時が変えるモノ
中庭の端にある大きな木。 予想通りの場所に都筑はいた。 幹にもたれかかり木を見上げている姿は以前と変わらない。 ・・・・時が戻ったようですね・・・・ 巽は心の中で呟く。 以前もよくここを訪れた。 仕事の後、姿が消えるといつも都筑はここにいた。 声をかけると慌てて袖で目を拭い、振り向いて笑う。 目の回りを真っ赤にして笑う。 そんなことの繰り返しで・・・・・・・段々姿を見つけても声をかけずに戻ることが多くなった。 それから間もなくだった、都筑とのコンビを解消したのは。 都筑の表情は見えないが、予想はつく。 少し離れて彼を見つめる。 あれから50年の時が流れた。 自分たちの関係も随分変わったな・・・と巽は思う。 都筑も昔程には感情の起伏が激しくなくなったように思える。 それは今のパートナーの影響も大きいのかも知れない。 自分では与えられなかった安らぎを、今彼が得ていることに巽の心の中に寂しさと安堵が入り交じる。 「あ、巽?」 気配に気づいたのか都筑が振り返る。 「どうしたの、そんなとこで。」 その言葉に巽は彼に近づいた。 「・・・あなたこそ、仕事ほったらかして何してるんですか?」 「あ、えっと・・・・休憩?」 えへへへ・・・と笑いながら見上げてくる。 呆れながらも都筑の目のあたりを見てしまう。泣いていたのか・・・・それが知りたくて。 「密は?」 「黒崎君なら少し疲れが見えましたからね、早退させました。」 「そっか。うん、良かった。何か眠れなかったんだって。」 都筑は安心したように微笑む。 そして会話が途切れた。 木々の葉を揺らす風の音だけが聞こえる。 目を細めて遠くを見つめるような都筑を時々見下ろしながら巽は言葉を探した。 何を言えばいいのか分からない。 巽もまた風が吹き抜ける中庭を見つめる。 幼子を迎えに行った今回の仕事は予想通り召喚に日にちを要した。 巽は帰ってきた時の都筑と密の表情を思い出す。 いつもはもう少し割り切っている密でさえ負担が大きかったようで報告する口も重く、 その代わりに都筑が報告していた。 課長の横でそれを聞きながら、巽が見ていたのは都筑の表情、動作。 都筑だって思うことはあるだろうに・・・・・パートナーを気遣って話をする様子を巽は見つめていた。 一通りの処理を終え部屋に戻った時、そこに都筑の姿はなくて・・・。 「巽。」 突然下からかけられた声に慌てて視線を戻す。 「座らない?」 「・・・戻りますよ、あなたを呼びに来たのですから。さ、都筑さんも仕事に」 「座ってよ。」 「都筑さん・・・・」 「少しで良いから・・・、ね。」 真っ直ぐに見つめてくる瞳に吸い込まれそうになる。 「・・・・・・少しだけですよ。」 いつものパターンだ・・・心の中でぼやきながら都筑の隣に腰を下ろす。 と、同時に都筑が巽の肩に頭を載せてきた。 「ちょ、ちょっと・・・」 都筑さん? と慌てる巽をよそに都筑は目を瞑る。 「どうしてここにいるって思ったの?」 「・・・・」 「覚えてたんだね。」 「・・・・」 「・・・・ありがとう。」 嬉しいよ、小さく都筑が呟く。 「少し寝かせて・・・・」 「都筑さん。」 「ごめん、眠くて・・・」 その言葉も終わらないうちに寝息が聞こえ始めた。 巽はあまりのことに溜息をつきながらも、自分も幹にもたれかかった。 昔・・・あの辛かった頃。 こんな風に肩を貸してあげることが出来たら、何かが変わったのだろうか。 あの時、都筑と別れなかったなら・・・・。 答えの出ないことを考える自分に苦笑する。 もう全ては過ぎ去ったことなのに。 それでも・・・ 巽は都筑の肩を引き寄せた。 時が二人の間を少しでも埋めてくれた・・・と信じて良いのだろうか。 それがどんな形であったとしても。 こうやってまた寄り添うことを願う自分がいてもいいのだろうか。 巽も目を瞑った。 都筑のぬくもりが心地いい。 木の葉が揺れ、風だけが二人を見守っていた。 |
2002・7・19
M・Hinase
| ★ちょっと切なさの混じった二人を・・・と思って。 いかがでしょう。 時が傷を癒していく・・・他人任せのような印象もありますが確かに時が経てば変化するモノはあります。 それも一つの癒し方です。 少しずつでも少しずつでもいい方向に変わっていけるのなら・・・・。 ・・・・で、この切なさをぶっ壊すようなSSも書いております。一応続編となっております。こちらからどうぞv (舞る〜むからもいけるようにしております) この雰囲気を大切にしたい方は、読まれない方がいいと思います;本当に。 また亘理が・・・・・ね(^^;)。 |