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そっと図書館の扉を開けて中の様子を見た。
いつもカウンターにいる倶生神の姿はない。
念のため周りも見渡す。どうやら席を外しているらしく館内にはいないようだ。
都筑はすっと身を滑り込ませ扉を後ろ手に静かに閉める。
ほーっとため息をつく。

倶生神から一人では絶対に図書館へ入るな!ときつく言われている都筑は
普段ほとんどここへは近づけない。うっかり入ろうものなら二人がかりで取り押さえられ
放り出されてしまう。
どうしてここまで俺が気を遣わないといけないんだよっ!と言葉に出さない悪態をつきながら、ここにいるはずのパートナーの姿を探した。


「ひ〜そか♪」
古い民話を集めた本を読みふけっていた密は頭に上から降ってきた脳天気な声に顔を上げた。
「・・・・何だよ。」
「帰ろう!」
「おまえ、こんな早い時間に帰っていいのか?」
「えー早くないよ!もう6時じゃん。」
都筑は腕時計を指しながら訴える。
「書類は?報告書は出来たのかよ。」
「ううん、出来てない。」
まったく悪びれない風で答える都筑に密は内心舌打ちする。
「おまえ、どれだけたまっている・・・・」
「だーいじょうぶ、明日も明後日も課長は留守だし、巽は代理で忙しくてそんなこと気にする暇もないし。」
ね、だから早く帰ろう!と密の腕をとる。
都筑に掴まれ揺らされる左手を好きなようにさせ、ため息をつく。
「わかった、その代わり後でどうなっても一切俺は手伝わないからな!いいな!」
「うっ・・・」
一瞬都筑の動きが止まる。
「あははは・・・大丈夫、心配ないって・・・・」
都筑は自分に言い聞かせるように繰り返す。

と、その時後から声がかけられた。
「あ!都筑さん」
「ひっ!」
聞き慣れた声に恐る恐る振り返ると倶生神兄が本を片手に立っていた。
「アンタ、いつの間に入ったんですか!」
「いやあ、あの、これは・・・・逃げろ、密!」
「ああ?」
聞き返す間もなく密は都筑に引っ張られ駆け出す。
「おい、待て、こら都筑!」
密の制止も聞かず都筑は図書館を飛び出していく。
全速で走る都筑に密も走ることになってしまった。
後の方で叫ぶ具生神の声を背中で聞きながら・・・・。



「よーし、此処まで来れば大丈夫! ふー、いやあ、やばかったな、密。」
密を引っ張って小高い丘の上まで走ってきた都筑は草の上に腰を下ろした。
「はあはあ・・・・な、にがやばいんだよ! 俺は関係ないじゃ・・・・ないか・・・・」
あまりのことに息が切れる。
「えーだって俺図書館立ち入り禁止だもん。」
「そ、それは・・・・はあはあ・・・・おまえだけだろうが!」
俺は関係ないだろう!苦しい息の下で都筑を睨みつける。
「だって、パートナーじゃん!」
「どんな理屈だ、それは!」
おかげで読みかけの本をそのままにしてきてしまった。
密は心の中で具生神に手を合わせる。
「まあまあ、ほらここにおいで眺めがいいんだよ〜。」
自分の隣をぽんぽんと叩いて座るように促す。
ようやく息が整って来た密は、仕方なく隣に腰を下ろした。

「ほら、見て!」
密が座るのを待って都筑は前方を指さす。
「空がオレンジ色になってきたよ。ここの夕焼けの景色は絶品なんだ。」
俺のお気に入り!とウィンクをする。
見ると光線の傾きで普段より大きく見える太陽が雲間から顔を出す。
「・・・・もう少ししたら、あの山と山の間に沈んでいくんだよ。今日は雲の出方が綺麗だから、いつもよりもずっと綺麗な夕焼けが見られるよ。」
楽しそうに話す都筑を見る。
「おまえ、良く此処に来るのか?」
「ん?・・・そうだね、前は良く来てたかな。多い時は毎日のように。」
「そんなに・・・・」
「うん、ちょっと落ち込んだりした時とか・・・・ね。」
ということは、毎日のようにそんな思いしてたのか・・・・密は都筑の顔を見つめた。
「でもね、最近はずっと来てなかったよ。今日は久しぶり!」
「ふ〜ん・・・・」
「・・・・密が俺のパートナーになってからは来てないよ。」
「え?」
ゆっくり都筑が密の方に振り向く。
「だって、俺淋しくないもん。密が俺のパートナーになってからは毎日が楽しいよ。仕事で辛いことがあっても密の顔見たら、頑張ろう!って気になるし。ありがと、密。」
真っ正面から思いもかけなかった言葉を告げられ密は真っ赤になる。
「ばっ、何言ってんだおまえ!」
ふいっと前方に顔を背けた密に、都筑は微笑む。



ゆっくりと太陽が山の間へと沈んでいく。
辺り一面、茜色に染まる。
「・・・・綺麗だな・・・・」
しばらくの沈黙の後、密が呟いた。
「うん・・・」
都筑はそっと密に身体を寄せる。
「重い・・・」
文句を言いながらも自分を受け止めてくれる温かさに都筑は嬉しくなる。


「ひそか・・・・」
「何だ?」
「俺、密に会えて良かった・・・」
「今更何言ってるんだか。」
素っ気なく言い返してくる言葉に頬が緩む。
今顔を見たらきっと怒られるだろう、だから見ない。
でもきっとこの夕焼けのような色をしているんだろうな・・・
都筑はそっと目を瞑る。
自分が自分でいられるそんな場所がここにある
・・・そんな幸せをかみしめながら。


2001・9・10
M・Hinase

★リクエスト「夕焼けバーションで明るめに」というので書きました。・・・・如何でしょうか?暗くならないよう気を付けましたが・・・(^_^;)。本当にお待たせしました。久しぶりの密都(このSSじゃあ都密にもなるね、でも密都ですよ(笑)!)で楽しかったです。