手作り
「こ・・・これは・・・・・」
その部屋に入った途端 巽は言葉を失った
「・・・どうしましょう巽さん・・・」
巽を此処に連れてきた密は溜息混じりに呟いた
「どうしましょう・・・と言ってもこれは・・・」
もうどうにも出来ないのでは無いのかと思う
巽は部屋を見渡した もう諦めるしかないだろう
それは文化祭まで後半日の深夜のことだった・・・・
庁内の1室
普段使われていない会議室の1つが今や巨大絵の展示室
・・・・いや お絵かき教室のようになっていた
壁に所狭しと掛けられた大きなキャンパス
床に飛び散った絵の具
描き直しに使ったのか
下描きに使ったのか
使途不明な大きな紙くずの山々
この惨状をどうすればいいのか考えたくもない
ついでに言えば・・・
出来れば部屋の真ん中の床の上で大の字になって寝ている男の姿も見たくなかったかもしれない
とても気持ちよさそうな寝顔だ
「最近遅くまで残っているなと思っていたら・・・」
つい仕事に追われて目を離していたことを後悔する
「すいません・・・俺がついていながら・・・」
疲れたように言う密の肩を巽はポンポンと叩く
「内緒にしてくれって頼み込まれたんでしょう?」
「・・・・昨日まではもう少し部屋も片づいていたんですけど・・・」
今日出てきて見たらこの有様で・・・
と言葉を繋ぐ密を見て苦笑した
「ま・・・・食べ物でないだけでもよかったと思わなければ・・・」
巽もここ数日の疲れがどっと出てきたような気がしてきた
文化祭・・・
料理やお菓子作りを都筑に禁じたのは自分だ
それは他ならぬ皆の幸せのためだった
その代わり何かをしているとは思っってはいたが・・・・
「この人が思いつく物としては良い方だと・・・・」
そう言った
巽は掛けられた絵を1枚1枚見て回る
絵は全部で12枚
真っ赤な鶏や
大きな蒼いドジョウ
オレンジ色に光るのはウナギか縄か・・・・
他にも犬のようなものやのっぺらぼうのお化けのような物もある
幼稚園児でも描かないような絵を見て
でもそれが何を描いているのか分かるところが自分でも悲しい
明日見に来る人達はきっと何のことか説明しなければ分からないだろう
「・・・・巽さん・・・・これ本人たち見て怒りませんか?」
どうやらこの文化祭が終わったらあちらに持っていくつもりらしい
「それは何とも・・・亘理さん程では無いにしろ都筑さんの絵も微妙なラインですから・・・」
そう言って巽はあの主を過保護までに甘やかしているモノ達を思い浮かべる
「でも・・・・大丈夫でしょう」
そう付け加える
たぶん都筑が○描いて×や△で顔が描かれていて自画像だと言われても喜ぶのだろう
それほどまでに彼にぞっこんな彼らだった
せいぜい注意することは明日 図に乗った都筑が彼らを呼び出さないことだ
この世界では火の塊や水の塊になる彼らが出てくれば大混乱は避けられない
それだけは それだけは避けなければならない
別の意味で忙しくなりそうですね・・・・
イベント事がある度にどうしてこんなに苦労するのだろう
巽は遠い目をしてしまいそうだった
けれど
「とりあえず・・・・」
「そうですね」
今すべき事は1つ
「起きなさい!!」
「起きろ!!」
ゴツッ!
パシーン!!
ファイルの振り落とされる音と拳骨の音が広い部屋に響き渡った
楽しい楽しい文化祭は明日
手作りのお披露目も明日・・・・
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2003・11・17
M・Hinase
☆「6番文化祭」を受けています・・・