喧嘩



「都筑さん・・・」

もう何度目かわからない呼びかけ

巽は動く気配のない背中を見つめた

「お茶が入りましたよ」

短く言葉を添えてみるが変化はない

ふうっと小さく溜息をついた




日曜日のお昼前

ベランダに繋がる大きな窓の側でお気に入りのクッションを抱えたまま

都筑は陽の光を浴びてキラキラ光る植物たちを見ていた

もう何度目だろう・・・

自分を呼ぶ声が聞こえる

良い香りもする

きっと何かお菓子も焼いたに違いない

甘い香りに部屋中が包まれる

出来ることなら今すぐにでも飛びついて・・・



でも

都筑はクッションを抱え直した

でも もうなんか振り返るのが・・・・怖い

クッションに顔を埋めた

此処まで意固地になる自分に嫌気がさす

素直になれない自分がイヤだ






原因はつまらないこと

休日のはずだった昨日 急な仕事で都筑との約束が果たせなかった

このところ出張も重なってやっと2人揃って過ごせる休日だった

でも入ってきた仕事は巽でしか処理出来ないことで・・・

こんなことは初めてではなかった

今までだって・・・・でも今回ばかりはちょっとタイミングが悪かった

すれ違いの後なのだ

きっと都筑なりに色々計画をしてあったに違いない

それが全部ダメになった・・・

だから都筑は怒っているというより・・・・悲しんでいるのだと思う



きっと



巽の苦手な瞳で

あの草花たちを見ているのだと・・・






巽の仕事は要だ

それはよく分かっているつもりだし 理解もしている

けれど時々いつも優先される仕事に面白くない感情を持っていた

仕事と私生活

巽がどちらをとるかと言われれば

都筑絡みの大きな事が絡まない限りは仕事を選ぶ方だとも分かっていた

でも感情がついていかない

よく分かっているけれど

分かりたくない自分もいた








声をかけたくて




声をかけられたくて




でも 出来なくて




時計の針だけが時を刻む




もういいかな?




もういいでしょうか?









このあと



同時に顔を上げて



目を合わせて お互いに笑い出すとしても




今はまだ



喧嘩中



恋人同士の喧嘩中・・・

2003・11・14
M・Hinase

☆仲直りはいつ?