節分




「巻き寿司?・・・・」

目の前に置かれたそれはどーんと一本皿の上にあった。

ご飯まだだろう?とノックもせずに入ってきた都筑は、にこにこと袋の中から

包みを取りだして、勝手知ったるキッチンに入って行き皿を持って戻って来た。



考えてみれば今日は節分で

病院の中庭で入院している子供が看護婦と一緒に豆撒きをしている光景を見たような気もする。

でもそれは特別興味をひくものではなかったし、何ら印象には残るものではなかった。

ただ節分といえば豆だと邑輝は思う。



「あの・・・・都筑さん?」

「何?」

巻き寿司を前に顔が緩んでいる都筑が答える。

「節分なのは分かりますが・・・・何故、巻き寿司が・・・・・」

「え?知らないの?節分の日はその年毎の吉になる方向を向いて巻き寿司を食べるといいんだよ。」

「はあ・・・・・そんなこといつから・・・・」

「知らない。かなり前からじゃない?」

要は食べられればいいのだ、と都筑は思っているのだろう。

少なくとも自分の子供の頃にはなかったような気がすると邑輝は思った。

「・・・・・で、今年の方向は?」

「北北西って言ってた。」

「そうですか。」

「ねえ、ここで北北西ってどっち?」

邑輝は少し考えてひとつの方向を指さす。

「そっかー!じゃあ、邑輝も手に持って!」

「え?」

「巻き寿司!」

こう!とガバッと巻き寿司を手に取る。

「さあ、早く!」

「いや・・・・でも」

手づかみは・・・・避けたい。

「む〜ら〜きぃ!」

睨みつけてくる顔と皿の上で待っている巻き寿司を交互に見つめて

そして巻き寿司を手に取った。

「じゃあ、いい?」

かぶりつくんだよ、と目をくるくるさせながら自分を見つめてくる瞳を受け止めながら邑輝は大きく溜息をつく。

「健康を願うんだよ、幸せもね!」

「はい・・・・」

かぷっと、巻き寿司にかぶりつく都筑を見ながら乗り越えていかなくてはいけないことが多いことを改めて感じる邑輝だった。

2人で歩んでいくと決めた日から、それは覚悟していたことだったけど、まさかこんなことにまでそれを実感しようとは思わなかった。



「あーまだ食べてない!」

子供のようにはしゃぐ彼を見て、おかしくなって笑った。

「かないませんね、貴方には。」

たまにはこんな事もいいかも知れない。

おつきあいしましょう・・・・・こんなことで幸せになれるのならいくらでも。

貴方がそれを望むなら。

邑輝は大きく口を開けた。

2002・2・5
M・Hinase

★2日遅れの節分ネタです。
・・・・・で邑都です。
あああ、ごめんね、こんなので。
ちょっと思ったの、邑輝が巻き寿司かぶりつくとこ見たいなあって。それだけ・・・・・。
後少しだけ続編あり・・・・・。
興味のある方はどうぞ!→ほんの少しだよ