Time of tea






ガラスの丸いポットの中でだんだん濃くなっていくお湯の色を眺める。

その中で舞う葉が少しずつ少しずつ・・・・動きを止めた。

温めたカップを用意しながら

今日の昼間も同じように温められたカップを手にしたことを思い出す。

窓越しの暖かな光の中で

優しい瞳に見つめられて

美味しい紅茶と

優しい人の手作りの菓子と共に過ごした時間。

それは何よりも大切な穏やかな時間だけれど

・・・・今、自分は違う男と過ごす時間のために同じ紅茶を淹れている。



ポットとカップをの載せたトレイをテーブルの上に置いた。

「お茶入ったけど、一息入れる?」

背中にかけた声に邑輝が振り向く。

「今日は何のお茶ですか?」

「ダージリン。ストレートで飲めるからいいだろう? お前あんまりミルクなんて入れないだろうし・・・・。」

席を立ちソファに移動してくるのを見て、カップに茶を注ぐ。

「別に私に合わせなくてもいいのですよ、貴方はもっと甘い香りのものがお好きでしょう。」

「合わせてる訳じゃないよ、俺は何でも好きだし。それに俺、どうせミルクも砂糖も入れるしさ。」

そう、今日これを淹れたのは昼間飲んだ種類のだから・・・・。



邑輝の前にカップを置き、自分もカップを持ってソファに座る。

一口含むと熱すぎない程良い温度が喉を潤した。

「以前は珈琲ばかりだったのに・・・・こんなに紅茶を飲むようになるとは思いませんでしたよ。」

邑輝は口を付けたカップをテーブルに置く。

「俺の影響?」

からかうように笑った俺に邑輝が微笑む。

「それ以外にないでしょう? 家に来るたびに違った紅茶を淹れているんですから、貴方は。」

そうだった?と問う俺の肩を引き寄せて邑輝が耳元で囁く。

「どなたに教えてもらったのでしょう・・・・?」

妬けますね・・・・と降りてきた唇を受け止める。

いつもは冷たいそれが今は温かい。

あいつと同じ温かさ・・・・・
 
「んっ・・・」

だんだんと深くなる口づけに誰かを重ねる。



         ・・・・・同じ紅茶で、同じ淹れ方で・・・・違う時を過ごす・・・・

         ・・・・・違う相手で・・・・同じ時を過ごす・・・・



「何を考えているんです?」

そっと前髪を梳かれ目を開くと無表情な瞳があった。

「お前のことだよ・・・・」

今度は自分から唇をよせる。

少し冷えた唇が重なった。



静かな音のない世界に響く荒い息づかいと衣擦れの音。

テーブルの上では冷めた紅茶が揺れる・・・・・。

邑輝の背中を掴みながら、喘ぐ自分を見つめる瞳から目が離せない。

このまま何もかもわからなくなってしまえばいい。 

消えたいのに消えられない。

この冷たい身体に求めるものは

いつ叶えられるのだろう・・・・・。



自分のやっていることが酷いことだと判断するのも面倒だ。

どちらを裏切っているのかさえも分からない。

ただ分かるのは吐き気のするほどに嫌な自分・・・・・。




夜が明ければ

きっと、また優しい時間が待っている・・・・・。

2001・11・22
M・Hinase

★お茶の時間と言えば、某秘書ですが・・・・(笑)。
ここではあえて邑都で取り上げてみました。
でも、思いっきり出てますよね・・・・彼。
都筑さん、ちょっとブラック入ってます?
あまりそういったつもりで書いてはいないのですが・・・・。
ま、シリアス月間ですから!(と自分を納得させる・・・・)