っているのだろう。 掛け時計が11時を知らせる。 明日のことを考えれば、もう家に帰して遅刻をするなと言えばいいのだろうが なぜか今日はその言葉が出ない。 いつまでも・・・いつまでもこんな穏やかな時間が過ぎればいいと思っている。 何をするのでもなく・・・ 何を話すのでもなく・・・ ただ月の光と萩を見つめていたいと・・・。 それでもきっと朝は来る。 そしたらまたいつものような日々が始まるのだ。 微妙な駆け引きをしながらも 喧噪の中に身を置くことが何よりも幸せだと思える日常に。 もうすぐお月見。 今年もあの萩を飾る。 ススキも用意しなくてはならないだろう。 ”月見団子は?” ふと頭の中に都筑の声が聞こえ、笑ってしまった。 「な、何?」 急に笑い出したことに驚いて都筑が庭から目を戻す。 「何でもないですよ」 「えーなんか思い出し笑いしてるじゃないか!」 「別に・・・」 そう言いながらも顔が緩む。 いいだろう・・・・今夜くらい。 張りつめた気持ちをゆっくり休ませてやろう。 「なあ、何だよ?」 「しつこいですよ! 何もありません」 うーっと、こっちを見つめている都筑を無視して茶を啜った。 今夜は月が明るい。 こんな夜も悪くはない・・・・。 |
2004・10・12 日生 舞
・・・・9月頃のことと思ってください
そしてお気づきだと思いますが・・・あの番外編の続きだと思ってください
・・・・すみません(>_<)
暗いようですが・・・・甘いのですけど・・・・
分かりにくいですよね(^_^;)
それにしても・・・・久し振りに書いた・・・・汗