時を刻む

さく・・・さく・・・さく・・・

玉砂利を踏みしめる音が響く。
吐く息は白い。
都筑は少しだけ前を歩く巽の背中を見て・・・・そして後ろを振り向いた。
木々が立ち並ぶ参道は他に歩く人もいない。
長く続く夜の道に足音が吸い込まれるようだった



「都筑さん?」
音が消えたことに気づいた巽が振り返ると
都筑が両手に息を吹きかけていた。
「どうかしましたか?」
「ん?」
都筑が巽の方へと向き直る。
「なんか・・・・幻想的だよね・・・」
あと数時間もすれば参拝客でごったがえすであろうこの道も流石にこの時間は静まりかえっている。
木の間に置かれた大きな提灯がうっすらと道を照らしている様は別の世界へと続いていくような・・・・そんな雰囲気を醸し出していた。
巽は軽く溜息をつく。
「・・・・・年越しの4時間も前に来ればね・・・・」



おせちの準備も終え、これから年越し蕎麦でも・・・と用意をしていた巽は無理矢理連れて来られたことに少しだけご機嫌ななめだった。
参道に並ぶであろう多くの屋台を都筑が何日も前から気にしていたのは知っていたが、まさか大晦日の夜、しかもまだ年越しまで何時間もある時に連れ出されることなど予定外のこと、巽は残してきた蕎麦の用意の方が気がかりで・・・。
「もう巽ったら、現実的なんだからな!」
巽が出るが出るがまで文句を言っていた蕎麦のことを気にしていると気づいた都筑が頬を膨らます。
「現実的って・・・・実際ここを歩いているのも私たちだけじゃないですか。夜の初詣を・・・と言うのなら、まず蕎麦を食べてからだって間に合いますよ。」
「それは・・・・そうだけど〜」
「店が気になって仕方なかったんでしょう? あなたの方が現実的な感じもしますけど。」
「う〜」
言い返せない都筑を見て・・・・・巽がくすりと笑った。
木々の葉を揺らす風が吹いた・・・・・・。



「確かに・・・・綺麗な光景ではありますね。」
今まで自分たちが歩いてきた道を巽はあらためて見た。
鳥居から本殿へと向かう人はまばらにいるが、自分たちのように本殿から参道を下っている者はいない。
また参道は幅が広く中央には木が植えられている為、その数少ない人たちともすれ違うこともなかった。
まるで自分たちふたりだけがこの景色の中に立っているような・・・・。
巽もそんな不思議な気持ちになってきた。
闇の中に・・・・・たったふたり・・・。






「え?」
ふいに横に並んだ巽にそっと手を握られて都筑は驚いた。
外にいる時に巽がこういった行動に出ることはないからだ。
「たつみ・・?」
横顔を見つめる。
「・・・・・たまには良いでしょう?」
都筑を見ずに答える巽の表情は・・・・・暗くてよく分からない。
でも少しだけ強く握られる・・・・・なんとなくそれだけで気持ちが伝わってくるような、そんな気がした。



人が賑わう初詣の様子を見るのは好きだ。
遠くに見えるお目当てのお店も・・・・。
でも
今、この空間に立っていることも・・・・・・
都筑は思う・・・・・いつまでもこの瞬間が続けばいいと。
楽しみにしていた年越しだけど、それよりも何よりも今この時間が愛しい。
繋いだ手から感じる気持ちは、温もりは、何よりも誰よりも自分を支えてくれるものだ。
都筑も少しだけ巽の手を握り返した。







「さ、行きましょうか?」
しばらく佇んだあと巽が切り出す。店も回らないといけない。
年内に蕎麦を食することにしなければ意味はない。

「・・・・・」
反応のない都筑に巽が首を傾げる。
その瞬間、俯いた都筑が腕を絡ませてきた。
「都筑さん?」
ぎゅっと腕を抱きしめられて巽は慌てる、つい周囲を見渡してしまった。
「・・・・・もう少し・・・・・もう少し・・・・ここにいよう。」
小さく囁く声。
巽は都筑の手に自分の手を重ねた・・・・・・。
「そうですね・・・・・もう少しだけ。」
外で腕を組むことを滅多にしない自分たちだ。
今ならこの闇が隠してくれるはずだ。





仄かに照らされる光に都筑の横顔が映えていた・・・・。
巽はもう片方の手でその肩を引きよせる。
腕の中にすっぽりと抱き込まれた都筑は素直に頭を寄せた。
ふたりの上を時が通り抜ける。
そしてまた新しい時が刻まれて・・・。



「巽・・・・・抱きしめて・・・」
もっと強く・・・・もっと。
この風景がもたらすものにのみこまれたのかもしれない・・・・・この幽玄の世界に。





誰もいない世界

いつか、いつか・・・・・ふたりだけで・・・・辿り着けるだろうか、望んでも良いのだろうか。


重なった影はいつまでも・・・・・・離れようとはしなかった。




また新しい年が始まる・・・・・・・。





Copyright(C)2003 日生 舞 All rights reserved



★年賀SSです・・・・・暗いのか何なのか;;
静かな雰囲気が伝われば良いのですが・・・(汗;)。・・・無理か。
別館でこれの元になった写真をUPしています、ご参考までにv

こんな風に今年もマイペースで書いていきたいと思っていますv
よろしくお願いします(*^_^*)
こちらのSSは今月15日までフリーです。
サイトへのUPもかまいませんv
その後は部屋へ収納します。
短いですが皆様に感謝の気持ちを込めて・・・・。
お持ち帰りの際はメール&掲示板にて一言かけてくださると嬉しいですvvv