逢瀬

カタッ・・・・

ベッドで横になっていた都筑の耳に小さな音が響いた。おそらく腕時計をはずしてサイドテーブルに置く音・・・・。

その瞬間、深い眠りへと落ちていく意識が戻った。

と同時に頬に手が触れる。


都筑はゆっくりと目を開けた・・・・・顔を覗き込む男の顔があった。

「・・・・・疲れているようですね」

頬を撫でる手はシャワーの後なのに冷たくて・・・・。

「ごめん・・・・眠りかけてた・・・・」

ぼんやり答えると、くすっと笑われる。

「お仕事が忙しいのですか?」

「・・・・・書類書きがね。外に出たの2週間ぶりって言ったら驚く?」

少しだけ男の目が見開かれた。

「そんなに・・・・?」

「うん」

「・・・・・・ずっと庁内に?」

「そう」

聞かれたことだけしか答えなかった。

本当はもっと他のことを聞きたいことは分かっていたけれど・・・・・。

少しだけ沈黙がやってくる。

しかし都筑の言葉が続かないことを確認して、彼は少しだけ溜息をついた。

それを都筑は見つめた・・・・・心の中で言いようのない想いが生まれる。

それは謝罪なのか・・・・・自分でも分からなかった。






共に横たわったベッドの上で都筑は腕を持ち上げられる。

バスローブの袖がずれて腕があらわになる・・・・・手首に巻かれたソレが淡い光に晒された。

「・・・・・・はずさないんですね」

そんなことは分かっているという風に呟くのを無言のまま聞く。

いつものことだ。

「・・・・・・はずしますよ」

腕をもたれて、都筑に見えるようにはずす・・・・それもいつものこと。

その部分が空気を感じる時、目をそらした。

まだ見ることが出来ない、直視出来ない・・・・・特に誰かといる時は余計避けてしまう。

そっと指が触れる。

都筑は首までもそらした・・・・・気持ちが悪い・・・・・吐きそうだ。

どうにも慣れない感覚。

「まだ・・・・・だめなんですね」

そんな都筑の様子を見て・・・・・・・彼は腕をおろした。



顎に手をかけられて向かせられると、何も言わずに口づけが降りてきた。

初めは息苦しかったそれが段々と慣らされてくる。

身体は逢瀬を覚えていた。

口内を動き回るものに自分のを絡めて・・・・・・そうすればすぐに熱を帯びてくる。

簡単だ。

都筑は彼の頭に手を回して、引き寄せた。










耳に触れる唇の感触で目が覚めた。

どれくらい眠ったのか・・・・一瞬だったのか。

「・・・・・酷くしすぎましたか」

少し戸惑い気味の声と共に髪を梳かれた。

最初の頃ならまだしも、珍しく今夜は途中で気を失ったようだった。

「・・・・・疲れてるんだよ、そのせい・・・・・おまえのせいじゃない」

少しずつ少しずつ溜まっていく身体の澱み・・・・心の澱み。

もうどうしようもない、癒されるはずのない疲れ。


「早くいらっしゃい、私の元に」

耳元で囁かれる。

「そうだな・・・・・」



たぶん、それが一番楽な方法・・・・・それはよく分かっている。

こうやってこの腕に抱き込まれて、触られて・・・・・ここで感じているやすらぎは心地良い。

例え昨日までの腕の中と違っていたとしても。



「でも・・・・・」

と、都筑は言葉を繋いだ。

「もう少し・・・・もう少しと思う俺がいる・・・・・俺がいるんだ」

「・・・・・・都筑さん」

「ごめん・・・・・俺、卑怯だよね。こんな事続けてさ・・・・お前にも・・・・・」

そして優しい彼にも・・・

「いいんですよ、今まであなたを待ち続けたことを思えば・・・・・苦ではありません」

「・・・・・ごめん」

自分ではどうしようも出来ない感情がある。

間違っていると、駄目だと言い聞かせても結局はそれに振り回されてしまう。

「ごめん・・・・・邑輝」

そう言うと、両手で抱きしめられた。

いいのだと、これでいいのだという言葉の代わりに・・・・・。







揺れる視界の中で・・・・飾られた百合が白く浮き上がっていた。

僅かの光の中でも凛としたその姿は、誰かを思い出させた。

与え続けられる快感に囚われそうになりながらも、都筑の口が動く。

それはもうひとりの愛しい人の名前。

でも今夜ばかりはその腕は遠い・・・・・・・。




・・・・都筑は目を閉じた。

自分自身がいるべき場所を見つめるために、そして今自分を包む想いに応えるために・・・・・。

2003・8・28
M・Hinase

★・・・・・・久しぶりの3角関係ネタ?!ですね・・・・。
ええ、こんな都筑さんも好きなんですよ。
今回使わせて貰った素材を見た瞬間、突発的に書きたくなったのです〜vvv
雰囲気を上手く出せたらいいのだけど・・・・・まだまだですね(笑)。
でもこういう関係って萌え萌えですぅ。