◆12月24日◆


「なあなあ、巽。」
「何です? ああ、そこはこのテーブルクロスを使ってください!」
亘理に返事をしながらも、巽はテキパキと部屋の机を移動させ会場作りを指揮していた。
「本当に大丈夫なんか?都筑のヤツにケーキ任せて・・・・」
「仕方なかったんですよ・・・・でもまあ黒崎くんが一緒に作ってくれているはずですからね。味の心配はないと思いますよ。」
「そうかなあ〜」
「それに料理の方は私と閂さんで準備しましたし。」
「でも・・・・ケーキっていうたら、クリスマスの主役やろ?なんか心配やー。」
「ま、なるようにしかなりませんよ。」
「おいおいおまえが諦めてどないするねん。都筑の面倒を見るのは巽の仕事やないか。」
「何、冗談言ってるんですか。」
・・・・どこが冗談にとれるねん! 誰が見てもそう見えるやないか!・・・・・
「ま、とにかく・・・・やることはやりましたから。」
・・・・やったのは坊や・・・・・巽。



簡単な料理が並び始めた頃、密が部屋にやってきた。
「すみません、遅れました。」
ぺこりと頭を下げる密を巽が労った。
「お疲れさまでした。大変だったでしょう?」
「それはもう・・・・何と言ったらいいのか・・・・・」


『馬鹿!何混ぜてんだ、おまえは!』
『えーこれ入れると、色が綺麗そうだし・・・・』
『味を一番に考えろ!』
『あ、分量を勝手に変えるな!』
『でも多い方が美味しそうだよ。』
『おまえの意見はいいんだ!本の通り作れ!』
・・・・・・・以上が昨日丸1日、繰り返された会話。


手短に話す密の報告を何とも言えない気持ちで巽は聞いていた。
一体何故そこまであの人の味覚が破壊されているのか・・・。
本当に密は大変だったのだと改めて思う。
どうやら疲れ果てて今日も1日寝ていたらしい。


「で、都筑は?」
2人の所にやってきた亘理が密に尋ねた。
「え?まだ来てないんですか?」
「来てないんですかって・・・・一緒に来たんやないの?」
「いいえ、結局昨日夜中過ぎまでかかって・・・・出来た後、俺家に帰りましたから。」
自分の家が一番落ち着くので・・・・と密は言う。
一瞬、いやな予感が巽の胸をよぎる。
・・・・まさかね・・・・・
ふと沸いてきた考えを頭の隅に追いやる。
作った後、泥のように眠りこける都筑を見届けて密は帰ったと言うし、大丈夫だろう。


「お待たせー!」
5時少し過ぎにケーキの箱を3つ重ねて都筑が到着した。
「遅いで、都筑!」
「ごめんごめん、これでもかなり急いだんだよ。」
壊さないようにそっと箱を並べる。
「どうせ今まで寝てたんだろう?」
自分のことは棚に上げ密がからかう。
「寝てないよ、今日だって昼間前には起きてんだから!」
「さあさあみなさん、時間ですから始めますよ!」
わいわい騒ぐ職員を巽はパンパンと手をうって静かにさせる。


思い思いに席に着く職員達。
「えっと、じゃあケーキのお披露目していいかな?」
巽に向かって嬉しそうに言う都筑につい笑顔になる。
「いいですよ、お願いします。」
「じゃあ・・・・・」
都筑が箱を開けた。


「わー綺麗!」
みんなの前に置かれたケーキは、それは見事な出来映えだった。
鮮やかな赤と緑とそして白いケーキ。
みんながそのケーキに看取れている中席に戻った巽は、それを見ながら
「本当に綺麗に出来ましたね。今まで色んなクリスマスケーキを見てきましたが、あんなに綺麗な赤や緑というのは、あまり見たことがありませんよ。」
と密に声をかけた。
「・・・・・」
「どないしたん?坊。」
「黒崎くん?」
「・・・・・都筑!」
突然、密が立ち上がる。その声にシーンと静まる会場。
「な、何?密。」
「このケーキは何だ!」
「え?何って・・・・」
「黒崎くん、どういうことです?」
驚いた巽達の質問には答えず密は都筑を睨んでいる。
「昨日作ったケーキは全部白だっただろう!何でこんな色になってるんだ!」
「全部白?!」
みんながいっせいに声を揃える。
どう見ても目の前にあるのは赤いケーキと緑のケーキ。
「だって・・・・クリスマスといえば赤や緑もあった方がいいかなって。起きてから少し手を加えたんだよ。」
「都筑!てめえ、あれだけケーキには触るなって言っただろう!」
「でもでもやってみたかったんだよ!」
「だからってなあ・・・・」


・・・・・
2人の会話に段々顔色を失っていく職員。
そう、この綺麗な色のケーキには何が混ざってあるのか分からないのだ。おそらく作った都筑でさえ、把握し切れていないかもしれない・・・・・。
無事なのは白だけ・・・・それぞれの目が白いケーキに集まる。
しかし、しかしだ!
これだって何か手を加えられているかも知れない・・・・・。

「ほら、俺の言ったとおりになったやないか・・・・・」
「・・・・・こんなはずじゃなかったんですよ・・・・・」
力無く語り合う巽と亘理。
そして言葉を無くして密と都筑の会話を聞くだけの他の職員・・・・・。


今年も楽しい召還課のクリスマスパーティの始まりだった。

END

2001・12・22
M・Hinase

★最後までおつき合いくださりありがとうございました!
みなさまも素敵なクリスマスを!(^o^)