優しい時間




無駄のない動きでポットにお湯が注がれて葉が踊る。

目の前で動く手を・・・・・指を・・・・・見つめる。

昼の3時・・・・。

今日もこの時間が迎えられたことが嬉しい。

温められた自分専用のカップを綺麗な色が満たしていく。



「どうぞ。」

「ありがと。」

目の前に出されたカップを見つめて

そして顔を上げると優しい瞳が自分を見つめていた。

「今日の葉は何?」

「バニラの香りのフレーバードティーですよ。」

へえ〜と、言いながらカップに唇を寄せた。

「あ、甘い香りがする!」

でしょう?と目を細めながらテーブルを挟んで巽が座った。

一口飲むと軽い甘味が口いっぱいに広がる。

「おいしいよ。」

「ミルクを入れますか?」

「ううん。これはこのままでいいや。」



穏やかな時間・・・・身体に染みわたるような優しさ・・・・

それは大切な大切なもの。

ふと顔を上げるといつも見つめられていて、

照れ隠しに笑うと、微笑み返されて・・・・・。

こんな時間がいつまでも続けばいいのに・・・・・とつい思ってしまう。

こんなに大事にされていながら

こんなに温かさを感じていながら

どうして自分はそれで満足できないのだろう。

その胸に抱かれて一緒に歩いていけたならどんなに幸せだろう。



「どうしたんです?」

巽の声で我に返った。

もうとっくに諦めた事なのに・・・・。

巽の目を見て笑った。

笑える自分が・・・・・また嫌になる。

「何でもないよ。ね、2杯目もらってもいい?」

「ええ。」

巽が席を立つ。




「それから・・・・少し葉をもらっていいかな?」

出されたカップを見つめながら問う。答えなんか分かり切っているのに。

「自分で淹れてみますか?」

「うん。」

ふっと笑って、かまいませんよと数回分の葉を巽は缶に入れてくれる。

「巽のように上手く淹れられたらいいけど・・・・・。」

誰に・・・・? 何のために・・・・?

手の上に載せられた小さな缶を両手で包み込む。

巽の手のぬくもりを少しでも感じていたいから。

大切な大切なもの。

顔を上げて、目を合わせて微笑んだ。

「ありがと、巽。」




ほら、もう一人の自分の笑い声が聞こえるよ。



今日の優しい時間が終わるんだね。

2001・12・12
M・Hinase

★えー以前UPした「Time of tea」(邑都)と対になる(そのつもり・・・・)SSです。そちらを踏まえて読んでくださるとわかりやすいと思います。
巽との関係はとても大切なんだけど、大切にしすぎて、どこかがずれていく都筑・・・・という感じで(訳分かりません・・・・)。
甘い月間に何か暗めのお話ですみません。その分他で甘々でやりますので、許して〜〜!(特に・・・・巽さん!)