誰のチョコ?

「今日はどれにしましょうか・・・」
課長室の片隅に置かれた大きな箱を覗き込んで巽は呟いた。
中には大きい豪華な箱から小さな可愛い箱まで・・・色とりどりにラッピングされたチョコレートの箱が入っている。

「ねえ、巽」
都筑ががさごそしている背中に呼びかける。
「ねえ、ってば!」
「・・・・なんですか?」
振り向きもせずに巽が答えた。
「あのさ、なんかこういうの変じゃない?」
「何が?」
「何がって・・・だってそれ、俺が貰ったチョコじゃん!」
「そうですよ」
あっさり答える巽はまだ振り向かずに箱を探っている。
「じゃあ、なんでお前が没収するんだよ!」
「・・・・人聞きの悪い事を言わないでください」
ようやく決めたのか、1つの箱を持って巽が振り向いた。
「誰が没収ですか。こうやってちゃんとおやつに出しているでしょう? 別に私が食べている訳ではありませんよ」
「そ、そうだけど・・・・・でもなんか・・・なんか変だよ! 俺が食べるんだったら最初から俺が全部貰ったって・・・」
「それが出来るのなら、こんな面倒くさい事しませんよ」
巽が溜息をつきながら首を振る。
「?」
「あなた、手にした瞬間その日で食べ尽くしてしまうでしょう? 違いますか?だから、こうやってちゃんと管理して毎度のおやつに出しているんじゃないですか」
そう言われても都筑は納得がいかない。
「う・・・・ん、でも・・・なんか・・・」
「体にも悪いし、くれた方にも失礼ですよ、あの食べ方じゃ・・・」
「そ、そうかな・・・・」
「そうです。だから、こうやってちゃんと誰からです・・・って言って渡しているでしょう?」
「・・・・・うん」
「ほら、今日はこれですね。・・・・えっとこれは経理の新人の女の子ですよ」
「うん」
都筑は可愛いリボンのかかった箱を受け取る。手にするとそれに気をとられたのか、今まで文句を言っていたことを忘れたようにリボンを撫でたり、つけられたメッセージのカードを嬉しそうに読んでいた。
「・・・・ふ〜ん・・・巽、この子、俺の事格好いいって!」
笑って包みを開ける都筑に巽は微笑んだ。嬉しそうな都筑を見るのは巽は好きだ。
「良かったですね、今お茶入れますから・・・」
巽は奥の給湯室へと向かう。


都筑は知らない。
チョコを入れた箱がもう一つあることを。
そして都筑が貰ったチョコを見事なまでに巽が、その意味合いで吟味し、種類分けしている事を・・・。
「しばらくはおやつ代が浮きますね」
棚の上の方に上げてある箱を見上げる。
あれは都筑の出張時にでも家に持って帰って何かに作り替えるなりして使ってしまおうと考えていた。その大半は男性職員からのチョコだ。
誰がそのまま渡すものか、心の中で舌を出す。

「ねえ、お茶まだ?」
都筑の声に返事をして巽はお揃いのカップを取り出した。

2003・2・18
M・Hinase