日記
「日記・・・」
「え?」
深夜・・・荒い息がまだおさまらない中
腕の中の都筑の声に巽は目を開けた
「日記・・・がどうかしたんですか?」
汗で張り付いた前髪をそっと摘みながら聞くと
目を瞑ったまま都筑が深呼吸をした
どうやら息を整えているようだった
「ん・・・巽って日記つけてるよね・・・」
急にどうしたのだろう・・・
そう思いつつも巽は返事をした
それは冥府に来てからずっと続けていることだ
そしてそのことは都筑も知っていたこと
「あのさ・・・」
間をおきながら話す様子を見守る
「ずっと・・・ずっとつけてるの?」
「はい・・・?」
「だから・・・・何十年もずっと?」
「ええ」
「・・・・そう」
そして都筑は黙った
「都筑さん・・・あなた見たんですね?」
しばらくの沈黙の後 巽が静かに言った
都筑の身体がびくっとなったのが伝わってくる
・・・やっぱり・・・
巽はまだ・・・いや今度は開けたくても開けられないまま目を瞑り続けている都筑を見つめた
夕方頃自室へと入った巽は
微かな違和感に本棚を見渡した
すると・・・
いつもとは少しだけ違う場所に日記に使っている厚めの手帳が移動していて・・・
その時はあまり気にしていなかったが・・・
「何もなかったでしょう?」
その言葉に都筑がパッと目を開けた
「巽・・・?」
「主にスケジュールしか書いてなかったでしょう?」
「う・・・・うん」
「残念でしたね」
「・・・・」
都筑のことだ 見ようと思って部屋に入ったわけではなく
掃除か何かのついでに入ったところで目についたか
棚にぶつかって落ちてきた本の中に混ざっていた・・・
そこら辺だろう
「ごめんなさい・・・・」
他に何を言ったらいいのか分からないまま都筑は謝った
誘惑に負けて手帳を開いたのは自分だ
怒られたって仕方がないと・・・
でもそこには都筑のことが一文字も綴られていなくて・・・
それがとても淋しくて・・・・
「自分のことが書いていないって思っているのでしょう?」
「巽・・・」
どうやら図星のようで・・・
「あれは日記とは書いてありますがほとんど仕事のことしか書き込まないことにしてるんです」
「そ・・・そうなの?」
「ええ」
「・・・・普通は思っていることや考えていることとか・・・」
「普通はね」
そう言って巽は都筑の頬に手を置く
「でも私はあまり書かないんですよ そういうこと」
「・・・・・・」
「字には残さないようにしているんです」
「・・・なんで?」
「字に書き表すと・・・・違うものになってしまいそうで・・・・」
「・・・・そうなんだ・・・・でも忘れない?」
「そりゃあ少しは・・・・でも私は記憶力が良いんですよ」
「・・・・・・」
「あなたと違って忘れんぼさんではないですからね」
「人を何だと・・・・・でも・・・・」
すごいねえ・・・・と都筑は呟いた
「怒らないの?」
「はい?」
「日記って言うか・・・メモ帳を見たこと」
「・・・・じゃあ お返しをして貰いましょうか」
「・・・へ?」
巽の身体が動いて都筑を抱きしめる
「いや・・・そういう事じゃなくて・・・・」
「いえ コレで謝って貰います」
「ちょっと・・・・待って!! 巽!!!」
抵抗虚しく・・・・・夜は更けていった・・・・
都筑さん・・・・
私の心の中には
忘れたくないモノ
忘れてはいけないモノがあります・・・・
でも同時に
忘れたいモノ
忘れさせて貰えないモノも多く綴られているのです
それは全てあなたに繋がる事
だから
あなたが私の側にいる限り
私は
あなたのことを字で綴る事はないのです
あなたを見ている限りは忘れない
忘れられないから・・・・
本当の日記は心の中に奥深く・・・・
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2003・11・18
M・Hinase
☆あ・・・シリアスになっちゃった;;