Christmas tree



12月も中旬。

赤や緑に街が覆われ始めていく季節。

気のせいか行き交う人々の顔も楽しそうだ。

店先にはクリスマスの文字が踊り、お馴染みの音楽が流れる。

それらの喧噪に包まれながら密は雑貨店の前で立ち尽くしていた。

どうしても買い物に出たい!という都筑に根負けして一緒にやってきた密だったが、街の

賑わいを見て早くも後悔した。ただでさえ人混みが苦手なのに、いつもよりも華やかな街

は、楽しいよりも、ただ苦痛なだけだ。

密は腕時計を見た。溜息をつく。

都筑が店の中に入って20分。出てくる気配がない。

この店も例に違わず、店内は人でいっぱいだ。到底入る気にもならず、こうやって外で待

っていたのだが・・・・・。

外からでは都筑の姿は見えなかった。

・・・・まったく!・・・・・

このまま待たされ続けるのは勘弁して欲しい。

密は深呼吸をして店内に入っていった。



覚悟を決めて入ったにもかかわらず、鳴り渡る音楽と、人の騒がしさに密は目眩がしそう

になる。けれどなかなか都筑が見つからず、密は店内の奥へと足を進めた。



店の一番奥の人の波が切れた所に都筑はいた。

何かを見上げている。

「おい!何やってんだ!」

「密。」

上を眺めていた都筑が振り向く。

都筑の手には目的物だった赤いリボンが握られている。密の部屋を飾るために必要なのだ

と言っていたものだった。密はそのリボンを見つめて言った。

「リボンあったんだろう? いつまでいる気だ、帰るぞ!」

「あ、うん。」

都筑は返事をしながらもう一度上を見た。その視線を辿って密も上を見上げる。

そこには少し大きなクリスマスツリーが飾られてあった・・・・。




「欲しいのか?」

なかなかその場所を動こうとしない都筑に密が問う。

「え?・・・・うーん、欲しいけどね・・・・。」

大きいだけ値段も少し張る。都筑が買えない値段ではないが、今月は色々と出費がかさむ

のだ。予定外の買い物は避けなければならない。そんなことはいくら都筑だって分かって

いた。

「でも・・・・部屋も狭いし・・・・ん、いいや。」

ふんわりと笑う都筑を密が見つめた。




「これ、買ってやる。」

「えっ!?」

密が指したのは大きさ30cmもない小さなツリー。

「あ、でも・・・・密・・・・」

「これなら置いても邪魔にならないだろう?」

そう言うと、都筑の返事も待たずにさっさとそれを掴んでレジの方へ行く。

「あ、それはそうだけど・・・・でもこれなら俺でも・・・・」

買えるのに・・・・と小さく呟く。その声は密の背には届かなかったけど・・・・。



「ありがとうございました!」

元気のいい声に見送られて出た店の外はやっぱり、クリスマス。

もう世の中、赤と緑以外の色は無くなったのではないのかと思ってしまう。

「ほらっ!」

バッと目の前に出された包みを都筑が受け取る。

「あ、あの・・・ありがとう。」

「もう、帰るぞ!頭が痛くなってきた!」

スタスタと歩き出す密の後を、少し遅れて都筑が追う。

「ねえねえ、もしかしてこれ・・・・・クリスマスプレゼント?」

「・・・・・」

何も答えない密は振り向きもしなかった。

・・・・・きっとそうだよね・・・・・

都筑は手にした包みを抱きしめる。心の中に広がる優しい思い。

「密!」

追いついて、横に並んで手を掴んだ。

「おいっ!」

何するんだ、と睨む顔を受け流す。

「ほら、俺って、人混みに流されやすいから!」

だから握っていて・・・・・。ギュッと密の手を握る。

大きな溜息をつきながらも自分の手をそっと握り返してくる密のぬくもりが都筑は嬉しか

った。



・・・・小さな小さなツリーだけど・・・・・

どんな大きなものよりも素敵なツリーだね、密・・・・・。

2001・12・8
M・Hinase

※クリスマスSS第1弾。密都ですv
なんか消化不良ですが・・・・(^_^;)。
このツリーを飾って、楽しいクリスマスを・・・・・・。