自己嫌悪





その部屋の扉を開ければ変わらない白が私を迎える

白い壁

白いカーテン

白いベッド

そして白く薄い浴衣を羽織った彼

入り口で少し立ち止まり・・・そして扉を閉めた




「おはよう」

そう言いながらカーテンを開けると秋晴れの空が広がる

窓から離れると白い額に飾られた1枚の絵画のようだ


ベッドの側の小さな椅子に腰掛ける

彼の腕をとる・・・・・いつもの行為

今日は平常

少しだけ安堵の息を漏らした



夏を過ぎたころから生気が僅かながら減り続けているのが気になる

・・・・この状態を生きているというのであれば・・・・だが・・・




彼は私が入ってきてからも微動だにせず

カーテンの開いていない窓を見続けていた

遠い・・・遠い何処かを見るその目にはきっと壁も何も写っていないのだろう

蒼い空が見えても 鳥が飛ぶのが見えても

何の反応も無かった

・・・いつものことだ

私は彼の顔を見つめながら小さく溜息をつく




ただの実験材料だと

研究対象だというのは変わらない

現に今でもありとあらゆる数値は見逃さずとり続けている

此処にはそのためにいるのだから・・・




でも

いつからだろう

彼の目を覗き込む時

そして数えるほどしかない その目に光が戻る時

私は動けなくなる自分がいる・・・

この美しい色に捉えられたら何も言えなくなる

何も出来なくなる

忘れたものがそこにあったような・・・・そんな気持ちに包まれてしまう




・・・・やがて私は・・・・その時間を欲するようになった

自分でも馬鹿らしくなるほどの思い

とうになくしたと思っていた思い

捨ててしまった・・・・・思い



冬の足音が聞こえるにつれ思いは募る 大きくなる




「あ・・・」

小さな声がして顔を上げると

彼の目が窓の外の蝶を捉えているようだった



その時間が来たのか・・・・私は立ち上がる


「ちょ・・・ちょ」

ぼんやりとそれを見つめている

微かに開いた彼の唇をそっと指で撫でると

首を回して私を見た



その深い色に私が写る・・・・私だけが写る






「いいね?」

あやすように笑いかけると 

ベッドの端に足をかけ帯をほどく

「・・・・せんせぇ・・・」

甘えたように伸ばしてくる手を捕らえて口づける

嬉しそうに笑った




綺麗な綺麗な笑顔














疲れて寝ついた頬に触るとまた・・・・微笑んだ気がした

そんはずはないのに



今度目が覚めた時はまた何処か遠くを見ているのだろう

私の知らない

彼も知らない

遠い世界を

見続けるのだろう







扉を静かに閉める

出来ることならば・・・・・このまま・・・・と思う自分がいた


「おやすみ」

姿が見えなくなる寸前に呟いた

良い夢をご覧・・・と心から願う



そしてそんな自分を・・・・・嘲笑う自分が



・・・・・・確かにいた



2003・11・4
M・Hinase


☆初めて書いた(汗;)・・・この人;