ハト時計って?



「ねえ、巽。」
手作りの美味しい食事をもらって、出してもらったお茶をすすりながら都筑は片づけをする巽に声をかけた。
「何ですか?」
「ハト時計って何のこと?」
その問いに思わず巽は洗っていた皿を落としそうになる。
「まだこだわっていたんですか!別に何でもないですよ!」
「えー、だって亘理が言ってたじゃん!」
「忘れなさい!」
「たつみー!」
自分が留守の間に召還課の部屋にかけられるようになったのだろうか・・・・でもさっきは見渡す限り何も見つけられなかった。
「ねえったら!」
なおも食い下がろうとする都筑に用意していたデザートをバーンと置きながら
「そんなことよりも都筑さん、今日遅れた理由・・・・後でじっくり聞かせてもらいます。」
とにっこり笑いかける。
「へ?」
「どうせアンタが我が儘言ったことが原因でしょう?」
「あはははは・・・」
笑うしかなかった。
今日限定のケーキを手に入れるために密にも頭を下げまくって並んでいたなんて・・・・言えない。それにそのケーキをほとんど都筑が(冥府に戻る前に)食べてしまったことも・・・・。
そればかりではない明日になればこの2週間の怠惰な仕事ぶりもきっと密の報告書で暴露されてしまうことだろう・・・・。
幸せな時間が音を立てて崩れていくような気がした。

これからの事を考えてオドオドしている都筑を見ながらとりあえず巽は話題がそれた事に安堵する。
ハト時計・・・・都筑の帰りが気になって何度も課長室と召還課の部屋を往き来していた自分を指して言った言葉だと亘理が言った瞬間すぐ分かった。言われるまで自覚はなかったが亘理は今日一日の巽行動を全て見ていた。間違いなく自分の事だ。
でもそれを都筑に知らせるのは得策ではない。
この事を知るときっと都筑は大喜びかも知れないが、自分がそんなにそわそわしていた事を知られるのは嫌だった。



「お風呂の準備できましたよ。」
バスルームから出てきた巽は服の袖を下ろしながらリビングの方に声をかける。
返事がないので部屋を覗き込むとソファの上で猫のように丸まって眠りこけている都筑がいた。
「都筑さん」
呼びかけて少し身体を揺らすが反応がない。ぐっすり夢の中にいるようだ。
「まったく好き勝手ですね・・・・」
そう言いながらも安心して眠る都筑の寝顔に顔が緩む。

どんなに無茶をしても、やはり都筑が可愛いと思ってしまう。
いつも柔らかい日差しのように笑っていて欲しいと願っている。
巽は絨毯の上に膝をつきそっと都筑の頬にキスを落とした。
「少しだけ寝かせてあげますよ。でもその後は・・・・分かってますね?」
そう言うと
「むにゃ・・・・もう食べられない・・・・」
という寝言。
くすっと笑って巽は立ち上がり、都筑の着替えを用意する。
穏やかな幸せを感じると共に、今頃はきっと亘理が密に“ハト時計”のことを話しているに違いないと思うと、何とも言えない気持ちにもなってくるのも確かだった。





その頃の亘理と密は・・・・
「え?30回?」
「そうや、すごいやろー。」
「はあ・・・・」
「今度課長室のドアの周りに時計の絵を描いておくとええかもな!巽鳩時計や!」
「・・・・誰が描くんです?」
「俺!」
「・・・・・やめた方がいいと思います。」
研究室の夜は更けていった・・・・・。


2002・1・15
M・Hinase

★リクエストSSの続きとなります。
そちらを読んでからの方がよりわかりやすいと思いますのでご注意を。
この後都筑がどのような目にあったかはご想像にお任せしますわ(笑)。

それにしても時計・・・・亘理に描かせるとどんな物になるのでしょう?