◆12月22日◆



「何です?」
廊下を歩いていた巽は背後から亘理に呼び止められ、振り向くと同時に本を渡された。
「忘れ物。」
「忘れ物?」
表紙を見ると・・・手作りのお菓子の本。
「誰のです?」
おいおい、という感じで亘理が巽の肩に手を置く。
「お菓子って言ったら、決まっとるやろ?」
「ああ都筑さんの・・・・で、なんで私に渡すんですか、本人に渡せばいいでしょう?」
「俺なあ、急な用件で今から出掛けるんや。それ忘れてから、あいつも地上行ってたみたいやし・・・・今日あたり取りに来ると思うし。」
渡しとって、とウィンクする亘理に巽が眉をひそめた。
「亘理さん・・・・今私と都筑さんがどういう状態か知っていての嫌がらせですか?」
「なに人聞きの悪いこと言うねん! どうせ大した喧嘩やないやん、そうやろ? ならそれ渡す時が話すきっかけになるし、ちょうどいいと思ったんや。おまえだって仲直りしたいんやろ? もうすぐクリスマスなんやし・・・・・」
「・・・・・・」
「あんまり意地はると小さいことでも大きくなる・・・・ま、適当なところで折り合いつけてみるのも大人の行動と思わん?」
相手がお子さまなら尚更・・・・、と亘理はつけ加える。
「・・・・・わかりましたよ、まあ私がイライラしているだけですから・・・・。」
「ま、頑張ってな。あ、俺24日は戻るわ。」
それからなあ・・・・と亘理は急に声をひそめた。
「それ・・・・やる気やで、都筑。」
「はあ?」
「ケーキやケーキ! 今年もやる気満々みたいや! これ買いに行った時、一緒やったんやろ?」
そう言われ、ああなるほど・・・、と巽は思った。
何かしら阻止される自分のケーキ作りを今年は何とかやり遂げたかったのだろう、だからこっそり買ったのか・・・・、ならそう言えばいいものを・・・・。
だからと言って作っていいとは言えないが・・・・。
「そうですね・・・・ま、少しでも事態が良くなるようにしたいとは思いますよ。」
「頼むで!25日にするんやろ?召還課のパーティーは。」
巽は少し考える。
「・・・・いえ、24日にしましょう。」
「イブに?いつも25日やん。」
「たまにはいいでしょう。さ、そんなことよりも早く仕事に行って下さい!」
巽は亘理を送り出した後、パラパラっと本をめくる。
「・・・・・仕方ありませんね・・・・」
そう呟くと巽は都筑がいるであろう召還課へと戻っていった。



部屋にはいると都筑以外は誰もいなくて、その都筑さえも机の下に潜り込んでいた。
巽は後に近づいて、つんつんと本の端で背中を突っつく。
「え?何?わっ!」
ガーンっといういい音が鳴り響く。
「いったあ〜!」
びっくりして頭を上げた際に机で打ったらしい。
「ちょっと、大丈夫ですか?何してるんです?」
「くうぅ・・・・。」
頭を抱え込みながら机の下から出てきた都筑は頭をさすりながら見上げた。
「た、巽・・・・。あ、探し物・・・を。」
座り込む都筑に向かい合うように巽もかがんだ。
「な、何・・・?」
後頭をさすりながら俯く。
「大丈夫ですか?」
ちょっと驚かせようと思っただけなのに、都筑は相当痛そうだった。
そしてそっと、都筑の頭に触れる。
「痛いよ。」
「・・・・少しコブになってますね・・・・冷やした方がいいかも知れない。」
「大丈夫・・・・」
「でも・・・・」
なんとなく黙り込んでしまう。


「で、何か俺に用だったんじゃないの?」
まだ頭をさすりながら目を合わせずに都筑が言う。
「まだ怒ってるんですか?」
「・・・・怒ってるのは巽の方だろう。俺、訳分かんないし・・・・・あれから何日もたつのに話かけもしないし・・・・・。」
「それは貴方だってそうでしょう。」
「俺は・・・・・巽が怒っているようだったし・・・・・お昼もこの頃一人でどっか行っちゃうし。」
「私だって貴方が怒っていると思って・・・・お昼は、仕事が忙しくてここ何日もちゃんととってないんですよ。会議が長引いたり、色々していたから・・・・。」
「・・・・そうなの?」
「ええ。でも・・・・・あの日はすみませんでした。少しイライラしていたもんで・・・・貴方が何の本を買ったのか、どうして何も言わないのか・・・そんな些細なことが無性に気になって・・・・。」
「巽・・・・」
「独占欲ですね。」
巽が自嘲的な笑みを浮かべる。
「貴方のどんな小さな事でも知りたいと・・・・嫌ですよね、こんなの。」
そう言って立ち上がりかけた巽の腕を都筑が掴まえた。
「都筑さん?」
「もういいよ・・・・もういい。」
仲直りしよう、と小さな声が聞こえた。
その声にもう一度巽はしゃがみ込む。
「いいんですか?」
「うん。」
都筑が両手を巽の首に絡める。
「頭・・・・大丈夫ですか?」
巽もそっと都筑の頭を抱え込む。
「まだちょっと痛い。」
拗ねたように言う都筑の背中を撫でた。
「じゃあ、痛みを取りましょうね・・・・」
近づいてくる顔にそっと都筑は目を瞑った・・・・。



「で・・・・ここで声をかけたら、やっぱまずいか。」
「身の安全を考えるなら、Uターンするのが一番だと思いますよ。」
召還課の入り口でひそひそと話す寺杣と密。
ここからでは良くは見えないが、都筑の机の向こう側で二つの頭が少し見えた。
小さな話し声も聞こえる。
何をやっているかは、容易に想像がつく・・・・そんな自分もちょっとどうかなと密は思う。
「俺、もう少し図書館にでもいます。」
「ああ、俺もタバコでも買ってくるわ。」
そう言って2人はそっと扉を閉めた。

そんな会話が繰り広げられている事も気付かずに、巽と都筑はしばらく立ち上がらなかった・・・・・。


to be continued・・・・

2001・12・22
M・Hinase

★あんたたち・・・・・職場で何を・・・・?(笑)
そんなことよりもケーキだよ、本だよ、巽!
大丈夫か? もう話が筋からはずれているような気がする・・・・。