ああ召喚課




「ほら、ここ違うでしょう?良く見本を見て!」
「ああ、もう字が違っています。何度同じ事言わせるんですか!」
朝から部屋中に響き渡る怒声。
その声の主はもう言わずとしれた某秘書で・・・・その声を一手に引き受けているのも某平職員・・・・。
めいめい自分の机で黙々と仕事をしている職員達は、
その秘書の声が聞こえる度にびくっとしてしまう。
いくら聞き慣れているとはいえ、やはり心臓に良くない。
目が合うと怖いので、こっそり二人の様子を伺っては、何かと理由をつけて部屋を出ていく。
今残されているのは亘理と密の二人だけだった・・・・。

「これやり直しです!」
「えーっ、何処が悪いんだよ、2時間もかけて書いたんだよ!」
「アンタが何時間かけて書いたかなんて、私の知ったことではありませんね。全ては結果です!結果を見て判断させてもらいます!」
「ひどいよ・・・・」
「ひどい?何がですか、この書類のことですか? ああそれなら理解できますね、自覚があるならもうちょっとどうにかして欲しいですね!」

「今日はまた一段ときっついなあ〜」
亘理は後の棚にファイルを取りに来た密にだけ聞こえるような小声で呟いた。
「巽の小言はいつもやけど・・・・」
「今日のはちょっと違いますね、確かに。」
ふう〜と溜息をつくと、密は手にした書類で口元を隠す。
「何か分かるか?」
机の中のものを探すふりをして聞いてくる亘理に密は目で頷く。
「いつもは分からないですけど・・・・珍しいですね巽さんから、こんなに感情を感じるなんて。」
「何?何?」
密の答えにゴシップ好きの亘理の目が光る。
「それは・・・」
目をキラキラさせている亘理に答えようとしたその時、
「亘理さんっ、今日提出の書類は出来てるんですか?」
都筑に向かっていた、そのままのテンションで巽が声を掛けてきた。
「あ?ああ、あれね、出来てる、出来てる。実験室に置いたままやったわ。」
坊も、来いと目配せをされ慌てて密も亘理の後を追って部屋を出た。


「んで何?」
廊下をしばらく歩いて、もう大丈夫と言うところで待ちかねた亘理が聞いてくる。
「・・・たぶん嫉妬だと思います。」
「はあ?」
「はっきりとは言えないけど・・・・あの感情をあえて言うなら・・・・」
「ヤキモチかあ・・・・でも何に・・・あ、あれか!」
亘理はポンと手をうつ。
「え?何か知ってるんですか?」
今度は逆に興味を持ってくる密に亘理はつい3日前のことを話した。

それは3日前の週末のこと
映画に行く約束を急な仕事で巽にキャンセルされ、都筑は一人街をブラブラしているところで同じ閻魔庁の職員に会った。お互いに暇ならば・・・と喫茶店に入り、何となく話すうちに見に行く予定だった映画に誘われた。予定がつぶれて面白くなかった都筑は深く考えず、その誘いに乗り、映画を見た。その後食事して、別の店で飲み直そうと思っていたところで、亘理は彼らに会ったのだった。
「こう話すとな、何も思わんやろ?」
「ええ。」
「ところがや、程良く酒が入って饒舌になっとる都筑から聞き出したんやけどな、その日見に行った映画は恋愛もの、その後の食事は豪華なレストランでディナーや、分かるか、これ。」
「・・・・・それってまるでデート・・・・」
「そうや、鈍な都筑は気づかなかったけれど、あいつデートしてしもたんや、そいつと!それに俺が会った時はもうだいぶん酔うとったしなあ、あのままほっといたらどうなることか、それが心配で俺も合流したんや。相手はめちゃ迷惑そうやったけどな。」
その時のその男の顔を思い出して、亘理は笑った。
「そんな事あったんですか・・・・」
それにしても、そんなあからさまにデートを仕掛けてくるなんて・・・・一体ここはどうなってるんだ!と密は心で叫ぶ。
「家に連れて帰った時に、今日のことは巽に黙っておくように言ったんやけどなぁ〜。」
「ダメですよ、あいつ嘘つくの下手ですから。」
はあ〜と深く息を吐きながら密は言った。
ま、いいか二人のことやし・・・・と亘理は背伸びをする。
「坊、ちょっと早いけど食堂でも行って昼飯でも食うか。」
「え?亘理さん書類は?」
「あんなもん、あそこ出る口実や。あれ以上二人のいちゃつき見せられたら、たまらん。」
「そうですね。」
両手を左右に広げお手上げをする亘理に、密も頷いた。
しばらくは部屋に戻らない方がいいかもしれない。


その後泣きじゃくる都筑に、さすがに少し反省をした巽が、そっと肩を抱き寄せ、瞼に口づけを落としていた所を偶然戻ってきた職員が目撃。
しばらくは誰も部屋に戻れずその日の仕事が滞ったという。

2001・10・5
M・Hinase

★あれ?ここはショートショートのコーナーじゃ・・・・あれ?ここって巽都オンリーだったはずじゃ・・・・という疑問は、すまきにして川に流してしまいましょう(笑)。別に亘密のつもりではないです。
いいのさ、ここは好き勝手に日生が書くコーナーなんだから(汗)!