Birthday
| 陽が陰ってくると気温も落ちてくる。 さっきまでやわらかな暖かみのあった場所は既にもう無くて・・・・。 都筑はコートの襟を立てる。 ・・・風が無くて良かった・・・ ぼんやりと一番星が光るのを見上げて息を吐く。 ・・・でもカイロでも持ってくれば良かったなあ・・・ ポケットの中の手は冷たくて・・・。 都筑は首を竦めた。 さっきまで一杯だった駐車場は空きが目立ってきていた。 もう残り少なくなった中、都筑は1台の車を見つめる。 あんな高級車に乗っている者はそういないだろう、それに良く覚えていないが1度見たことがある車種だ。間違いはないと思う。 でもその主はまだ建物から出てこない。 ・・・ここだって聞いたんだけどなあ・・・ もう待ち続けて1時間。 その間にどんどん日は暮れていく。 ・・・やっぱり本人に言ってなかったのがまずかったかな・・・でも来られるかどうか分からなかったし・・・ そう思いながら人影が玄関に見える度に顔を上げる。 でもやっぱり今回も待ち人ではなくて・・・・。 「早退したい・・・?」 文句を言われるのを覚悟で都筑が出した届け出表を見ながら巽が顔を上げる。と同時に都筑の後ろにあるカレンダーで日付の確認をする。 「・・・だめかな。」 「・・・理由は?」 「・・・・」 「会いに行くんですか?」 「・・・・・うん。」 「うんって・・・まったくあなたという人は・・・・嘘ぐらいついたらどうです。真っ正直に・・・。」 「だって・・・」 「だって?」 「・・・巽に嘘つきたくないもん。ついたとしてもすぐばれるし・・・・。」 「そうですね。ばれますね・・・。」 だったら・・・とボソボソ何か呟いているが巽には聞き取れない。 巽は軽く溜息をついて椅子に背を預けた。 ・・・どうやら先日邑輝の家に行った時に何かあったらしい・・・詳しくは聞いていないが、それは間違いは無いと思う・・・あの日から数日、いつもにましてぼんやりする都筑の姿に確信した。ふたりで会うことは以前からありはしたが、今回は何かしらの進展があったと見た方が普通だろう。勿論それは自分にとっての進展でも何でもないが・・・・。 前より少なくなったとはいえやはり仕事のことで落ち込む都筑を自分も周りも完全にはフォローは出来ない・・・それは確かだ。 だがそんな時に彼が救いを求めたのが、邑輝だということが気に入らない。 気に入らないが・・・・・最終的に決めるのはあくまでも都筑だとも思っている。 望むものは彼の笑顔、それが見られればとは思っている。 自分では与えられないものをあの男が与えるのならば、それも選択肢の1つになるのかも知れない・・・・。自分の中でも矛盾した気持ちが交錯する。 だからといって全面的に賛成するものでもないし、したくもなかった・・・・。 「・・・・いいですよ。」 しっかり5分間沈黙した後、巽は答えた。 都筑が意外そうに顔を上げる。 「なんです?」 「え?・・・・いや、断られるかと思ったから・・・・」 「却下されたいんですか?」 「違うよ、違うけど・・・・」 「その代わり、いいですか? 明日は平日です・・・遅刻や休みは一切認めませんからね。」 「うん、顔見たらすぐ戻るから!」 「すぐ・・・・ねえ・・・・」 ぱあっと笑っている都筑を巽が見つめる。 「・・・・・簡単に自分を安売りするんじゃないですよ。」 「え? 安売り?」 都筑が首を傾げる。 「・・・・・分かりました?」 「えっと・・・・何だか分かんないけど・・・・・はい。」 都筑が頷く。 「晩、電話しますから。」 「うん。」 じゃあ、ありがと! そう言い残して出てきた。あれは今日の昼のこと。 巽には隠して会いに来たくはなかった・・・・・。 都筑は腕時計を見る。 6時・・・・そろそろかなあ・・・・手のひらに息を吹きかけた。 携帯で連絡を取ればこんなに待たなくて済んだかも知れない・・・・・でも今日はどうしてもこうしたかった。 先日の薔薇園の中での出来事。 あの時から何かが少しずつ変わってきているように都筑は感じていた。 キスなんてもう何度もした・・・数え切れない程に・・・・。 でも何故だろう、あの時流れ込んできたもの・・・・あの感情に押し流されそうになった。受け止めるのが精一杯で・・・・でも何処か嬉しい自分がいて。 考えて・・・・考えているけどまだ答えが出ないまま。 でもいつか出さなければいけない答えだ。 目を瞑るとあの時の温もりを思い出す。 求められる気持ち・・・・それはとても心地よいものだった。 慰めのものとは明らかに違う。 自動ドアの開く音がした。 「つ、都筑さん?!」 その声に都筑が顔を上げる。 少し離れた所に白いスーツに、コート・・・・見慣れた姿がそこにあった。 いつもと違うのは、少しだけ驚いた顔と上ずった声。 都筑は笑った。 邑輝のこんな顔が見られただけでも・・・・今はとても幸せな気分だ。 難しいことは分からない。 でも今気持ちが暖かいのだけは、そしてそれがどうしてなのかも分かっている。 都筑は腰掛けていた花壇から腰を上げた。 「・・・・お誕生日おめでとう。」 向き合って、その瞳を見つめて伝えたい。 どうしても言いたかった言葉。 「・・・・・・ありがとうございます。」 邑輝の驚いた顔が少しずつ笑顔に変わる。 誰よりも何よりもその一言が嬉しくて・・・・。 どちらからともなく歩み寄る。 心の欲するままに・・・・・。 |
2002・12・4
M・Hinase
| ★少しずつ少しずつ動き出したもの・・・・それが形になるのはそう遠くないのではないでしょうか。 何はともあれ「おめでとう、先生v」。 幸せな誕生日になればいいね(*^_^*)。でもお泊まりはなしさ(笑)。 ・・・・って、もう終わっているよ、誕生日・・・・・遅刻してすみません;;; |