窓の雪

手の中のグラスが音を立てる。
その音に視線を窓から部屋に戻した。



「ねえ、飲んでる?」
へらっと笑いながらビールの缶を振る姿に溜息をついた。
テーブルの上にはもう空になった瓶が幾つも転がって・・・そしてあいつの前にはそれ以上の空き缶が。


いつもなら・・・いつもなら絶対こんな事はさせない。
そう
いつもなら。

でも・・・・・今日は・・・。



「ねえ、ひそかぁ〜」
「うるせえよ。」
「だって〜飲んでないじゃん!」
「飲んでるよ、俺は! おまえが飲み過ぎなんだよ!」
「そうかなあ。」
そう言って周りを見渡す・・・・。
「普通?」
「・・・・まあ、おまえにとっては普通だろうよ。」
付き合っていられないという感じで返事をすると、
「冷たいよ〜密、パートナーじゃん!」
とか、訳の分からないセリフを繰り返す。
もう何回聞いたことか・・・。
そのまま黙っていると、
「へへへっ・・・」
と笑って、また新しい缶を開けた。
「おいっ、もう止め・・・・」
言いかけて口をつぐむ。
今日は・・・・好きなようにさせてやろうと思ったことを思い出した。




朝から冷え込んだ今日は昼前から降り始めた雪がみるみるうちに積もった。
仕事が終わって庁を出る頃にはすっかり銀世界となっていた。

いつからだろう・・・。
あいつが雪を見ると辛そうな顔をすることに気づいたのは。
かすかに感じる辛い、痛い想いを持っていることに気づいたのは。
今日も少し様子が変で・・・でもそれを隠しているのが・・・腹立たしくて。
窓の外を見ようとしないくせに何もないように笑うその様子がたまらなくて。
帰りに家に誘った。
その時のほっとしたような顔を思い出す。

小さく舌打ちをした。




再び窓の外を見る。
また降り始めたようだ・・・・明日の朝は面倒かも知れない。
後ろで何か呻いているが、放っておいた。
「密〜」
名前を呼ばれる。
「ねえ〜。」



呼ぶなよ・・・・俺の名前なんか
・・・・酔ってもないくせに
・・・・酔った振りなんかするな
心の中で呟く。



そのまま寝てしまえばいい。
・・・・・そうしたら
・・・・・そうしたら・・・・そっと抱きしめてやる。
そして俺の体温でおまえを温めてやる。
それまではもうおまえを見ないから・・・・・・。



降り続ける雪を眺める。
いつか
いつか
ふたりで眺める時が来るのだろうか。
穏やかな気持ちで・・・・・。

2003・1・21
M・Hinase

★すみません・・・・書きたくて・・・オチも何も考えずに書いたものです。
もっともっと暗い感じだったのですが;;
それにしても久しぶりの密都ですね。
もう少し書かないとな・・・・・。