Christmas

・・・ほら、また・・・

邑輝はテーブルを挟んだ都筑を見る。
今日会ってから何度目だろう・・・・時々、急に黙り込んだかと思えば何かを見つめて考え込んでいるようなそんな素振りを都筑は見せる。
今もまた、目の前に出された肉料理の事について一言二言感想を言った後、黙り込んでしまった。
赤いワインが入ったグラスをぼおっと見つめている都筑は、小さく溜息をついている。
邑輝は食事の手を止めた。

「都筑さん・・・」
「・・・えっ? あ、何?」
顔を上げる。
「・・・・何かありましたか?」
「え? なんで?」
「なんでって・・・・様子がおかしいですよ。」
「・・・そう?」
「・・・・お仕事で何か・・・?」
あえて聞いてみる。触れない方がいいかもと思ったが、いつまでもこういうことを避けていても仕方がない。
これから都筑と共に歩んでいきたいと思っている邑輝は楽しいことばかりではなく、都筑の受ける痛みも苦しみも感じていたいと思っていた。
でも聞かれた都筑は今の言葉に首を傾げる。
「仕事・・・? ううん、ここのところ何もないし・・・・」
「じゃあ、どうしたんですか。何か心配事があるのでしょう?」
何か思い詰めた表情をするのが気になる。
「えっと、別に・・・・・」
そう言いながら邑輝を見ていた目を外す。
邑輝は眉を顰める。
「何でもないよ、ホント。」
顔も見ずに笑う都筑は食事を再び始めた。
「あ、これ美味しい!」
とか
「これなんて言うの?」
とか・・・・
とってつけてようなセリフを続けながら・・・。
邑輝もそれに短く答えながら、食事を進める。
今度は邑輝が溜息をつく。
少しだけ、少しだけ・・・・あの男の気持ちが分かったような気がした。



レストランでの食事を終えて、同じホテルにあるバーへと入っていった。
邑輝は少し悩んで・・・・カウンター席ではなくテーブル席を選んだ。
それぞれに頼んだ物が目の前に来る。
「あ、雪が降ってきた!」
あの後、妙にテンションの高い都筑が外を見て声をあげる。
邑輝はそれに答えずに、グラスに口を付ける。
「ホワイトクリスマスになるな・・・・」
同意を求めようと邑輝を見た都筑が言葉を切る。
窓枠にかけていた手を戻して、座り直した。
「・・・・・なあ、なんか怒ってる?」
「別に。」
「・・・・・でもなんか・・・・・」
どうかしたのか、と問われたあの食事の後、ずっと邑輝は黙り込んでいる。
逆にそれまで黙りがちだった都筑の方が間を空けずに話し続けて・・・・。
「話さないじゃん。」
ぼそっと都筑が呟くのが聞こえた。邑輝がグラスを置く。

・・・最初に様子がおかしかったのはあなたでしょうに・・・・
邑輝は足を組みかえた。





今日はクリスマスイブ。
今までの経緯を考えても、この平日の日には会えないだろうと諦めていた。その前の連休は都筑が出張で・・・・先日の邑輝の誕生日を最後に連絡もなかなか取れなかった。
だからといって他の者と過ごす気もない・・・・普通に仕事でもして一人別荘にでも・・・と思っていた。
そんな邑輝の元に電話があったのは昨日の晩。
『明日会えないかな?』
その一言から始まった・・・・・・。

元々諦めていた事。
都筑からの申し出は邑輝にとっては正直、天にも昇る気持ちだった。
誕生日の時も思いがけなく会えたが、ほんの2,3時間。
甘い口づけを交わすのみで別れて・・・・。
何よりも都筑からそう言う行動をとってくれたことが嬉しくて、それだけで充分だった。
それが今回はクリスマスを共に出来るという。
またきっと夜には戻るのだろうが、食事が出来るというだけで良しとしなければならない。今までが今までなのだ贅沢は言えない・・・・そう考えていた。
急いでレストランを予約して都筑を迎えたのだが・・・・・。






都筑は邑輝を見つめる。
白いスーツに身を包んだその姿は何処に行っても目立つ存在。
現に今も店に入ってからも他の客の視線を釘付けだ。
そんな相手と一緒にいるのが恥ずかしいような、誇らしいような、複雑な気分の中での逢瀬。もっと見ていたい・・・出来ることならずっと・・・・そんなことはとても言えないけれど。
今日はクリスマスイブ・・・昨日、思い切って電話して・・・。
ただ会いたい、話したい・・・それだけの事だった。
なのに、こんな雰囲気になるなんて・・・・と都筑は俯く。
邑輝が黙り込んだのはさっきの食事中の会話からだ。
なにがそう気にさわったのかはわからない・・・・。
でもきっとなんだかの自分の態度が原因だろう。
そこまで考えて・・・・もしかしたら・・・・と都筑は思う。
庁舎を出た時から頭の中を回っている言葉・・・・それを気にするあまりに何か変な態度に出ていたのかも・・・と。

・・・・まったく! 亘理の奴が変なこと言うから!・・・・

心の中で文句を言う。
あんな事を言われたから、それが気になって食事も上の空だった。それは確かだった。
でも・・・・このままじゃいけない!
せっかく会えた貴重な時間なのに、こんな気分のまま終わるのなんて嫌だ。
都筑はテーブルの下で拳に力を入れる。



「あの・・・邑輝!」
その呼びかけに邑輝は黙って目を上げる。
「あ、あのな・・・・・えっと・・・・・その」
・・・・頑張れ! 俺!・・・・
「・・・どうしたんです?」
急に話し出した都筑に、火をつけたばかりの煙草を口から外した。
「あ、あの・・・・・・俺、いいから。」
「・・・・・は?」
言い終えた途端、みるみる内に真っ赤になる都筑。
「あの・・・・なにが?」
「・・・・・だから・・・・・だからだよ!」
「え?」
要領の得ない言葉に、邑輝は反応が出来ない。
「だから・・・・何が?」
キッと都筑が顔を上げる。
「言わせるのか!・・・・・そ、そんな恥ずかしいこと言えるか!」
「恥ずかしい・・・・?」
邑輝は益々赤くなる都筑を見つめる。突然の展開についていけない。
黙り込んだまま食事が始まったと思ったら、妙にテンションが上がる。仕事で何かあったと思い、聞き出そうにも答えない。
どうしたものか・・・・と思い悩んでいると、このセリフだ。
一体どうしたというのだろう・・・・・・。


「聞いているのか?」
「ええ。」
聞いてはいますが、分からないのです・・・・
「じゃあ、そういうことだから!」
それだけ言うと都筑はグラスに入っている酒をがっと飲み干した。
手を挙げて追加を頼んでいる。
「ちょっと、都筑さん・・・・」
言いたいことを言って、さっきよりかはすっきりした表情の都筑がそこにいた。

邑輝は何が何だかわからない状態に今聞いたことを繰り返す・・・・。
『いいから!』
言い放った言葉・・・・何が良いのだろう? 
ここの払い? それはないだろう・・・・・ここは都筑が払えるような場所ではない。
それじゃ・・・・もう少し思い返す。
言った後、真っ赤になった・・・・・。
・・・・・まさか・・・・・!
都筑の様子を思い浮かべ・・・・・ふとある考えがよぎる。
心が急に泡立ってきた、もう少し考えてみる。
『恥ずかしい』とも言った。
邑輝は目の前で酒を飲み続ける都筑を見つめる。
・・・・・・本当に?・・・・・
明らかにある方向を指している事があった。
じゃあ、今日様子がおかしかったのは、それを意識して・・・・。


「邑輝! 灰、灰が落ちる!」
都筑の叫びに邑輝が我に返る。
目の前に灰皿を出されて慌てて受け取った。
「・・・・大丈夫か?」
自分を見つめてぼうっとしている邑輝に声をかける。
「あ、ああ、すみません。」
「邑輝?」
「・・・・都筑さん・・・・・いいんですか?」
真っ直ぐ見つめてくる瞳に都筑は咳払いをする。
「え? ・・・・・・ああ、聞くなよ、そんなこと・・・・はずかし」
「でも、今日は帰らないといけないのでは?」
言葉を言い終わらない内に邑輝が問う。
これまでのことを考えても、あの男がそんなことを許すわけはなかった。
「・・・・・・休む。」
「都筑さん・・・・」
ゆっくりと、でもしっかりと自分を見つめ返してくる都筑心が震える。
「もう子供じゃないんだし・・・・・別に。それにお前だって・・・・・そのつもりだったんだろう?」
「え?」
またもや赤くなった都筑の目を受け止める。
「お前だって・・・・・だから俺・・・・・。」
後の言葉は聞き取れない。
「いえ・・・・私は」
そう言いかけて邑輝は止めた。
食事だけでもいいと思っていたことはこの際黙っていた方がいいようだと・・・・そう思った。
都筑がせっかくその気になっているのにみすみすチャンスを逃すこともないだろう。
「・・・・・本当に・・・・・良いんですね?」
ゆっくりと静かに聞く。
目を見つめて・・・・・真剣に。
「・・・・・・ああ。」

ここが店でなければ抱きしめていただろうと邑輝は思った。
恥ずかしがりながらも頷く都筑が可愛くてたまらない。
部屋はいつでも取れるようにしてある懇意のホテルだ。
いますぐ用意をさせよう。
最高の夜を迎える為に・・・・・。






「都筑さん・・・・・」
テーブルの上で手を重ねた。
「最高のクリスマスです・・・・・・ありがとうございます」
小さく囁く。
その言葉に都筑が恥ずかしそうに頷いた。
窓の外は雪景色。
光り輝くイルミネーションが白い雪に包まれていった・・・。














『イブに会うなんて、相手は期待するで・・・・都筑! まあ、がんばりや!』
都筑が亘理に言った言葉は、この後邑輝は聞くことに。

数日後、亘理が急に羽振りが良くなった・・・・という噂が閻魔庁に流れることになる。






2002・12・27
M・Hinase



いやあ、・・・・・・・・とうとう?!
たぶん・・・・たぶんね(笑)。
ごめんね、ドクター・・・クリスマス外しちゃって;;;申し訳ない(^_^;)。でも気持ちだけは込めたから。
私が願うのはただひとつ、都筑さんの幸せだから、それさえ達成できればまあ、ぶっちゃけた話相手は誰でもv(おい;)
次回はそうねえ・・・・そろそろ話し合って貰おうかな〜彼と(笑)。やっぱりもう一度、お話し合い必要でしょう・・・・。

・・・・で、この夜の事、読みたいですか? リクエストあれば書きますが・・・・・?(笑)