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| 「・・・・で?」 「え・・・だからそのね・・・寝坊・・・・」 「アンタ幾つですか?」 「あはは・・・;」 「笑って誤魔化すんじゃないですよ!大体月曜日から遅れてくるなんて!!」 月曜日の召還課・・・・各々の職員が仕事を始めて1時間後、こそこそと部屋に入り込もうとした都筑は巽に思いっきり捕まって、いつもの光景となっていた。 いつもと変わらない風景と台詞・・・でも何処かで何かが少しだけ変化していたのも確かだった。 「だってさ!金曜日からずっとだったんだよ!」 「何がです?」 泣きそうな都筑が一生懸命弁明をしていた。 「俺ほとんどベッドから出られなかったんだから!」 ガチャーン、バタっ、ドスン・・・・・・・ 部屋の何処彼処で物を落とす、中には椅子から転げ落ちた者もいたような音が鳴り響く。 部屋中の空気が何とも言えないものになっていった。 「ほぅ〜」と亘理は面白そうに笑い、密は小さく首を振った。 「・・・・・なんですって?」 眉間に皺を寄せて都筑を見た巽が低い声で聞き返す。 「だから!もう身体が怠くって・・・・って巽?!」 ゆらゆらと巽の背後から陰がのぼり始める。 「た、巽!!? 落ち着いて?どうしたんだよ!」 「ずっとですって・・・・ずっと・・・?」 ぼそぼそと独り言のように話し続ける巽に都筑が自分が何か失言したことにようやく気付いたようだ。 でも・・・他にいい言い訳が思いつかなかったのだ。 「巽・・・・?」 「お盛んなんはしょうがないやろ?」 「・・・・・」 その声が届いたのか巽がゆっくりその声の主を見る。 「何たって新婚・・・わわっ」 言葉を最後まで言えなかった亘理がまっすぐに向かってくる影を慌てて避ける。 影は間一髪で机を刺した。 「あ、危ないやないか!!!」 「あなたは黙ってらっしゃい!」 串刺しになりたくなかったら・・・・と怒り過ぎて笑っている巽が付け加えた。 「巽・・・・あの・・・・」 「ふ----私としたことがつい・・・・分かりました、ちょっと中で話しましょう」 そう言ってがっしりと都筑の手を掴んだ。 ずるずるとなすがままに課長室へと連れて行かれる都筑・・・。 「あ、こら!巽!!机直さんか!!」 亘理の言葉は軽く無視されドアの前で叩き落とされた。 「なんや・・・前とちっとも変わらんなあ・・・」 なあ、坊、と都筑の席に座り込む。 「あいつが都筑達のことを認めたって聞いて・・・・少しは此処の雰囲気も何か変わるかと思ったんやけどな」 「ま、あれで良いじゃないんですか?」 「そうか?」 「都筑は相変わらずだし・・・巽さんも・・・」 そう言って密はこの前の仕事のことを思い出した。 「夜通し話してたんだよ・・・」 仕事の後の帰り道、都筑がぽつんと言った。 「お前ら上手くいってるのか?」 密がそう聞いた答えだった。 「こんな仕事で・・・分かっているけど・・・どうしようもないやるせなさとか、辛い気持ちをあいつと話しあったんだ・・・」 そう語る都筑の横顔は穏やかだった。 「俺が・・・そんなこと言ったらさ・・・あいつもそれは自分にもありますよって・・・・医者としてとてもたまらなくなることは多いって・・・無力さを見せつけられることが多いって・・・立場は違うけど・・・同じような思いを持っていることに俺は気付いたんだ」 「・・・・そうか」 「うん・・・・」 「他にも沢山・・・沢山・・・夜遅くに仕事から戻って疲れていたんだけど・・・俺の話聞いてくれて・・・でもそのおかげで次の日は夕方まで寝ちゃったけどね」 えへっと笑う。 「・・・・ああ、そうですか良かったですね〜」 結局の所ノロケかよ・・・と、きのこを吐きたくなった密だが、それでも都筑がこんな風に笑えるのはいいことだと思った。 邑輝とのことが許されても都筑は仕事を続けている・・・これからは逃れることは出来ない。そして通ってはいるようだが一緒に住むこともないようだ。 週末はほとんど入り浸りだろうし、あいつのことだ、やがて色んな手を使って休暇を取らせるのだろうとは思うが・・・。 しかし都筑の仕事が続く限り、自分は彼のパートナーだ・・・それも変わらないのだ。 ならば都筑の側に違う位置で1人の男として立っていこう!そう思った。 それはきっと巽さんも同じ気持ちなのだろうと・・・・ただ、彼の場合は今まで世話を焼いてきた時間の長さがそうそう簡単にはその位置を変えられないのだとは思うが・・・・。 そう考えると肩をすくめ、ふたりがいるであろう課長室のドアを見た。 「そこに座りなさい」 部屋に連れ込まれた都筑はソファに座り込んだ。 そして書類を机におくと、カチャカチャとお茶の用意をし始めた。 「あの・・・・巽?」 「はい?」 「・・・・・怒ってないの?」 「・・・・・・」 あ、やっぱり・・・・と後ろ姿のまま返事をしない巽を怯えた目で見た。 一瞬動作を止めた巽だが、その後もお茶の用意は続けていた。 「・・・・どうぞ」 いい香りが部屋を包む頃、カップが都筑の前に出された。都筑の好きな紅茶だった。 「ありがとう」 そう言ってそっと飲む・・・温かい液体が身体に染みこんでいくようだった。 ・・・美味しい・・・ ほっと息をつく。 疲れている身体に優しいお茶だった。 「巽・・・ありがとう」 もう一度お礼を言う。 巽はようやく都筑と目を合わせて・・・少し微笑んだ。 「・・・大丈夫ですか?」 「うん・・・ごめんね」 「状況は・・・分からなくもないですが・・・・やはり遅刻は控えておかないと」 他の職員達の手前もある。 都筑が地上の人間と(それがどんなに人間離れしていようとも)付き合っていることはあっという間に広がっている。面白おかしくはやし立てる者も皆無ではなかった。 「そうだね・・・うん」 少し俯く都筑の髪に手を載せた。 前と変わらない艶だった。 「・・・上手くいってるんでしょう?」 巽はやはり聞いてしまう・・・本当のことなら四六時中そばにいて監視したい気持ちはやまやまだったが、さすがにそれでは・・・・と思いとどまっているのだ。 「巽・・・・・・それ密にも聞かれた」 ちょっとおかしそうに都筑が笑った。 「うん、ありがと・・・・大丈夫だよ、うまくやってる」 「そうですか」 穏やかな笑顔で答える都筑を見て、少し寂しいような嬉しいような妙な気持ちになる。 彼が笑っていてくれれば・・・それが一番の願いだったのだ・・・相手にちょっと難はあるにしろ、都筑がこんな風に笑ってくれるならそれでいいと思っている。 「でも少し・・・気をつけないとダメですよ? 不用意な発言もしないこと・・・何で足をすくわれるか分かりませんからね」 「うん」 勿論、その時は全力で都筑を守るつもりだが、それはそれ本人が充分に気をつけるにこしたこはない。 しばらくとりとめのないことを話していた都筑はカレンダーを見て急に声をあげた。 「あ、そうだ巽!」 「なんです?」 「えっとね、GWさ、俺休みたいんだけど」 「・・・・は?」 「邑輝がね、スイスの別荘に俺を連れてってくれるって!すごいいい所なんだって!湖も山も近くにあってねえ、10日ぐらい来ませんか?・・・・て、あれ?巽? どうしたの?」 「ダメになったって・・・・どういうことです、都筑さん!」 邑輝が思わぬ言葉に声を荒げる。 週末、何とか時間をやりくりして邑輝の家に来ていた。 飲んでいたカップは大きな音を立ててテーブルにおかれた。 もうずっと前から計画していたことだった、それを・・・。 「えーだからさ・・・・お茶貰って・・・機嫌が良さそうだったから言ったんだよね、巽に。GWお休み下さいって・・・・そしたらさ、急に不機嫌になって、”休暇なんて取れる身分じゃないでしょう?都筑さん”ってそりゃもう怖いのなんのって・・・・」 「じゃあ、どうするんです、ダメなんですか」 「俺も行きたいけど・・・スイスは行ったことないし・・・でもあれじゃ」 「休んじゃいなさい」 「邑輝、そんな無茶な」 「無茶はどっちですか、もう長年働いてきてる古株にそれぐらいの休暇も与えられないなんて・・・上司として最悪ですよ!」 ・・・それは俺が破壊活動で、予算を使いまくっているから・・・・と心で呟く。 「気にすることはありません、都筑さん。4月の末にあなたを迎えに行きますから、それで参りましょう。大丈夫何も荷物は要りませんよ、私の方で全部用意していますから・・・身ひとつで大丈夫です!」 「大丈夫ですって・・・邑輝、巽だよ?また大騒ぎになるって」 「関係ないです!あの人、都筑さんをお願いします、とか言っておきながらとことん邪魔をするつもりなんですよ、ああ、浅ましい姑根性ですね」 「邑輝・・・」 ・・・こうやって見ているとふたりってどこか似ているよな・・・とぼんやり思ってしまう。 まあ、やるといったらどんな手段を持ってもやってしまう邑輝のことだから、きっと俺は休暇を取ることにはなるんだろうけど・・・ くすっと都筑が笑った。 何故だろう、なんかとっても楽しい・・・そして嬉しい。 「どうしたんですか?」 都筑が笑っていることに気付いた邑輝が問うてきた。 「あ、ごめんごめん。うん・・・・あのね、なんか俺幸せだなあ〜って暢気に思っちゃったんだよ」 「都筑さん・・・・」 「ありがとう・・・」 それだけを今は伝えたい。その中に沢山の思いは込めているけど、今はこの言葉だけ。 そして回り込んで邑輝に近づく。 「今日は泊まっていっていいよね?」 答えは決まっているのに甘えて聞いてみる。 「勿論ですよ・・・・都筑さん」 そっと抱き寄せられる。慣れた香りに包まれて、目を瞑るとそっと唇が重ねられた。 色々課題は多いけれど、でも今は甘い甘い恋人の時間。 少しだけ前進したふたりの形・・・・・ ”ありがとう・・・・・愛している” その言葉は互いの胸に溶けていった・・・・・・。 |
2006・3・31
Mai・Hinase
ということで・・・・終わりですv
お疲れ様でした!!
いやあ、もう2年も放ったままになっていたのが
ようやくようやくです!
まだまだ実は言わせたい台詞とかあるんですが・・・
まあそれは番外編でも(あ、あるの?)v
とにかく今はこれでとりあえず終わりと言うことで・・・
甘い甘い邑都を目指して書き始めたこのお話
見捨てずに最後まで読んでくださった方々に
心からの感謝を・・・・v
ありがとうございました!