初夏の昼下がり、昼休みもあと5分足らずという時間、
都筑が召還課の部屋に戻ると、ある一角が数人の女の子達で盛り上がっていた。
その中で召還課の職員は若葉だけ、あとは滅多にこの部屋には来ない他の課の女の子たちばかりだった。
まだ密も亘理も戻ってきてはいないらしい。
(珍しいこともあるんだな・・・)
と、自分の席へ行きながら、何となくその集団を見ていた。
男性の割合が圧倒的に多いこの部屋で女の子たちの声が響くことは滅多にない。



召還課はここ閻魔庁にあっても一種特殊な任務をこなしている部署だ。
他の課からは用事がある以外は滅多にこの部屋には来ない。
もちろん、用もないのに来ても召還課の秘書に冷たい目で睨まれるか
嫌みを言われるか・・・・というのも大きな原因の一つだと思われた。



「あっ・・・」
若葉を取り囲むように何かを見ていた女の子の1人が顔を上げて都筑に気がついた。
目のあった都筑が軽く頭を下げると、びっくりしたように慌ててぺこりと頭を下げる。
その様子が可愛くて、つい微笑んでしまった。
すると、そのこの様子に周りの子も顔を上げて一斉に振り向いてきた。
「あっ、都筑さんだ・・・」
とか
「わあ〜」
とか
聞き取れないほどのざわめきが起こる。
そんな中、若葉が立ち上がった。
「都筑さん、ちょうど良かった! ちょっとこれ見て!」
ひらひらとノートのようなものを振っている。
「え? 何、それ?」
自分から目を離そうとしない女の子たちの視線を居心地悪く感じながらも若葉に近づいた。
「じゃーん! これなんでしょう?」
近づいてみるとノートよりも1回り小さいアルバムのようだった。よく写真を現像した時に貰うおまけのアルバム。
「・・・写真・・・?」
いつの間にか両側に女の子たちが来ていて、すっかり都筑は輪の中にいた。
「うん、写真! で・・・・なんの写真だと思う?」
にっこりと若葉が笑う。
「みんなで遊びに行った時の?」
このメンバーで、と言葉をつなぐ。言葉と同時に周りを見渡せば、みんなと目があって、ちょっとドキドキする。
「ふふふ、当たりって言いたいけど、違うの」
「若葉ちゃん達の写真じゃないの?」
と、問い返せば『わあ、若葉ちゃんって呼ばれてる・・・・・いいなあ』という台詞も聞こえたりしたが、あえて気がつかない振りをした。
「うん!・・・・見てみて! もう素敵なの!」
嬉しそうに差し出すアルバムを受け取る。
みんなが都筑の手元を見つめた。
ぱらっとめくって見ると・・・・・・
そこには、なんと貴人や天后、六合、朱雀姐等々式神の面々が写っていた。
それぞれVサインまでしていたり、ポーズをつけているものも・・・
「こ、これ・・・」
驚きながらもページをめくり続け・・・・
「わ、蒼龍まで! わっ、わっ、騰蛇まで!」
流石にこの2人のは笑顔というわけにはいかないようだが一応隠し撮りではないようだ。
渋々と言いながらもカメラ目線だった。
「ねえ〜すごいでしょう?」
宝物なの〜と、自慢げに言う若葉と写真を交互に見る。
「・・・・・どうしたの、これ? 貴人や天后はともかく・・・蒼龍達は写真なんか写されるのは嫌うはずだよ? それに・・・誰が写したの?」
「へへへ、狐太郎ちゃんと虎次郎ちゃんに頼んだの!」
「え? あの2人に?」
「うん!」
「でも・・・・どうして?」
若葉はにっこり笑ったままだ、都筑は首をかしげる。
「若葉ちゃん?」
「んーちょっと順番に話すわね。えっと・・・・まず最初に、幻想界の式神さん達はここでもすごい人気なの。特に都筑さんの十二神将って、素敵な人ばかりでしょう? この子達も噂を聞いて一度見てみたいってきかなくて・・・・でも連れて行くわけにはいかないでしょう? だからあの2人を呼び出して頼んだの」
「へえ・・・」

思えば幻想界の4つの門の1つ朱雀を守る烏天狗の兄弟、狐太郎と虎次郎・・・・剣にも優れた武人だ。
しかしそんな2人もこの若葉には甘く『巫女殿』と呼んでは仲良くしている。
若葉の言うことなら大概のことは2つ返事できいてくれそうだった。
そう思いながら、この兄弟の姿を思い浮かべる。

でもそれと今回の写真と・・・がまだ繋がらない。
いくらその2人の頼みと言っても蒼龍達が撮影を許可するはずはない。
「でね、どうしても私達写真が欲しかったもんだから狐太郎ちゃんと話し合ってね・・・」
「うん、それで・・・」
「ある条件を出したの」
「条件?」
「うん!」
くすくすと周囲の子が笑う。
「な、何?」
「あのね・・・」
若葉が手招きをして都筑が顔を寄せた。


その瞬間、パーンと手を鳴らす音が部屋に響いた。
はっとしてみんなでその音の方向を見ると、戸口の所に巽が立っていた。
「もう昼休みは終わりましたよ、何してるんですか!」
「あ!」
まるで授業が始まって席に着いていなかった生徒のように女の子達がバタバタと走り出した。
「じゃあね、若葉! また後でね!」
「失礼します、都筑さん!」
口々に言って手を振る。
「ああ、うん・・・」
「後でね!」
女の子達は『すみませ〜ん』『ごめんなさ〜い』を連発しながら、巽の横を通り抜けていく。
「まったく・・・・学校じゃないんですから・・・」
廊下を走っていく姿を見送りながら、巽が溜息をつく。
走っていく女の子達が
「きゃあ〜巽さんも見ちゃった!」
「ラッキー! 自慢しちゃう!」
等々言っているなどとは知りもしないで・・・・。

そして・・・・若葉と都筑が残された。
「一体、何をしていたんですか?」
「えー? 世間話ですよ、世間話。ねえ、都筑さん」
「あ、うん・・・・」
そう答えながら机の上を見るが、いつの間にかアルバムはしまわれていた。
「もう昼休みが終わって10分も経ってるんですよ?」
「だってついつい話し込んじゃって・・・」
事も無げに若葉が答える。
「あなたも一緒になってなんですか、女子高生じゃないのですから」
「・・・・」
「都筑さん? 聞いています?」
ぼんやりしている都筑を巽が見つめる。
「あ、巽さん、都筑さんは私が呼んだの。これからは気をつけるから!」
「・・・・・まあ、いいですけど・・・都筑さん、後で書類を取りに来てくださいね、先日出して貰った書類、訂正だらけですよ?」
「あ、はい・・・」
正直今頭の中が写真のことでいっぱいな都筑は素直に返事をしてしまう。
「じゃあ・・・・」
そんな都筑に「?」となりながらも巽は一言二言用事を伝えて部屋へと向かって行った。


「ねえ、若葉ちゃん、さっきの話なんだけど・・・」
巽がドアを開けるのを見て、すぐに話しかける。
相変わらずにっこり笑った若葉に都筑は戸惑ってしまう。
「あとでね・・・・今は仕事、仕事!」
「あー若葉ちゃんずるいよ!」
「ほら、仕事!」
自分から撒いたネタなのに、今は話す気がないらしい。
「後でね」
と繰り返しながら、書類を広げる。何を言っても無駄なようだ。
その様子を見ながら、都筑も仕方なく席へと戻って行った・・・・・。






課長室に入る前に、巽が振り返ると、談笑している2人の姿が目に入った。
何かあるに違いない・・・
そう思ったが、今しばらくは様子を見た方がいいだろう・・・・と思い直した。
どうせおやつの時間が来る。
その時に都筑に聞けば済むことだ。
若葉にあしらわれてすごすごと席へ戻る都筑を見ながら、巽もドアを閉め、仕事に戻っていった。

2003・6・3
M・hinase

★えっと・・・・・ものすごくお待たせしたリクエストSSです、しかも続いています・・・・(>_<)。
全体的にそんなに長くないので、一気にUPしてもいいのですが、場面的なものでちょっと間をおいた方がいいかも・・・・と思ったもので(言い訳みたいだ;)。
ということでリクエストは・・・「狐太郎と虎次郎」を出してのお話・・・・だったのですが・・・・・直接は出てこないかも・・・・・ごめんなさい。

さて後半どうなることやら;;;
式神は写真に写るのか・・・・なんて聞かないでね(汗;)。