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「ねえ巽!これ入れてみようよ!」
「入れません」
「えーでも色が綺麗になりそうだよ?・・・あ、じゃあ、これは?ちょっと刺激的な・・・」
「もう何も入れなくて良いんです!」
棚をごそごそしながら次から次へと調味料を引っ張り出しては都筑は声をかけてくる。
「あ、ナッツ見っけ!」
「それはダメですよ」
「なんで?」
「他に使う予定があるんです」
「えー俺、ナッツ入りのチョコも大好きなのに・・・」
巽は手を止めて、ようやく振り向いた。
「アンタねえ、いい加減にしなさいよ!誰のを作っていると思うんですか!!」
「俺の・・・」
「じゃあ、あれこれと言わずにそこに座っていなさい!」
「でも手伝いたいし!」
都筑も負けてはいない。
もうかれこれ1時間以上も待っているのだ。
いい加減飽きてきた。
「一緒にお菓子作りしましょうね!って前に言ってたじゃん!」
「え?」
「言ったよ、巽。俺の髪をかき上げながら」
「・・・・あ!あ、あれは・・・ですね! あ、あの時はあの時・・・今は今です」
巽は慌てた。
確かに言った、言った覚えはある・・・ベッドの中で・・・
「なんだよそれ!俺、今日楽しみにしてたのに!」
「だから材料が結構いいので失敗する訳には・・・あ、ほら、フルーツを切っておかなくては! 都筑さん、適当に見繕って、それを細かく刻んでください」
その作業なら大丈夫だろう、けして不器用ではないのだ。
「えーー?フルーツ?・・・・まあ、いいけど・・・俺味付けしたかったのにな」
「それも立派な手伝いですよ!」
不服そうに都筑はフルーツの入った籠の前にしゃがみ込む。
その様子を見て、巽はほっと息を吐く。
まだぶつぶつ言っているようだが、どうやらフルーツの方に彼の関心が向いたようだった。
・・・私としたことが・・・
柄にもなく慌ててしまった。
まさか、あの時の言葉を覚えているとは思わなかったからだ。
もう1ヶ月も前のことだったし、あの会話の前後には都筑の意識も飛ばしたぐらいの行為もあったから・・・・
もうその頃から都筑の興味は今日のバレンタインのことばかり。
でも貰うと言うことよりも、自分で手作りをしたかったようで・・・
その時もそんなこんなで手作りをするという話になったのだった。
・・・いくら間に合わせでも言ってはいけないことですね・・・
ついムードに流されて言葉を零してしまったことを反省した。
・・・多少のことは目を瞑っても、こと料理に関しては徹さなければ・・・!
鼻歌交じりにフルーツを選ぶ後ろで巽は訳もなく拳を握るのだった。
「うわあ!!」
ブランデーで風味をつけたシロップを塗られ徐々にケーキの型になっていくのを巽の肩越しに覗き込む。
いつもながら見事な手際の良さだ。
「巽って本当にプロみたいだね」
ほら、邪魔だからあっち行っていなさい!と何度も言われながらも都筑は背中から離れない。
両手を巽の両肩にかけて巽が言えば言うほどくっついていきた。
肩越しに見るケーキは気持ちの良いほどに飾り付けられていき先ほどのチョコもたっぷり塗られる。
そしてその上に白い生クリームが小さな山を描き・・・とても美味しそうだ。
「あなたもこれぐらいなら出来るでしょう? 問題は・・・」
そこまで言って言葉を止める。
「何だよ?」
手際が悪い訳ではない都筑の言うに言えない欠点。
今までも何度言おうと思ったか・・・でも誰もそれに触れない今、自分が触れるのは癪に触る。
「いいえ、何も」
「?・・・変なの?」
「それよりもフルーツは用意出来たんですか?」
「うん、切った」
そう言いながら、なおも乗り出してボールに残っていた生クリームに指を突っ込む。
「あ、こらっ!」
行儀が悪いですよ!と睨み付けるとちょうど都筑が指をくわえた所だった。
「・・・・・」
「ん?」
怒られるのかと思ったのに何も言わない巽に都筑が首を傾げながらも口の中のクリームを味わう。
見ているだけじゃ我慢出来なかった。
「うわ、美味しい!!」
「・・・・当たり前でしょう、誰が作ったと思ってるんですか」
「すごいね!・・・ほら、巽も!」
止める間もなく、再びボールの中に指を入れた。
「味見した?」
口元に都筑が指を寄せる。
「ったく・・・行儀が悪いですね、あなたは・・・」
そう言いながらその手を取り、指をくわえる。
ぬるっとクリームを舌で舐め・・・指も舐めた。
「・・・っ」
咄嗟に都筑が手を引っ込めようとしたが、がっちりと握られた手は離れなかった。
「巽・・・まずいって」
「さんざん人を煽っておいて何言ってるんですか」
「煽るって・・・別に・・・あ、やだってば!」
「さっきからぴったりくっついてみたり・・・本当に」
「ぴったりって・・・作るところ見るのが好きだし・・・単に見てただけじゃん」
「覚悟しなさい」
「え? ええええ??!」
ボールをカタンと流しの上に置く。
「た、巽?」
冗談だよね?と笑ってみるが、不適な笑みが返されただけだった。
「えっと・・・あ、ほら、フルーツ乗せないと・・・ね?」
「後でね」
「ほ、ほら、早く飾り付けないと」
「後で大丈夫ですよ」
そう言って手元のボールを見る。
「少し多めに作ってしまいましたからね」
とにっこりされる。
「な、何のことでしょう?」
都筑は捕まれた腕を振ってみるがはずれる訳もなく・・・
「有効に使いましょうね」
「あはははは・・・・」
さらににっこりと笑う巽に都筑は乾いた笑いを返した。
そして巽は指で掬ったクリームを都筑の唇に近づけ、そっとなすりつける。
「た、巽・・・・」
甘い匂いに包まれる。
「ね、やめよう・・・ん・・・・」
その言葉を吸い取るように巽はクリームごと都筑の唇に自分のを押しつけた。
秘書殿は時々普段からは考えられないほどにエロくなる時がある。
そのスイッチを押してしまったことに都筑が気付くのは少し後
秘書殿の腕の中で息をあげてしまった時だった・・・・。
Happy Valentine
甘い甘い香りに包まれた一日・・・・
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