「亘理ってさ・・・・・・風みたいだね」

ふとそんなことを言われた

いつもの冗談かと思って見ると

遠くを見るような表情をしていて・・・・

「そうか?」

と少し間をおいて聞き返せば

「そうだよ」

今度は笑って答えた





長い髪だと風の強い時が結構面倒で

実験の時も鬱陶しいから

ゴムで一括りにして過ごすこともある







実験室から見える庭で幹にもたれている黒い物体が見えると

何故かとても安心して

わざわざ窓際に実験器具を移していることもある

気配を感じるのか

顔を上げて手を振ってくる時もある

そんな時は持っている試験管を掲げてみたり・・・






「輪ゴムは髪が巻き付いちゃうよ?」

そう言いながら渡されたゴムは茶色くて

その色が誰かを思い出させた






適当に騒いで

適当に物事をこなして

適当に毎日を流していく

それはきっとこれからも変わらない

ただ

守りたい物がある

それだけは確かだ





「俺はもう知りませんよ?・・・亘理さん」

溜息混じりに言われたり

「あとでそっち言っていい?」

買い溜めした食料目当ての台詞を聞いたり

「いいかげんにしなさい!」

何も悪い事して無くても怒られて








窓からの風に髪がなびく

何処からかまた怒鳴り声や泣き声が聞こえた

「しゃーないな」

そう声に出して立ち上がった

目指すはいつもの場所

また何かからかいのネタでも落ちていることだろう

そう思いながらノブに手をかけた


2003・11・11
M・Hinase

☆「風」というより「髪」だね;;