ぬくもり


ひんやりした空気にふと目が覚めた。

まだ朝が早いのか部屋の中は薄暗かった。

ぼんやりと木目の天井を眺める。

ゆきの家か・・・・・

桃矢は昨日、バイトが終わってからまっすぐ雪兎の家へ来た。

普段泊まり込むのは週末が主なのだが、たまたま今日が講義もなくバイトもない日だったためそのまま泊まった。

何も用事のない日というのもどれくらいぶりだろう。

桃矢はもう一度、寝ようかと目を瞑った時、隣で動く気配がした。

「ん・・・・・」

寒いのか、雪兎が寝返りを打ちながら桃矢にひっついてくる。

外では人目を気にしてあまりベタベタしてこない雪兎がこんな時だけは幼い子のように自分に触れてくるのが嬉しかった。

そっと頬に触れると、冷えた空気に晒されてとても冷たい。

「あ・・・・とーや?」

おはよ、と額にくちづけをおとす。

「もう朝?」

「ああ、でもまだ早いから・・・・まだ寝てろ。」

うん・・・・と小さく呟いて雪兎は桃矢の胸に顔をすり寄せてくる。

「あったかい・・・・」

そうか?と、桃矢はその細い肩を引き寄せる。




外では朝刊を配る自転車の音がして、鳥の鳴き声が聞こえはじめた。

「ね、とーや」

もう寝付いているかと思った雪兎の声に桃矢は目を開ける。

「なんだ、起きてたのか・・・・・寝ないと辛いぞ。」

「なんで?」

「なんでって、今夜レストランのバイトが入ったって言ってたじゃないか。」

雪兎は顔を上げて首を傾げる。

「バイト・・・・ないよ?」

「え?」

「急に日にち変わってって言ってきた人がいて、その人と交代したんだ。僕、言ってなかったっけ?」

「・・・・・聞いてないぞ・・・・たぶん。」

「じゃあ、僕言ったつもりでいたんだね・・・・ごめん。」

「いや、それはいいけど・・・・なんだ、今日休みか・・・・」

ちぇっ、と小さく打ちをする桃矢に雪兎は顔を上げた。

「怒ったの?とーや。」

「え?いや、すまん。そんなんじゃないんだ。」

「じゃあ、何?」

んーなんでもねえよ、と桃矢はそっぽを向いた。



暫く会話が途切れた・・・・・

時計の音だけが部屋に響く。

「あ!」

突然、雪兎が声を上げた。

「もしかして・・・・・」

上半身を起こして横を向いていた桃矢の顔を覗き込む。

「な、なんだ?」

「とーや・・・・もしかして僕の身体気遣ってくれたの? 今日バイトがあるから・・・・その・・・・昨日は・・・・・しなかったんでしょう?」

うっ・・・・と桃矢が息を詰まらせる。みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。

その様子が面白くて雪兎はくすくす笑った。

「とーやったら・・・・」

口を尖らせて横を向いた顔が可愛いと雪兎は思った。



「・・・・・ありがとう・・・・・」

そっとその紅い頬に唇で触れる。

・・・・・いいよ・・・・・

小さく小さく聞こえたその声に

桃矢がそっと手を伸ばす。



甘い1日は始まったばかり・・・・・。

2001・11・17
M・Hinase

★11111番のキリ番リクエスト、桃矢×雪兎のSSです・・・・・
リクエスト内容は特になくお任せでしたので、私の方の設定で書かせていただきましたが・・・・・、ああ、雪兎さんが誘い受けしていませんか? 
こんなんでいいんでしょうか? お気に召していただけるかとても不安です〜。
ごめんなさい、こんな雪兎さん・・・・・いいですか?