| ◆12月22日の夜と23日◆ 22日の夜、巽の所で夕食をご馳走になった都筑はソファに座り込んで巽から返されたあのお菓子の本を読んでいた。 鼻歌交じりのご機嫌な様子に巽はどうしたものか・・・と頭をひねる。 このままじゃたぶんクリスマスケーキは自分がつくると言い出しそうだ。 というよりもうその気だろう。 いっそのこと本も返すまいかと思ったが、そんなことをしても無駄な抵抗だと思われた。 「ねえ、今年は24日にやるの?」 「ええ。」 「祝日なのに?」 「人は集まりやすいでしょう?」 「そうかなあ〜。」 「何か用事でもあるんですか?」 「いや、俺はないけど・・・・他のみんなははどうなんだろう。」 「亘理さんもその日には戻ると言ってましたし、黒崎くんも閂さん達も夕方からの事だからってOKとってますよ。」 「いつの間に・・・・・課長も?」 「当然です。」 「・・・・・」 もう何も聞くことは無いように思える。 都筑にココアの入ったカップを私ながら巽もソファに座った。 「それよりも都筑さん。」 「ん?なに?」 「その本のことなんですが・・・・」 「これ?これがどうかした?」 「・・・・・ケーキのことなんですけどね・・・・」 「あ、また俺に作らせないって言うんじゃ無いだろうな!」 「え?いや、その・・・・」 ココアをテーブルの上に置いて都筑が巽に向かい合った。 「俺、今年は作るよ!」 「去年も私が作りましたし・・・・ほら、店に行って買ってきてもいいでしょう?」 「巽忙しいじゃん。今日だって書類持って帰っているだろう?」 「ケーキ作る時間くらいは・・・・」 「だ〜め!俺決めたんだから!それとも何か俺が作っちゃいけない理由でもあるの?」 「・・・・都筑さん。」 理由はあります!と言えたらどんなにか幸せだろう、確実にあるのだから・・・・。 しかし、むうっと真っ直ぐに見つめてくる都筑を前に巽は言葉を失う。 「召還課みんなで食べるんだから、1個って訳にはいかないだろう? そうなると結構お金もかかるし。巽、いつも節約って言ってるし。」 「ええ、それはそうですが・・・・。」 だからって・・・・ああ、どうしたらいいんだろう?・・・・巽は心の中で頭を抱える。 自分が都筑にはっきり言えない以上、この場での進展はないのは確かだ。 だが言えない・・・・。 もう諦めるしかないのか・・・・。 ・・・・すみません、みなさん・・・・ 楽しいパーティーが台無しになるかも知れない。 でもなんか、もうどうでもいいと思う自分が出てきたのも確か。 少しずつみんなで食べればそれでもまだ被害は少ないかも知れないし・・・・。 疲れているのかもしれない・・・・・。 「巽?」 黙り込んだ巽を都筑が覗き込む。 「・・・・ほら、疲れてるんだろう?もう休んだら?」 「そうですね・・・・でもまだやることが・・・・。」 「巽、後片づけはやっておくよ。仕事は今日はもうおしまい!いい?」 俺は客間借りるから・・・・と巽を寝室に促す。 「じゃあ、お願いしますね。」 余程疲れていたのか、いつもよりかは素直な返事で、パタンとドアが閉まる。 それを見送って都筑は台所に立った。。 「さ〜てと、食器を割らないようにしなきゃ!」 先日もグラス(それも高そうな)を2つほどゴミにした記憶は新しい。 慎重に作業を続けた。 「よし、これでOK!」 一通り片づいた流しを見渡し満足げに頷く。 今日は被害を出さずに済んだ。 ふと見上げた棚が少し開いているを見つける。 閉めようと手を伸ばした都筑の目に入ったのはケーキ作りの道具だった。 そっと手に取る。 自分も少し持っているけど、さすが巽だ、都筑の持っていないものもたくさんあった。 「・・・・・借りようかなあ〜。」 都筑は巽がいるであろう寝室の方を見る。もう巽は寝付いているだろう。 ・・・・これだけあれば思うようなケーキが作れるな・・・・ 自然に顔が緩んで来た。 イブの日のみんなの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。 夜10時・・・・道具をテーブルに置いて都筑は一人、これから作るケーキを決めるために本をめくっていた。 翌朝、起きてきた巽が見たものは都筑の残したメモ。 『おはよう、今日は泊まるつもりだったけど帰ります。ケーキの道具借りていくね。それから23日は事情があって休みます。じゃあイブの日に召還課で。 都筑』 鳥の鳴き声がするキッチンでメモを持ち、立ち尽くす巽がいた・・・・・・。 ★☆★☆★ 溜息と同時に座り込んだ巽の前に密が立っていた。 「都筑、今日休みなんですか?」 「ええ、有給のない身で休みましたね。」 おそらくケーキ作りのためでしょうが・・・・と言葉を続ける。 「それって、まさか明日の?」 密の問いに巽が頷く。 「電話で呼べばどうだ?」 明日の・・・・と聞いて慌てた様子で課長が言う。 「自宅の電話は留守電にされていて出ないみたいです。」 「携帯は?」 「電源切ってます。」 本当に気合いが入っているらしい・・・・・今日一日、ケーキにかける都筑の意気込みが分かるようだ・・・・分かりたくもないが。 「あの・・・・俺が行ってもいいですか?」 「えっ?」 「ケーキなんて作ったことはありませんが、本を見れば分量ぐらいは・・・・少なくともあの破壊的な味は避けられるのではないかと・・・・。」 「そう・・・・ですね、確かに。」 本当はここは自分が乗り込んでいけばいいのだろうが、昨日の様子からしても素直に応じるとは思われない。その点密なら手伝うという行為自体を喜んで引き受けるかも知れない・・・・・それが今やれる最善策だ、と巽は思った。 「それでは、お願いできますか?」 「はい。」 力強く頷く密に、課長も巽もホッと胸を撫でおろした。 |
to be continued・・・・
2001・12・22
M・Hinase
| ★もう少しおつき合いください・・・・(>_<)。 次がラスト! |