日常3 「毎晩遅くまで何してるんですか?」 書類を提出に来た亘理を捕まえて巽が聞いてきた。 「何って・・・車の整備やけど?」 「・・・・本気だったんですか」 巽が溜息をつく。 1週間前、都筑が運転をしたい!と亘理の前で力説(?)した。 その時、“分かった!”と都筑に返事をしてから召還課の部屋で亘理を見なくなり・・・・ 都筑は都筑でやっと願いが叶う!と、もう駄々をこねることもなくなっていた。 「何も本当に車を用意しなくても、もう1週間も放っておけば治まったんですよ」 「そりゃあそうかもしれんけど、お前もいい加減ウンザリしていたところもあったやろ?」 「まあ・・・・そうですけど」 「大体、運転ぐらい何とかなるやろ・・・そんなに不器用な方やないし・・・」 「・・・・コメントは難しいですね。あの人の場合、加減が効かない所がありますから」 「ああ、それは・・・・な。でも今回は大丈夫や! 滅茶苦茶簡単な操作にしたから・・・ほら遊園地にあるやろ? ゴーカートのようなもん。だからいくら都筑でも・・・」 「念のために聞きますが・・・普通の大きさの車なんでしょうね」 「そうや」 「・・・・良かったですよ、いい歳の男が小さい車に跨る図は寒い物がありますから」 「いや、都筑ならみんな納得するかも・・・・って、はははは・・・・」 巽が睨み付けるので亘理の笑いは乾いたものになる。 「・・・・それで? いつやるんです? 試運転」 「今日」 亘理の言葉に書類に目を落としていた巽は顔を上げる。 「は? 今日? 聞いてないですよ!」 「都筑に口止めされてな、何でも驚かすとか言ってたわ」 「何考えてるんですか、あの人は・・・」 「かわいいやん、驚かしたいんやろ、お前を」 巽の返事は再度の溜息だった。 「でもなあ、本当に・・・番組見ただけか? 何か他に理由があるんやないのか? 急に言い出したのって・・・」 「他に・・・・?」 「だってあいつはいつも出かける時はお前の助手席って決まっとるやろ。まさかナビから卒業を・・・・」 ちょっと愉快そうに亘理が声をあげる。 「亘理さん・・・」 ふっ、と巽が笑う。 「な、なんや・・・」 「都筑さんがナビですって?・・・・・亘理さん、都筑さんはナビ役なんてしたことないですよ」 「え?」 「ああ、言い換えます。あの人はやっているつもりかも知れませんが、無理です。あの人に道案内は出来ません!」 どことなく巽の顔が輝くのを亘理はぼんやり見つめた。 本人は気づいていないだろうが、巽は都筑のこと、特にその欠点を挙げて語る時、少し嬉しそうに話す。 勿論その欠点とは字が汚いとかルーズだとか金遣いがなっていないという部類の話。 意訳すると・・・ 『私の都筑さんはこんな事も出来ないんですよ!可愛いでしょう?』 と聞こえないこともない。 しかし・・・・・ついうっかり、周囲の物がそれに思いっきり同意しようものなら、その時の機嫌次第で、その者は巽の逆鱗に触れたりするのだ・・・非常にややこしい・・・だからこそ弄るのも面白いという話もあるのだが。 「地図の見方が分からなかったりするんですよ! まず上が北を示すことも抜けていますからね、あの人の言うとおりに動いたら、どんなに近いところも無事に着くことは出来ませんよ。あなたは知らないかも知れませんが・・・」 ・・・・知らんわ そんなの・・・・・ 喜々として話し続ける巽から目をはずし、亘理は欠伸をする。 やはり車の改造に睡眠時間を削られたのが影響しているようだった。 今日軽く都筑に運転をさせたら、ゆっくり休もう・・・そう考えている時だった・・・・ キキキィー! ドカーン! ガチャーン!! ここではそう聞くことのないタイヤの軋む音と何かにぶつかる音が庁内に響いた。 「な、なんです!」 その音で我に返ったのか、巽が声をあげる。 亘理が窓に走り寄った。 僅かだが庁の入り口付近で砂埃のようなものが上がっているのが見えた。 と同時に音に驚いた人達が、わらわらと集まって来るのも見える。 「巽! 下や、下で・・・・たぶん・・・」 その後の言葉はお互い言わなくても分かった。それ以外に考えられない。 (ああ、もう!あの人は!) 巽は持っていた書類を机の上に叩きつけると、亘理と共に部屋を飛び出した。 「これを怖れてたんですよ! 何かあったらアンタのせいですからね!」 廊下を走りながら巽が叫ぶ。 「もう起こっとるやないか! とにかく様子を見に行かんと!」 (でもまだ動かし方は教えていないはず・・・・) 巽の後を追いながらも、亘理は訳が分からなかった・・・・。 けれども・・・・・これはまだ騒動のほんの入り口にすぎなかった。 |
2003・10・7
M・Hinase
★おかしい! おかしいぞ! まだ続くのか?!
今回で終わろうと思っていたのに・・・・それも都筑さん出てないよ;;
でもご安心を!(笑) 次回は大活躍ですわv
是非応援してやってください、都筑さんを・・・・(爆)