◆12月18日◆



「さてと・・・・これで全部ですかね・・・・・。」
さっきから耳障りなほど流れるクリスマスソングと
多くの人で賑わう書店の一角で巽は手元のメモを見ながら選んだ本を確認した。
平日の昼間でもかなりの人数のいる店内を見渡し、溜息をつく。
多忙で本屋にもゆっくり来られなかった自分が、やっとの事で時間をやり繰りして地上へと出てきたというのに、この無駄に多い人を見るとちょっと面白くない。
・・・・時間のある人はいいですねえ・・・・
声には出さずに心の中で愚痴る。まったく割に合わない仕事だ。
巽はまた溜息をついた。


どうしても買いたい本があるために無理を言って少しだけ時間をもらった。
巽は腕時計を見る・・・・1時。
そろそろ戻らなくてはならない時間だ。
積み上げた本を持とうとして、巽は動作を止める。
さっきまで『お腹がすいた』とか『お昼を食べに行こう』とか煩くつきまとっていた者がいない事に気付いた。
「まったく!」
一人での用事だったのに出掛ける時に会ってしまったために、不承不承連れてきてしまった。
だが、メモに書かれた本を探すという作業は案の定はかどらず、結局は巽が全部一人で探すことになったのだ。
役に立たない上に、必要な時はいなくて・・・・・
やっぱり連れてくるんじゃなかったと3度目の溜息をついた。



「全部揃ったの?」
重い本をやっとのことレジに運び計算を終えた時に脳天気な声が背後からかけられた。
「都筑さん、何処行ってたんです?」
振り向くと同時に荷物を渡す。
「え?俺が持つの?」
「そのために来たんでしょうが、それぐらい手伝いなさい!」
ちぇっと言いながら袋を受け取る都筑が既にこの店の袋を持っていることに巽は気付いた。
「・・・・何か買ったんですか?」
いつの間に・・・・と思いながら袋を眺める。
「うん!欲しかった本があったから。」
「またガーデニングですか?」
「ううん、違う。」
欲しい本があったのならば高価でなければ一緒に払っても良かったのに・・・・とちょっと複雑な気分で巽は都筑の次の言葉を待った。
しかし、えへへと笑うだけで何の本かも言わない都筑に何故か少しだけ腹が立ってくる。
「またろくでもない本でも買ったんでしょう。」
「そんなのじゃないもん!」
「どうだか・・・・お金は大切に使いなさい!」
「だから、そんなんじゃないって!なにトゲトゲしてるんだよ!」
「別に普通でしょう?」
・・・・だから何の本を買ったのか言えばいいんですよ!・・・・
「もう、巽の怒りんぼ!」
「なに子供のようなこと言ってるんだか・・・・」
大したことでもないのに、もう何か聞きづらくなって巽は背を向ける。
「・・・・帰りますよ!」
頬を膨らませ無言で巽の後をついてくる都筑を振り返りもせず、巽は閻魔庁へと戻った。



「馬鹿馬鹿しい・・・・」
食事を終えPCに向かいながら、巽は呟いた。
結局何も会話をしないまま戻ってきて、都筑は他の職員と共に食事に出かけてしまった。
本当は・・・・都筑の分のお昼を用意していたのに・・・・巽は足元の袋を見る。
そしてまた画面に目を戻した。
指でキーを叩きながら頭はこのことでいっぱいになる。
・・・・いつもそうだ、大したことでもないのに、喧嘩になってしまう・・・・
あの時だって、都筑が何の本を買ったのかと聞きたいだけだったのだ。
でもなぜか都筑がはぐらかしているように見えたので・・・・
ただそれだけだった・・・・小さいこと。
・・・・あの人に関わることには狭量になりますね・・・・
都筑のこと全てを知りたくなる・・・・。
つくづく自分に溜息をつきたくなる巽だった。


「どうかしたのか?」
何回も画面を見ては溜息をついている巽に課長がおどおどと聞いてきた。
「は?何か?」
「いや、また赤字なのか・・・・と。」
「・・・・うちが黒字だったことなんか一度たりともないですよ。」
何言ってるんだかという表情で巽が課長を見ると、そうか・・・・と力無く俯いて近衛は書類に戻る。
その姿を見ながら、
・・・・やっぱりここは食事ですかね・・・・
仲直りのきっかけのみをひたすら考える巽だった。

2001・12・18
M・Hinase

to be continued・・・・


★まあ、導入部・・・・です。
基本的に軽く明るくですので、諍い事態は大したことではないです、はい。
問題は・・・・これからです(笑)。
1回目は短めに・・・・v