何処?

扉を開けた途端、ガサゴソと音が聞こえてきた。
「?」
巽は首を傾げながら靴を脱ぐ。



昨夜は嫉妬やら何やらと複雑に絡んだ感情で、つい都筑に無理をさせてしまった。
朝、ぐったりと寝込んでいる都筑にキスを落としながら、少しばかり反省をして・・・。
その代わりにないはずの有給を与えて、その上今夜の食事のための買い物までしてきたのだ、残業もせずに。
巽は手にした買い物袋を持ち直す。購入してきた食材はかなり豪華だ。
これで少し自分の中ではカタが付くような気がした・・・。



「・・・・・大きなネズミですね」
「え?・・・あたっ!!」
ガーンと大きな音を立てて、都筑が頭を抱え込む。
「・・・・何してるんですか、まったく」
その音に眉を顰めながら巽が呟く。

シンクの下に身体の半分まで突っ込んでいた都筑は巽の声に驚いて身体を起こそうとしたのだった。

「痛ーい! なんだよ・・・・って、巽、早いじゃん」
頭をさすりつつ身体を抜いて床に座り込む。
「買い出しを少しね・・・で、何をしてたんです?」
「え?」
「え? じゃないでしょう・・・・探し物ですか?」
もう答えは分かっているけれど・・・・。
「・・・・・」
「しつこいですね〜あなたも」
「しつこいって・・・・だって巽教えてくれないんだもん!」
「いいでしょう? あれだけあるんだから」
「何で隠すんだよ!」
「ふう・・・」
「何で溜息をつくんだよ!」
「・・・・・・食べたいんですか?」
あの男の物でも。
「食べたいっていうか・・・・・どんなのだろうとか・・・・ほら、あいつ金持ちだし、なんか他のと違うチョコとか・・・・・興味あるじゃん」
「・・・・・・私はないですよ」
「大体俺宛なのに、俺が全然目にしていないのって、おかしいよ」
「玄関での荷物チェックはありますからね」
「それにしても・・・・」
尚も食い下がろうとする都筑をじっと巽が見つめる。
「何?」



巽は都筑の側にゆっくりとしゃがみ込む。
「私はね・・・・時々不安になるんですけど」
「・・・・何が?」
都筑は目を見開く。
「・・・・・あなたが私と一緒にいるのって、美味しい物が食べられるからじゃないだろうか・・・・とか。」
「ば、馬鹿! 何言ってるんだよ!」
「・・・・美味しい物が食べられれば、あの変態の所でも良いのかな・・・・とか・・・」
くっ、と辛そうに巽が目を逸らす。
都筑は意外な言葉に驚いてしまった。
「そんな・・・・・そんなことないよ、何言ってんの!」
都筑が巽の顔を自分の方に向ける。
「俺は巽が好きだから! だから一緒にいるんだよ! 美味しい物が食べられたって・・・・あいつとなんて・・・・・!」
「信じて良いんですか・・・?」
まだ苦しそうな顔をする巽に都筑は焦って・・・
「当たり前じゃん! 俺には巽しか考えられないって! ちょっとだけ興味があったんだよ・・・・だから・・・信じて!」
「都筑さん・・・・」
「ね、ホントだから!」
「・・・・・・」
すうっと一筋巽の目から涙が零れる。
「巽・・・・!」
・・・・ごめんね!・・・・
ぎゅっと都筑が巽に抱きつく。
「分かった、もう気にしない。」
「ホントに?」
「うん! 絶対!」
巽を悲しませるくらいなら!
都筑の言葉に巽も抱きしめてくる。
勿論、熱い口づけ付きだ。

都筑の肩に顔を寄せた巽の口元が笑っていたことなんて都筑は知りもしなかったが・・・・。



「さ、美味しい物を作りますからね。身体はもう大丈夫ですか?」
「・・・・うん。」
昨夜の事を思い出して都筑が顔を赤らめる。
可愛い人ですね・・・・
巽は微笑んでそっとその額にキスをした。

2003・3・11
M・Hinase

★巽・・・・そして都筑さん・・・・(涙)
まだ続くかな・・・・