ごめんねの代わりに・・・

「巽!車、止めて!」

突然助手席から発せられた言葉に思わず振り向く。

「何です?」

「いいから、止めて、早く!」

顔を窓の方に向けたまま都筑は答える。

訳の分からないままに車を路肩に寄せる。

「どうしたんです?いったい・・・・」

車が停まった途端、ドアを開けて外に飛び出そうとする都筑に声をかける。

「秋桜だよ、秋桜!綺麗なんだ、見てくるよ!」

その言葉を言い終わるかどうかのうちに後ろに走っていく。

「またですか・・・・。」

・・・・これで何度目だろう・・・・

小さく溜息をつきながら巽も車を降りた。



そこはピンクと白の模様の絨毯のようだった。

田んぼの一角に咲き乱れている秋桜。

周りが稲刈りの終わった茶色い土地だけに、ここは鮮やかに浮き上がっている。

「う〜ん・・・・」

花の咲いている土地から少し離れたあぜ道で都筑は立ちつくしていた。

「側に行かないのですか?」

綺麗ですね、と後を追ってきた巽が都筑の横に並ぶ。

「だって・・・・あそこ田んぼの真ん中だよ?いいのかなあ〜入っても。」

「もう収穫も終わった後だし、大丈夫でしょう?」

「でも人の土地だし・・・・」

「少しならかまわないでしょう。入ってらっしゃい。」

「うーん・・・・でもいいや、入っちゃえ!」

おじゃましまーす、と声を上げて入っていく姿は幼い子供のようで。巽は苦笑した。



見上げると雲の高い空が広がり

吹いてくる風も心地いい。

巽はあぜ道に腰を下ろし花の中を動き回る都筑を見つめる。

久しぶりのゆったりした休日。

このところ忙しくて週末も二人で過ごせなかった。

家でゆっくり・・・と巽は考えていたのだけど

都筑がどうしてもドライブに行きたいと言いだして・・・

秋の綺麗な景色を楽しんでいるのだろう

さっきから何回車を停めるか分からない

紅葉が始まっていると言っては停まり

菊の栽培している所を通りかかると停まり

そしてまた秋桜と・・・・

・・・・ま、こういう時間の過ごし方もいいもんですね・・・・

巽は自分に向かって手を振る都筑に微笑みで答えた。



「あー綺麗だった〜!」

思いっきり花を堪能したのか戻ってきた都筑が巽の横に腰を下ろす。

「巽・・・」

「はい?」

「ごめんね・・・・今日無理させちゃって・・・・最近忙しかったから家でゆっくりした方が良かったね・・・・・」

少しだけ俯いた頭にふわっと手が置かれる。

「大丈夫・・・・優しい時間を過ごしていますよ。」

「たつみ・・・・」

振り向いて見た顔は、とても穏やかで、都筑はつい見つめてしまう。

「だから謝る必要はありませんよ。」

「そうなの?」

「ええ。でも、そうですね・・・・どうしても貴方が何か言いたいと思うのなら、『ごめんね』ではなく
『ありがとう』と言ってください。」

その方がお互い嬉しいでしょう?と少し首を傾けて笑う。

「・・・そうだね・・・じゃあ、巽、今日はありがとう・・・・一緒に秋を見る事が出来てとっても嬉しいよ。」

「私もですよ・・・良い気分転換になりましたね。」

「うん!」

二人してにっこりと微笑みあう。

どちらからともなくお互いの手がそっと草の上で相手を求めた・・・。



「それじゃあ、明日からはまたバリバリと仕事をしてもらいましょうね!」

とりあえず始末書から仕上げてもらいましょう、と車に戻りながら巽は意地悪く言い放つ。

「もう、巽ったら、こんな所まで来て仕事のこと持ち出すなよ!」

先に歩く都筑は文句を言いながらつないだ手を振り回す。

「つ、都筑さん! 何、子供みたいな事してるんですか、こらっ!」

思いっきり振り回され細いあぜ道の上から落ちそうになる。

「もう巽ったら、老化が足に来てるんじゃないの?」

「何言ってるんですか、アンタが振り回すから・・・あ、ほら、危ないって・・・・!」

「仕返しだよー」

後を振り向く都筑が舌を出す。



車へと続くあぜ道を声を上げながら歩いていく二人。

その上を白い雲がゆっくりと流れていく。

「ちょっと、待ちなさい!都筑さん!」

巽の声が青い空へと響いていった。

2001・10・26
M・Hinase

★完全な季節ネタ。
やっぱり秋は秋桜でしょう・・・と言うことで短いのを少々。
忙しい時に限って、こんなことばっかり思い浮かぶ私は何でしょう・・・・。

秋を満喫しましょうねえ〜すぐ冬がやって来ますよんv
でも、都筑に手を振り回される巽が、ちょっと好みvv可愛いね(*^_^*)