止めるべきもの
でも止められないもの
| 秋晴れの午後。 課長室ではファイルをめくる音だけがしていた。 自分の出した報告書をめくる巽から目を外し、密は窓の外を見る。 はらはらと風に舞う花びらが窓の外を彩る。 これを見るたびに密は溜息をつく。 季節感なんてあったもんじゃない年中咲いている桜の木は、一体誰の趣味なのだろう(見当はつく)。 他は大して地上と何も変わらない造りなのに、この桜だけはどうにかして欲しいものだと密はいつも思う。桜は春、夏は新緑で、秋には紅葉・・・そして冬はそれらが白く染まって・・・・。それこそが日本の四季であり、美なのだ!と密は思っていた。 もう少ししたらあの脳天気なパートナーを連れて地上へ紅葉見物にでも出ようか・・・・ふとそんなことを考える。 ・・・はっ、でもあれを作ってこられたら・・・・ 密はふるふると頭を振った。身の安全を考えれば亘理とか他の人と行くかみんなと行くか・・・・それが一番だ。一昨日出張から戻ってからの光景を思い描き、密は遠い目となる。これからのことを考えるととてつもなく怖い事かも知れない。 そんなことをつらつらと考えていた密は自分を呼ぶ巽の声に反応が遅れてしまった。 「・・・どうかしました? 黒崎君。」 「ああ、いえちょっとぼうっとして・・・・すみません。」 「疲れが出ているんじゃないですか? 今回も大変だったのでしょう・・・一昨日も遅かったようですし。」 「いえ、仕事自体は大したことは・・・・」 その言葉に巽が眼鏡を上げる。 「あの人がまた何か?」 出張明けの月曜日、まだ一人、登庁してきていない男がいた。 「ちょっと・・・・・・買い物やら特訓やら・・・」 「買い物? 特訓? 何のことですか?」 密は巽を見つめて少しだけ申し訳なさそうな顔をする。 「・・・・・巽さん。」 「はい?」 「身体・・・・気をつけてくださいね。」 「はい?」 何のことか分からずに巽が聞き返す。 「俺たち死神で良かったですね・・・・。」 「は?」 諦めたように呟く密を巽は見つめた。 「何の事です? あの人がいった・・」 巽の言葉が言い終わらないうちにバーンと扉が開いた! 「たっつみ〜!!! お弁当作ってきたよ!」 思いっきり開いたドアの前に大きなお重を持った都筑がいた。 満面の笑顔は可愛かった。 そして・・・・・・その時巽は全てを悟った・・・・・・。 恭しく一礼をしてドアを閉める。 中からは 「黒崎君、待ちなさい! 黒崎君!? 君も一緒に・・・・」 (絶対嫌です) とか 「えー密は食べないの?」 (食べるか、アホ!) とか叫ぶ声が聞こえるが、無視する。 ドアをしっかり閉めて(出来ることなら外から鍵をかけたいぐらいだ) 離れると声は届かなくなった。 「すみません・・・・巽さん。」 小さく呟く。 でもこれもまた彼の幸せなのかも知れない・・・・・自分には理解できないけれども。(したくもないが・・・・) 出張中滞在したホテルでチャンネルを回した密はうっかり料理番組に画面に映してしまった・・・・しかも行楽弁当の作り方だ。 やばっと思った時は遅く、背後で興味津々で覗き込む黒い頭がいた。 それからというものはお弁当を作るんだ!と意気込む都筑の買い物につきあわされ、あの番組と同じようにやると言って、夜遅くまで密を巻き込んでの準備。 密だって何度止めようとしたことか・・・・。 でもみんなに食べさせるんだ!と笑顔で言われたら何も言えなかった。あんな笑顔で言われたら誰だってそうだよな・・・・と密は思う。 少なくともそんな役回りは自分はごめんだ。言うべきなら他に言うべき人は沢山いるのだ。 特訓と称した都筑の独壇場だったあのキッチン。 味付けも何も阻止できなかった・・・・というより途中で諦めた。 次々と出来上がっていく料理の品々に都筑の器用さを知った。 味見も勧められたが、断った。 見た目はいつものように綺麗だが、おそらくは・・・・・だろう。 そんな中、どうしても、一つだけ目に焼き付いて離れないものがある。 それはタコウィンナー。 茶色いウィンナーのそれはお弁当の代表格だ。 しかし・・・・都筑のそれは・・・・ カタログに載せてもいいような数々の美しさの中でひときわ目立つあの色合い。 普通に切って焼けばいいものを何故あんな風にするのか・・・・。 横で鼻歌交じりにそれをつくる都筑に彼の料理への奥深さを知ったのだ。 今頃巽は見ているのだろうか・・・・・まるで何かの病気をしているかのような斑点のあるタコたちを・・・・・。 大粒の唐辛子に色々混ぜ込んであえて、それを焼いていた都筑・・・・・・。 思い出すだけで涙が出てくるようだ。 「都筑・・・・・おまえって凄いよ・・・・」 誰もいなくなった部屋(都筑が包みを持って入ってきた時点でいなくなったようだ・・・・)に佇み密は言葉を漏らす。 たぶん今回巽は摘むのではないだろうか・・・彼の都筑への思いの強さをしみじみ感じる。自分には出来ない・・・・・もう少し長く生きれば少しでも理解できるようになるのだろうか。 さて道場の方にでも行くか! 大きく深呼吸をする。 何事もなかったように、そしてかすかに聞こえる叫び声も聞こえないふりをして密は歩き出した。 目指すは精進! それだけだ! 今、密の願いはもっと強くなること! もっともっと強くなって、守らねばならないものがあるのだ。 密は部屋を出て行った。 そして誰もいなくなった召喚課に風が吹く。 課長室で時折ドタバタと音が聞こえる。 一枚の花びらが密の机の上に舞い降りた・・・・・・・。 今日も平和な時が流れる。 |
2002・10・22
M・Hinase
| ★・・・・・・・。 この壁紙を見て突発的に書きたくなったSSです。 これ密の誕生日SSじゃダメですか? え?ダメ?当たり前? そうかあ〜ダメかあ(笑)。 巽の幸せって何だろうね・・・・・。 ちなみにこのタコウィンナー凄く気持ち悪いものと思います・・・・・・; |