| 雪の手紙 君の心を温める事が出来るなら 自分に出来る事は何でもしてあげたい これからもずっと君の側にいてもいいよね・・・・・ 「えー俺が片付けるの?」 食後のお茶を飲み、ごちそうさまと手を合わせる都筑に密はエプロンを差し出した。 「・・・・俺が作った。」 「うーん・・・・もう少し休んでからでいい?」 「休んだら、おまえはすぐ寝るだろう!今すぐやれ!」 ぴしっとキッチンを指さす密に都筑は渋々立ち上がる。 「もう、だから俺も作るの手伝うって言ったのに・・・・」 「うるさい!」 まだぶつぶつ言いながら食器を片付ける後ろ姿を見送りながら密はソファに座り込む。 食事も終わり一息つくと疲れをどっと感じた。 今日は予定外の事ばかりだった。 昨日までは春のように暖かだったのに今朝は冷え込んでいて、薄着で出掛けようとして慌てて服を着替えた。 そのために余裕をみていた出勤時刻に遅れて、同じくいつものように遅刻してきた都筑と一緒に巽の注意を受ける事になった。 とは言ってもそのほとんどは都筑に向けられたもので密は逆に身体の事など心配されたのだけれど・・・・・。 そんなこんなで始まった勤務もこのところの暖冬で帰ってきていた北海道組の乱入、そしていつものように追いかけ回され、何も出来ずに1日が終わった。 そして・・・・ 疲れ果てて帰ろうとした時に雨は降り出すわ、密の姿を見つけた都筑に強引に家に押し掛けられるわ・・・・・で本当にクタクタになってしまった。 目を瞑ると眠ってしまうようだ。 都筑が食器を洗う音を聞きながらぼんやりと手元にあった雑誌に目を落とす。 「密」 手を止めて自分を呼ぶ声に顔を上げる。 「なんだ?」 「静かになった。」 まだ手に泡をつけたまま顔だけを後ろに向け首を傾げながら都筑が問う。 「?」 「カーテン開けてみて、密。」 何を言い出すんだ?と思いつつも密は立ち上がり大きな窓のカーテンを開けた。 「あ」 いつの間にか雨が雪に変わっていたようだ。 次から次へと夜にしては明るく思える空から雪が落ちてきていた。 「ほら、やっぱり!」 エプロンで手を拭きながら都筑が密の隣に立つ。 「雪だね、密。」 「ああ、どうりで冷えるはずだ。」 「ねえ、外、出ようよ。」 「いやだ。」 「これ積もるって!ねえ出よう!」 「やだ。」 これだけは譲れない、今密の身体は暖かい寝床を欲している。 「密ってば!せっかくの雪だよ!」 「俺は疲れているんだよ!ほっといてくれ!」 肩にかけられた手を振り払って、つい密は怒鳴ってしまった。 「・・・・あ、ごめん・・・・」 密の剣幕に謝りながら都筑が俯く。 それを見ていると自分がすごく酷い事を言ってような気がして密は目を逸らした。 別に疲れている事の全てが都筑のせいではないのに・・・・。 「もう寝る。」 そう一言言い残して密は寝室へと向かい扉を閉める。 その様子を見ながら 「おやすみ」 と、小さく都筑は呟いた。 窓の外の雪はどんどんと世界を白く染め上げていく・・・・・。 いつもよりも少し強い光に密は寝返りをうつ。 うっすらと目を開けるとカーテンをひいていても明るい部屋があった。 手探りで時計を探し時刻を確かめる。 7時。 昨日食事の後すぐに寝付いたのでそれでも10時間近くは寝たことになる。 しばらくはぼーっと天井を眺めていた密だが、段々と昨夜のことが思い出されてきた。 昨日はアクシデント続きでイライラしてしまった。 雪の降る中、庭に出ようという考えは分かりたくもないが、もう少し言い方もあったのかも知れない・・・・・ 言葉をぶつけた時の都筑の顔を思い浮かべると苦いものが胸にこみ上げてくる。 密は急いでベッドを降り、いつも泊まる時は使うように言ってある客間へと行ってみた。 しかしベッドの上には都筑の姿はなく、きちんとたたまれたシーツとパジャマがそのままだった。 あれから帰ったのか・・・・密は冷たいベッドに寝転がりながら目を瞑る。 いつも言葉が足らなくて 言った後から後悔して・・・・ 本当は誰よりも側にいて欲しいのに。 ドサッという雪の落ちる音に目を開ける。 急いで起きあがりカーテンを開けるとそこは一面の白。 その雪に反射した太陽の光に密は目を細める。 一晩中降り積もった雪は全てのものを汚れのない色に変えていた。 ふと何気なく見た庭の隅にある物を見つけ、密は身を乗り出す。 それは大・中・小の雪だるま。 ちゃんと目や鼻も小石や葉っぱでくっつけてあった。 微妙に丸くなくて四角かったり、楕円だったりするところに作った者の不器用さがにじみ出ている。 密が寝付いてから作ったのだろうか。 3つの雪だるまはみんな密の方を向いて・・・・笑っていた。 木の枝の両手を上げて・・・・笑っていた。 「・・・・・ばーか・・・・」 雪だるまにつられて微笑みそうになった顔を引き締めながら呟く。 笑ってよ・・・・密。 いつでも側にいるから。 ね、ここへ来て・・・・。 ひとつひとつの雪だるまから声が聞こえた気がした。 会いたい・・・・・ そう思うと同時に密は手早く着替え冷蔵庫の中の食料を袋に詰める。 休日の土曜日。 きっとまだ夢の中であろう都筑に何か作ってやろう、それが雪だるまのお礼。 外に出て鍵をかけ、もう一度庭の雪だるまを見る。 「いってらっしゃい」 そう言われた気がして密は雪を踏みしめる。 今日は1日つき合ってやろう、雪合戦でも何でも・・・・。 そして密は早足で都筑の家へと向かった。 キラキラと輝く光の中、3つの雪だるまがその後ろ姿を見送っていた。 |
2002・1・19
M・Hinase
| ★17000のリクエスト作品です。 リクエスト内容は密都で雪を絡めて・・・・でした。どうでしょうか? もう少しほのぼの系になるはずだったのですが、書いているうちに・・・・いつものことです(>_<)。 ここでの2人は合い鍵を持つ仲でしょうか(うふっ)v 都筑の描写に反省点が残るところですが、気持ちだけはこもっていますので。 楽しんでいただけると嬉しいです。 |