月夜
「今日は月が綺麗だから!」
そう言われて連れてこられた街はずれの丘の上
いや、正確には此処まで車で彼を連れてきたのは私の方だが・・・
「何してんの、早く!!」
車を止めるなり降りて駆け出す姿に苦笑した
いつまでたっても子供のようだ
2週間ぶりの逢瀬で
それなりの計画を立てていたのに
彼の一言で変更になった
まあ何処であろうと彼を見ていられるのならそれで幸せなのだが
「ほら、此処が一番綺麗に見えるって!」
林を抜けると視界が開ける
「ほう、これは・・・」
つい声をあげてしまった
目の前に広がるのは湖・・・・そしてその上に浮かぶ月
鏡のような湖に映るそれは明るくて・・・・
見事に幻想的な光景だった
「ね、綺麗だろう? 今日は満月じゃないけれどそれでもいいよね」
嬉しそうに笑う彼につられて微笑む
きっと・・・・
彼に出会わなければ見つけられなかったもの
見ようとも思わなかったものは沢山あるのだろう
今まで気付かずに生きてきた物にまで
気付かされ
そして
振り回される
でも
それも幸せなのかも知れない
すっと腕に絡めてくる手を握った
「綺麗ですね・・・」
そう言うと満足げに頷く
「うん・・・ここお前に見せたくて・・・」
「・・・・ありがとうございます」
ゆっくりと肩を引き寄せた
先までの喧噪が嘘のようだ
「いつまでもこのままでいたいですね」
それはいつもいつも願うこと
「うん・・・」
そして容易には叶わないこと
やがて都筑が向きを変えて首に腕を回してきた
「・・・やっぱりだ・・・邑輝、月の光がとってもよく似合うね・・・綺麗だ」
「・・・あなたもですよ」
そう囁くとはにかんだように笑う
幸せを感じれば感じるほどに
心に広がる不安
でもそれを今だけは見ないようと言い聞かせる
先のことなど誰にも分かりはしないのだから・・・
そっと顔を近づけると
目が静かに閉じられた・・・・・
甘く柔らかな感触に軽く触れれば
くすっと笑う
その仕草が好きだ
今夜も酔わされていく・・・・
この誘惑に今日も溺れていく・・・・・
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2003・11・2
M・Hinase
☆甘っ!!