Rain



「俺さ・・・・・雨が好きだよ・・・・」

邑輝は?と、都筑は黒髪を揺らしながら振り向く。

いつもなら

事の後は邑輝の腕の中で眠ってしまう都筑が今日は眠らなかった。

それどころか今夜は時間を惜しむように何度も何度も求めて来た。

そして今、降り続く雨を眺めている。



「嫌いではありませんよ。」

むき出しの肩にそっとシーツを掛けてやる。

「どうしてそんなことを?」

うん?と首を傾げ、何か考える振りをして・・・・

「何でもないよ、なんとなくそう思っただけ・・・・。」

そしてまた雨に目を向ける。

邑輝も都筑の肩越しに窓に打ちつける雨を見る。



  出会いは最悪だった・・・・
  それは邑輝が仕組んだことだったけれども、都筑にとって邑輝は憎悪する対象以外何
  ものでもなかった。
  憎まれてかまわないと思っていた。
  それで都筑の心に自分というものが深く深く刻まれるのであれば・・・・
  それで充分だ。
  初めて見た時から何を捨てても手に入れたいと願ったもの。
  彼の美しさが増すのなら
  可能な限りの屍を彼の前に並べてやろうと思っていた。
  深い闇のもたらす美を
  壊れていく究極の美しさを都筑に与えたかった。
  それが自分の愛情・・・・邑輝が出来る、邑輝だけが出来る愛し方。




「・・・・何かありましたか?」

放っておけばいつまでも見続けるだろう身体を後から抱きしめた。

細い肩が僅かに揺れる。

「何も・・・・」

聞き取れないほどの声に邑輝は胸の中で溜息をつく。

    
   思いもかけず都筑からこの腕に堕ちてきた。
   それは砂山が波に攫われるような脆さだった。
   手に入れた時から
   一夜毎都筑に溺れる自分がいる。
   邑輝を包み込もうとする身体に飲み込まれそうになる。
   最上の媚薬。


「お仲間に何か言われたんでしょう?」

えっ?と振り向く頬に唇を寄せる。

「私とのことが・・・・ばれましたか?」

「・・・・ばれたって訳じゃないけど・・・・・」

俯く都筑の表情は見えない。

おそらく何かあったに違いない。

それに自分が関わっているだろう事は、都筑の態度で分かる。



   一度だけ会った事のある蒼い瞳の男を邑輝は思い浮かべた。
   都筑のことを何よりも大切に想う男。
   守り、庇うことで都筑を愛し続けている・・・・・
   邑輝との関わりで都筑が傷つくことを何よりも怖れている。
   そんなことでこの人の傷など癒えはしないのに。
   誰よりも深い闇を持つこの心を支えることはできるはずはないのだ。



都筑の顎を捉えその瞳を見つめる。

「後悔・・・・してますか?」

その言葉に都筑の瞳が揺れる。

「してない・・・・してないよ。俺が望んだことだから・・・・」

予測できた答え。

「もう・・・・おまえしかいない・・・・おまえでなきゃダメなんだ・・・・」

流れる涙を唇で拭う。

   この人の泣き顔は、どうしてこんなに美しいのだろう・・・・

この涙を見るために自分は生きているのではないかとさえ邑輝は思う。

「なら・・・捨ててしまいなさい・・・・全て。」

「捨てる・・・・?」

「そう・・・・貴方を愛するのは私だけでいいでしょう?」

暖かい日溜まりに身を置こうとするから辛いのですよ・・・・耳元に囁く。

「何もいらないでしょう?」

その言葉に都筑は目を伏せる。

選べれば楽だろうに・・・・・それは分かっていること。

でもまだ・・・・・選べない・・・・。




「邑輝・・・・・いつか、いつか必ずおまえを・・・・・・・・んっ」

言葉を綴る唇を吸い上げる。

・・・・・・選ぶ? 殺す? それとも・・・・

   決断を迷っているのは自分の方かもしれない

甘い舌を絡め取りながら邑輝は都筑を組み敷く。





雨が止むまでの時間。

欲望にながされて過ごすひととき。

このキスが貴方を縛る鎖になればいい・・・・・

邑輝は息をも吸い取るように深く深く都筑を求めた。

『いつか必ず・・・・・』

約束の証を都筑の身体に刻み込むように。

2001・11・12
M・Hinase

★9999番のキリ番リクエストでございますv
リクエスト内容「邑都で甘く切ないキス」でしたが・・・・・どうでしょう?(切ないかなあ〜)
光と影の間で揺れ動く都筑とそれを待ちながら溺れていく邑輝・・・・
にしたかったのですが何か違う!様な気がする・・・・・申し訳ないです。
邑都はもっともっとお勉強が必要ですわね(笑)。
邑都というと「雨」が出てくる私を許してください!
でもね、書いていて楽しかったです。