幼馴染



パタンと本を閉じる

ようやく読み終わった

密は閉じたばかりの表紙を見つめた

野原か何処かに咲いている花をふたりの小さな子供が愛でている絵

内容は幼馴染みとして育った男女が

大人になるつれて自分の中に生まれた恋愛感情に戸惑う・・・

そんな恋愛小説

良くある話だった




いいと断ったのに図書館でよく一緒になる女子職員に押しつけられた

読まずに放っておいたら

毎日のように感想を聞いてくる 

それが鬱陶しくて・・・今日ようやく目を通した

正直・・・・苦痛だった

自分に合わない物を読むほど辛い物はない

適当に飛ばしながら読んだが

彼女が言うほどの感動も涙もなかった

所詮個々人の感じ方は色々なのだ

これからはちゃんときっぱり断ろうと決心した



西日の差し込む図書館の一角



隣の席に目を移せば

大きな黒い塊が惰眠を貪っていた

さっきから訳の分からない寝言を言いつつ

へらへら笑っている

「・・・・・馬鹿面・・・・・」

小さく呟く

それに答えるように

「ん・・・・」

と言ったのがおかしくて吹き出しそうになった





読書するから先に帰れと言ったのについてきて・・・で、寝てる

「変な奴・・・」

もう一度呟く

でもすやすやと平和そうに眠る顔を見るのは嫌いではない

可愛いかも・・・と思ってしまう自分もどうかしているかもしれない



密はそっと手を伸ばして髪を触る

柔らかな感触が心地よい





自分には幼馴染みなんていないけど

きっと

こいつとは幼馴染みよりももっと長いつきあいになる

それがいいのか悪いのかわからない

でも

手放せない

それだけは確かなこと






起こすのはもう少し後にしよう・・・・・・


密は背伸びをした

こんな時間も悪くない


2003・10・30
M・Hinase


☆こんな関係が好き